03 創作活動は、とにかくお金がかかるんだよね_04
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初夏とはいえ、そろそろ暗くなってくる夕方過ぎ、……。
英子は下宿先近くの個人経営のスーパーで半額総菜を買うと、止せばいいのに、足早に母校の大学の脇の道を歩いていった。
この前みたいに、アイツらに会ったらヤダだったけどさ。でも、この道が一番の近道なんだよねぇ、……。
そんなことを思いつつ、無事通り過ぎることができると、内心ホッとした。
良かった。今日はアイツらに会わなくて済んだから、……。
大量の食材を抱えたまま、英子はそのまま自宅のドアを開ける。
すると、本日もまた誰もいない静かな居室に、英子は何とも言えない居心地の良さを感じた。
エアコンを点けると電気代がかかるため、あまり使いたくない。
外着を脱ぎ、しばらく下着姿のままうろうろしていると、……。
何となく姿見に映る自身の肉体に、小さな違和感のようなものを感じたのだ。
それは、自身の年齢が結婚の適齢期の中盤に差しかかっていることや、いまだ定職にも就かず、フリーターで生計を立てていることへの心細さのようなものが、チクチクと胸のどこかを刺してくるように思われたのだ。
くんくん、………。
左手首から脇にかけて、自分自身の肉体が匂っていないことを確認すると、……。流しで軽く絞った濡れタオルで全身の汗を拭いて、そのままつなぎに着替えた。
さっそく、早めの晩飯を摂る。
本日は奮発して、スーパーの揚げ物やポテトサラダといったお惣菜数点。金額にして数100円足らずだが、英子にとってはなけなしの金だ。
今は円高で、総じて物価が安い。お気に入りのインスタントコーヒーも一袋300円程度で、……。英子は小さじでスッとすくうと、カップに入れて、煮沸した水道水をキンキンに冷やしたものを注ぎ込む。
英子にとってコーヒーを飲むことは、とても贅沢なことだ。粉茶でも飲むような感覚で、極薄のアイスコーヒーを嗜んでいた。
先日は、飲み会で贅沢しちゃったからさ。とにかく、これで今月は何とか凌ぐよ!
なんてことを思いつつ、一人だけの晩餐を大いに楽しんだ。
さて、……と。夜21時過ぎから、英子は絵の制作を始める。
英子の本業は油彩画家だ。なら、印象派のゴッホやセザンヌのように人物や自然の風景を描くかと言えば、そうではない。
では、都会のワンシーンのような風景を描くホッパーのような世界を提示するかと言えば、そうでもない。
英子の描くのは、架空の世界。それもトールキンの描く豊饒な異世界を夢見ていた。
私も、こんな世界を描きたい。私たちの有限で大切な時間を腐らせてくれる現実から離れて、私は豊かなアイデアに満ちた世界を描き尽くしたい、……。
英子は、深夜になっても夢中で絵筆を疾らせ続ける。
こんな私の生活を、何か大博打でも構わないから、一新したい!
それは、逃避ではない。私にとって、その気持ちこそが、作品に深みを与えるから、……。
そんな具合に、異世界風の世界をキャンバスに構築し続けていると、……。
気が付くと、もう夜が明けて朝陽が差し込んできた。
とりあえず、これが現在の実力だと思える出来に仕上がりつつある。
完成はまだだけど。何かいい感触を掴むことができそうな気がする、と英子は思った。
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英子の日常は、なかなかにハードモードですね。
でも、人生を賭けて創作活動をするとなると、大体こんな感じになるのかもしれません。
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