12 国王瀬田良平に謁見する_09
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国王の瀬田さんが、ビールがなみなみと注がれたグラスを持って立ち上がると、……。
「それでは、斎木が無事王都に戻ってきたことと、……。それと、大藪英子さんという、若き才能溢れる有意な若者が、こうしてヤムントにきてくれたことを祝してっ、乾杯っ!」
「「乾杯っ!」」
かけ声と共に酒を飲み干すと、思わず笑みがこぼれてくる。
すると、瀬田さんが興味深そうな顔をして、再び私(英子)の空いたグラスにビールを注ぎ始めた。
こちらも、すかさず瀬田さんのグラスをいっぱいにすると、……。「おっとっと!」と仰って、瀬田さんは人懐っこい笑顔をお見せになられた。
「ホンと歓迎するよ、英子さん! この先、王都では目が回るほど忙しくなると思うけど、……。少なくとも、今日くらいはゆっくり休んでいって欲しいね!」
「はい、お気遣いありがとうございます!」
こちらの言葉に、瀬田さんはひとつ頷かれなさった。
「話は聞いているよぉ。結構ここまでくるのに、いろいろあったそうじゃないか!」
「えぇ、……。それはもう、……」
考えてみると、斎木さんと私は、王都に着くまでに死線をいくつも乗り越えてきたんだよね。
特に、バルディ男爵邸に泊まった時に、ホブゴブリン率いる群れが襲撃してきて、ホンと生きた心地がしなかった。
それでも無事に、ここ王都まで辿り着けたし、……。こうして国王の瀬田さんと、夕飯を共にできたりもするんだからね。
私(英子)は、隣に座る少女をちらりと見る。
すると、先ほどからずっと日本語で話を進めていたものだから、ヤムント人のフィルマは不思議そうに、こちらの様子をただ黙ってじっと見つめていた。
現地語で「フィルマちゃんも乾杯!」といって、グラスをチンと鳴らして上げると、……。
フィルマは嬉しそうに「カンパイ、カンパイ」といって、……。
それからこくこくと、喉を鳴らしてオレンジジュースを飲み始めた。
ふふっ。何だかこの子、仕草がとってもかわいいなぁと思った。
「私、日本の甘い飲み物大好き! お姉さんは?」
「私も甘いもの大好きよぉ」
だって、絵を描いていると、無性に脳が甘味を求めてくるんだもん。
「なぁ、フィルマ。こちらの姉さんは、絵がとっても上手なんだぞぉ」
瀬田さんがそう話しかけてこられると、フィルマはつぶらな瞳を真ん丸にした。
「お姉さんっ、絵を描くの?」
「うん。後で似顔絵描いてあげる!」
そう言ってニッコリと微笑むと、フィルマは目をパァーッと輝かせた。
ふと気づくと、瀬田さんと斎木さんの両名だけで、何事か小声で話を始めており、……。
どうやら、私がそこに入り込む余地はなさそうだったので、……。しばらくの間、フィルマとだけお話を続けていた。
しばらくして、思い出したように2人の様子をちらりと見たんだ。
そうしたら、こちらと同年代かそれ未満の見た目の国王の指にさ、……。
斎木さんと同様に、年齢固定化の指輪が嵌められていたんだよね。
あぁ、なるほどね。まぁ、口には一切出さないつもりなんだけどさ。
瀬田中佐というお方は、もしかすると、未だにどこぞの国と係争中のお人なんだろうねぇと英子は思った。
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