03 創作活動は、とにかくお金がかかるんだよね_01
本日、英子が朝早くから向かったアルバイト先は、西池袋にある、とある美術系進学予備校だ。
英子は、そこの総合芸術コースでチューターの仕事をしていた。
美大の浪人時代からも含めると、かれこれ10年近くここに通い続けていたことになるので、……。もはや「古株」だと言っていいのかもしれない。
校内に入ると、英子と同じく絵描きを目指す若い青年たちが多くいる。
画材の真新しい匂いのこもった建物の中の空気を、良く整った鼻梁から肺いっぱいに吸い込むと、……。
「よぉーっし、本日も頑張るぞぃ!」
そう心の中で小さく呟くと、若獅子たちの待ち構える実習室のドアを開けた。
「はぁ~い、おっはぁよぉ~さぁん。みんな、元気してるぅ?」
英子が明るく元気よく声をかけると、中にいる10名の予備校生たちが、こちらをちらりと見て、それぞれ挨拶してきた。
何だか覇気がないなぁと思うも、まだ朝の7時半だ。
専任の講師がくるのは大体8時半なので、1時間朝練しているだけ、まぁ偉いのかなぁとは思うんだけど。
でもさぁ、……。私が20歳前後の時なんてさ。体力など、今の私に比べたら、もう無限の心臓持ちなんじゃないかってくらい、湧き出てきたもんなんだけどなぁ、……と思う。
バブル崩壊の余波で、親が一度破産した英子だが、……。
子供の頃より得意だった絵を仕事にしたいと考えて、今までこの業界にしがみ付いてきた。
目の前には、これから美大進学を夢見て、腕と感性を尖らせている後輩たち。
だから、……さ。一切こっちは手を抜けないよ。
「英子姉さん、ちょっといぃっすか?」
「いいよ。何でも訊きな?」
そう言って英子は愛想よく応じる。
英子は、惜しげもなく長年の努力で身に付けたテクニックや力の抜き方、集中の仕方を教えることに抵抗がない。
だってさ、……。後輩たちも苦学生が多いんだよ。大体、美大に進学しても就職できるか不安だと、そんな悩みを伝えてくる女子達も多くいるしね。
そんな英子もまた、本日の昼食は、コンビニのおにぎり一個だけ。バイトを掛け持ちして手に入れたお金は、高額な画材代と参考資料の山に取って代わっていた。
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