【日間8位ランクインしました!感謝】人間に拾われてものの5分で激旨メシに懐柔された僕のその後の話 前編 ~ものの5分シリーズ スピンオフ~
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
この作品は、以前自分で書いた連載作品の《異世界に転生してものの5分で最強種にエンカウントした俺のその後の話》という物語に登場した猫のモコちゃんのお話です。
このお話が気に入っていただけたなら、是非本編の方もよろしくお願いいたします。
後編もありますので、そちらの方もどうぞよろしくお願いいたします。
僕には名前がない。
お父さんも、お母さんもいない。
僕が今困っていることは、ご飯が食べられないことだ。
ここには、大きな生き物が沢山いて、地面はゴツゴツしている。
この間なんて、おなかがすいて地面にへたり込んでいたら、とても大きなものが、信じられないくらいのスピードで迫ってきたけど、僕は怖くて何もできずに蹲ってしまった。
でも、その大きなものは、僕には何もせずに、僕の上をすごい勢いで通り過ぎて行った。
僕は怖くて仕方なかったので、もう二度とあの場所には行かないことにする。
僕は大きなものが来ないような場所を探して、当てもなく歩いてきたけど、そろそろ限界かもしれない。
僕はもう歩く力が湧いてこないみたいだ。
「おいで、ほら、おいで。」
誰かが何か言っているようなので、僕はもう眠ってしまいたいと思っていたけど、最後に力を振り絞って顔を上げてみることにした。
「ほら、おいで、美味しいよ。食べな。」
なんだかとても美味しそうな匂いがする。
でも、力が湧いてこない……。
僕は立ち上がろうとして、転んでしまった。
もう一度立とうとしたけど、もう足に力がはいらないみたい。
「まずいな……。」
もう、何かを言ってる大きな生き物の方を向くことも無理みたいだ。
「連れていくか。よぉし、大丈夫、怖くないよ、よし、おいで。よぉし、いい子だ、衰弱が激しいな。病院が先か……。」
僕は大きな生き物に捕まってしまった。
でも、もう抵抗する元気も出ないし、仕方がないか……。
僕は食べられちゃうのかな……。
こんな痩せっぽちの僕を食べてもおいしくないだろうけどね……。
あれ?
ここはどこだ?
なんか、変な匂いがする。
いろんな匂いが混ざってる?
なんかちょっと背中の方がチクッとしたような気がしたけど、今はなんともないや。
あれ?なんか、さっきよりも元気が出てきたかも。
うわ、大きな生き物が沢山いる……。
逃げられないかもしれない。
「シャーーーッ!」
う~ん……。
威嚇しても全然怖がってくれてない気がする……。
「よかった、よかった。少し元気が出てきたのかな。栄誉不足で衰弱していただけで、病気もないようですし、ノミもついてないようですから、あとは子猫用の離乳食を食べさせてください。柔らかいものから食べさせて行きましょう。大丈夫だと思いますが、何かあったらまた連れてきてください。」
「はい、わかりました、ありがとうございます。」
なんだ?
うわ、また捕まった……。
僕は今、大きな生き物に捕まっている。
大きな生き物は僕の首の後ろ側を掴まれて、あとはお尻の方も支えられている。
どうやっても逃げられそうにはないけど、なんだか落ち着く……。
大きな生き物は、僕を捕まえながら、どんどん歩いて進んで行ってる。
どこに行くんだろう……。
でも、こんな景色は初めて見た。
僕がいつも見ている景色とは全然違う、なんだか僕が大きくなったような気がする。
見晴らしが良いな……。
「うん、今から帰るんだけど、近所にペットショップあっただろ、あそこでさ、子猫用の離乳食と、あととりあえずはシャンプーがあればいいかな。うん、うん、じゃあ頼むよ。うん、10分くらいで着くと思う。うん、じゃあ。」
この大きな生き物が、何か光る小さな板と話をしていた。
僕をどうやって食べるか、相談でもしてたのかな。
僕はこの大きな生き物だけじゃなくて、さっきの光る板にも食べられるのかな。
この大きな生き物は仕方ないとしても、あの板に食べられるのは、なんかムカつくな……。
「ただいま。あれ、まだ帰ってないか。よし、じゃあ、お前はちょっと汚いから、ここにいろよ。後で綺麗にしたら、好きにしていいからな。」
「ただいま、憲さん先に帰ってたのね。猫ちゃんどこ?」
「汚れているだろうから、今風呂場にタオル敷いて寝かせてるよ。」
「見せて、見せて。あら、あらぁ~。バッチぃねぇ~。この子キジトラかしら。」
「そのようだね。美咲、餌ちょうだい。準備してくる。」
「はいはい。これ。」
「ありがとう。お、餌入れも買って来たんだ。」
「かわいいでしょ。」
「この子にはまだちょっと高いんじゃないかな。まぁいいか、台を使わないで、容器だけ使えば大丈夫だろう。」
「よし、出来た。さぁ、ご飯だぞ。沢山食べて早く元気になれよぉ~。」
なんだか、いい匂いがするけど、大丈夫かな、ちょっと怖いけど、でもいいか、どうせこの大きい生き物たちに食べられちゃうんだろうし。
だったら、その前に僕もおなかいっぱい食べてやる!
ぬっ!
なんだこれ‼
柔らかくて、すごくおいしい!!!
「おぉ、良い食いっぷりだな。そうだそうだ、たくさん食べろよ。」
「この子男の子かしら。」
「そうらしいよ、病院の先生がそう言っていたよ。去勢するなら1歳になる前の、大体7~8か月くらいが良いって。」
「そうね、かわいそうだけど、去勢した方が良いわよね。」
「やるなら発情期を迎える前にしないと、マーキング行動とか覚える前の方が良いって言っていたかな。」
「そうなんだ。あ、食べ終わったかな。全部食べたね、偉いねぇ~。」
「体を洗うのは、少し落ち着いてからにした方が良いかな。ちょっとそこでゆっくり休んでろ。後で綺麗にしてあげるからな。」
この世の中に、あんな美味しいものがあったなんて……。
もしかして、あの大きい生き物は、僕を助けてくれたのかな。
もしかして、もしかすると、あの大きい生き物たちは、僕の味方なのかな。
いや、きっと僕を美味しい食べ物で油断させる気だな。
もっと食べたいけど、おなかがいっぱいでしばらくは食べられそうにないや、でも、あとでスキを見て、あの美味しい食べ物をもっと食べてやる。
まだ、あると良いな……。
なんか、あったかいな……。
!
なんだ!?
うわっ!水だ!
水?あったかいな、これ、なんかちょっと気持ちいいな……。
うわっ!なんだこれ、白いシュワシュワにやられる……。
あ、あったかい水だ……。
気持ちいいな……。
「お前いい子だなぁ~。上手、上手。なんだ、目を細くして、気持ち良いのかぁ?うわぁ、桶のお湯まっくろだよ、そうとう汚れてたんだな。泥水にでも浸かったのか?よし、もう一回シャンプーするか。こぉら、暴れないで、大丈夫だよ。がんばれ、がんばれぇ~。よし、はい終わり、ほらあったかくて気持ちいいだろ。美咲、頼んだ。」
「はぁ~い。はいおいで~。はい、拭き拭きしようねぇ~。はぁい上手だね~。キャッ!」
僕は濡れた体を乾かそうとして、体をブルブルと震わせた。
大きい生き物には、たくさん水がかかったけど、なんだか怒ってないようだ。
むしろ、喜んでるように見える……。
「あははははは。やったなコイツぅ~。」
「はい、おいで、ちゃんと乾かさないと、風邪ひいちゃうからね。よし、憲さんお願い。」
「よぉし、最後の仕上げだ、あったかくて気持ちいいぞ~。」
!
なんだこの大きい音は‼
でも、なんだこれ、あったかい風が出てきて、気持ち良いな……。
「さぁ、綺麗になったぞぉ~。ほら、好きに遊べ!」
「あらぁ~ちょっとこの子イケメンさんね。フワフワのモコモコで可愛いわぁ。そうだ!この子の名前、モコちゃんにしましょう!」
「可愛い名前だね。良いんじゃないか。よし、お前の名前は、今日からモコちゃんだ。」
この大きい生き物は、きっと僕の味方だと思う。
僕は、僕の名前はモコちゃんだ。
僕は今、高層マンションの屋上にいる。
下からはおとしゃんが白いモフモフしたものが付いてる棒を持って迫ってきている。
これから、僕とおとしゃんの戦いが始まるんだ……。
「モコちゃん行くよ~。わしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ。わしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ。はいもぅ一回、わしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ。」
ぼくは迫りくる白モフの上下左右からくる縦横無尽の攻撃をかわして、僕の必殺パンチを食らわせるのだ!
あ、おしっこ出そう。
僕は三階建ての高層マンション屋上から、一段下がったところにある、僕のおもちゃなんかが沢山しまってある棚に飛び降り、高層マンション1階にある僕専用のトイレに向かった。
トイレでは、僕は三回砂をかく。
そして、一番気に入った深さの穴に向かっておしっこをするのだ。
そして、おしっこをした後、僕はちょっと元気になるんだ。
部屋の中を2往復くらい全力ダッシュした後、僕はおかしゃんに報告をするんだ。
「にゃ~お~。わぁ~うぉ~うぉう。」
「はぁ~い、わかったよ~。おしっこでたの?ちゃんと教えてくれたのね。ありがとう、モコちゃん偉いね~。」
僕のおかしゃんは、僕がおしっこをした後に、おしっこをしたことを教えると、いつも、とても褒めてくれるんだ。
僕のおとしゃんとおかしゃんは、人間だけど、僕のおとしゃんとおかしゃんなんだ。
僕は猫だけど、おとしゃんとおかしゃんの子供らしい。
おとしゃんはいつも僕に言うんだ、ずっと一緒だからねって。
だから、僕はおとしゃんともおかしゃんとも、たぶんずっと一緒に暮らすことになると思う。
僕は、夜になると、おとしゃんの腕とお腹にはさまれて寝るのが好きなんだ。
どうしてかというと、おかしゃんはちょっと寝相が悪くて、たまにつぶされそうになるけど、その点おとしゃんは安心なんだよね、おとしゃんは仰向けに寝たら、朝までずっと仰向けだから、つぶされる心配もないんだ。
でも、たまに抱っこがちょっとだけ、ウザい時があるけどね。
今日はおとしゃんが夜になっても帰ってこない。
朝、おとしゃんがいつもと違う荷物を持って、出かける時に、明日の朝には帰るからね、と言っていたので、たぶん明日の朝には帰ってくるはずだ。
おかしゃんは、おとしゃんは“シュッチョウ”だと言っていたので、きっと今夜はおかしゃんが僕に甘えて一緒に寝ようとしてくるはずだ、おかしゃんが熟睡したあたりには、注意しなくては……。
真夜中に大きな音がした。
いつもおとしゃんとおかしゃんが話しかけてる光る板からだ。
光る板はいつも大きな音でおとしゃんとおかしゃんを呼びつけるんだ。
いつも夜は大人しいのに、今日は珍しくこんな時間なのに騒いでいる。
光る板に呼び出されたおかしゃんは、板に向かって「はい、はい。」と繰り返している。
途中からおかしゃんの様子が変わった。
とても慌てているように見えた。
あんなおかしゃんを見たのは初めてだったかもしれない。
おかしゃんは、少しバタバタとして、止まって、またバタバタしてというのを何度か繰り返した後、何も言わずに扉から飛び出して行った。
いつもと違う、完全な静けさ。
この家の子供になってから、この家には、いつも必ず誰かがいて、僕が独りぼっちになることはなかった。
いつもはちょっとした物音にも反応して、ビックリする僕を優しく撫でながら「ゴメンね。」とか「ビックリしたね。」とか言ってくれるけど、今日はなんだか、何の物音もしないこの家が、ちょっとだけ怖いと思った。
僕は、さっきまでおかしゃんが寝ていたベッドの方が温かいのはわかっていたけど、なんだかおとしゃんの匂いがする、おとしゃんのベッドの枕の上に居たい気持ちになったので、僕はおとしゃんの枕の上で、前足をお腹の下にしまい込んだ状態で座った。
いつもは、この座り方で座るとついついうっとりとして、眠くなっちゃうんだけど、今日はなんだか落ち着かない。
部屋の中をうろうろしたい気持ちもあるけど、なんだかこのおとしゃんの匂いのする枕から離れたくだない気持ちの方が強かったんだ。
それから少しの時間が経ったころ、突然家の中に誰かがいる気配を感じたから、僕はてっきりおかしゃんが帰ってきたのかと思って、リビングの方に飛び出して行ったけど、誰もいない。
他の部屋にも、何処にも誰もいない。
トイレの前でしばらくじっとしていたけど、やっぱり誰もいなかった。
すると、誰もいないはずの背後から、声が聞こえた。
『モコちゃん、ごめんね、お母さんの事頼むね……。』
僕は声を聴いて、すぐにそれがおとしゃんの声だとわかった。
一生懸命探したけど、僕がおとしゃんを見つけられなかったんだ、と思って振り返ってみたら、そこにおとしゃんはいなかった。
もしかしたら、おとしゃんは“かくれんぼ”をしているのかもしれない。
お風呂場かな?
「にゃ~ぁお~~!」
いないみたいだ、わかった、キッチンだ!
「にゃ~ぁお~~!!」
またはずれだった、となると、僕のマンションにいるかも!
「うぉ~ぅわぅぉ~~~!!!」
いないな、どこにかくれたんだろう?ベッドかな?
「わぁ~ぉ~~!」
いないや、かくれんぼじゃないのかな?
窓の外が薄っすらと明るくなってきたみたいで、家の中がぼやけている。
おとしゃんも見つからないし、そろそろかくれんぼも飽きてきた。
玄関で二人の帰りを待ってよう。
多分もうすぐ、二人で帰ってくるだろうからね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話や、本編の方も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
このお話が面白いと思っていただけたなら、評価やコメントなどいただけるとありがたいです。




