03 創作活動は、とにかくお金がかかるんだよね_02
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「ふぅ~っ。……さて、と」
英子は午前中の座学の補助の仕事が終わり、チュータールームに戻ってきた。
今朝は急いでいたからさ、ごはん食べられなかったし。
コンビニで買ってきたツナマヨのおにぎりをテーブルに置くと、無料で飲めるお茶を傍らに置いて、「いただきます」をした。
すると、……。
「え~いこぉ姉さぁ~ん」
そう言って、いつもの女の子が背中に抱き着いてきた。
「えっ!? 何よもぉ~っ。引っ付くなっ!」
でも、邪険にはせず、なるべくやんわりと応じることにする。
「へへぇ~っ。一緒にごはん食べよっ!」
その女の子は、するりと隣りの席に座ると、ニッコリと微笑んだ。
彼女は、何というか、……。英子の信奉者だ。
予備校というクローズドサークルの中では、極端な信仰にも似た感情が芽生えやすい。
え~っと。そういうの、社会学で何て言うんだっけ?
言葉が直ぐに出てこなかったので、英子は目の前のパソコンで、さっそく検索をかけてみる。
すると、「依存心」という言葉が出てきた。
ふぅ~ん、なるほどねぇ、……と英子はひとつ頷く。
「うんにゃ、……英子姉さん。私のはね、『依存心』じゃなくて、『信仰心』だね!」
「『信仰心』? 何それっ?」
「愛だよ、愛! 純粋に私って英子姉さん、大好きだし、……」
「はいはい。告白どぉ~も」
「もうっ、私は本気だよっ!」
「……」
英子がニッコリと黙って微笑むと、その女の子は頬を染めてこくりと頷いた後、そのまま静かに食事を始めた。
英子は、その子が都内の開業医の娘で、裕福なのを知っている。
その子の絵は少し甘えたところがあるが、どこかノビノビとして豊かさがある。
おそらく、持って生まれた才能もあれば、それを育む環境も充実しているのだろう。
だから、来年進学したら、もう私のことなどきれいさっぱり忘れてしまうのだろうと英子は思った。
どちらかというと、英子は若い子が苦手だ。男子も女子もそう。等しく若い子が苦手だ。
だって、若い子って、感情で動いてさ。私の有限な持ち時間を、散々腐らせてくれるからね。そんなことを考える私がいる。
英子はおにぎりを頬張りながら、ネット端末で次回のコンテストのモチーフ選びを始める。
今日のバイトが終わったら、また件のWeb日記を読み耽ろう。
英子にとって、斎木茂吉という人物が、段々と比重を増すのを感じていた。
すると、チューター仲間が「よっ!」と声をかけてきた。
「おっ、英子姉さん。そのコンテスト、参加するの?」
「はい。今から準備しておこうかと」
「いいよ。どんどん出しな。応援してるよ!」
英子はチューター仲間と軽い会話をして、思うところがある。
お互いに「これが正念場だね!」とは言わないし、言えないよね、ということだ。
いくら褒められても、内心ではもう「後」がないと思っていた。
「魁!断筆姉さん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!
英子の作家魂や、仲間たちとの冒険を楽しんで頂けたら嬉しいです!
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