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光に向かって  作者: 白夜
8/9

Episode 8

姫森ファミリーのスナイパー、射撃担当の理央が姿を見せなくなった中…

乃蒼が代役を務める事を表明した。

彰仁は大丈夫なのか気がかりな様子であったが、気を取り直して捜索に行く準備を進めていた。


「理央を見つけたらどこに乗せようか。」


「そうですね、後ろの荷物スペースにでも…。」


「アホキノコはお荷物扱いか、何か可哀想だな。」


「まぁ、良いんじゃないんですか。散々自由奔放にやってきて迷惑掛けてるんです、雑に扱っても罰は当たらないでしょう。」


千夜の毒舌ぶりに彰仁は苦笑していた。


「とにかく行きましょう…あまり時間は無いですし。」


「片っ端から見ていくぞ。」


そう言って準備が終わった二人は、他の構成員に挨拶をして地下にある駐車場へ向かった。

鍵を開けて座席に座ると、彰仁はおもむろに鍵を捻ってエンジンを掛けた。

すると、静かながら存在感のある音が聞こえてきた。

走り出すとテンションが上がって来たのか、千夜が言った。


「格好良いですね…一体いつの時代の車なんですか?」


「20年前だな。」


「そうなんですか…?意外と新しいんですね。」


「レトロっぽい見た目してるからな。」


彰仁と千夜が会話をしていると、通信が入った音がした。

どうやら鈴音から通信が入ったので代わりに千夜が対応する。


「どこにいるの?」


「マジックシティの…中央銀行辺りです。」


「なるほど…ちょっと待ってね、目撃情報を調べていくから。

金髪マッシュルームカットにピアスをしてる…垂れ目の青年は…あ、あった。

目撃されたのが昨日の夜で最後みたいだけど、もう少し北の方に行くと大きな橋があるでしょ?」


鈴音がそこまで言うと、千夜は辺りを見回して彰仁さん…橋はまだですか、と聞いた。

彰仁はまだ見えねぇ、と答えた。


「そこを渡って右に曲がると…左手に噴水公園があるの。最後はそこで目撃されたみたい。

でも、夜の公園ってどうなんだろうね。怪しくないかな?」


「それは私も思いました。危ない匂いがします…。」


千夜が頷きながら言うと、運転しながら聞いてた彰仁はそりゃねぇだろ、とツッコミを入れた。


「でも、公園…と言う事は、寝泊まりしてたんですかね…?」


「うーん…確かにテントとかそういうのが無くなってたし、あり得るかも。」


時々理央はソロキャンと称して、アジトの近所の誰も居ない公園に行ってはテントを張って寝ている事もあるそうだ。

正直変わった趣味すぎてついて行けないのだが、一人になりたい願望でもあるのだろうか。


「公園の方に行ってみて。もしかしたら、まだ遠くまで行ってないかもしれないよ。」


「了解です、ボス。」


鈴音からの通信が終わった後、千夜は彰仁に言った。


「あの…橋を渡ったら右に行ってください。左手に噴水がある公園…が見えるはずなので。

ひとまずそこで探してみませんか?」


「橋を渡って右折すりゃ良いんだな?」


「はい…お願いします。」


千夜がそう言うと、彰仁は任せろと言い…そこから車内は静かになった。

何となく、疑問に思ってることがあったのか…しばらくして千夜が口を開いた。


「あの…車に、誰か人を乗せた事はあるんですか?」


「いきなり何だ…まぁ、回数が多いのはスズだな。私も連れていけとか言うんだよ。」


「そうですよね…何となく、そんな気はしてました。」


「何だそりゃ。」


彰仁がそう言うと、橋が見えてきた。

電飾もついていて派手であるが、何より大きい。


「こりゃすげぇな…。あんまりこっちは行かねぇから知らなかったぜ。」


彰仁が関心を示していると、すぐ曲がり角が見えた。

速度を落として曲がって行き、すぐさま目的地である公園の前に車を停めた。


「スズが言ってたんだよな?ここで最後に目撃されたって。」


「はい…夜だそうです、そんなにはっきりと見えるものなんでしょうかね?

街灯があると言っても…やっぱり暗いじゃないですか。」


「そこは俺も気になったけどよ、実際に調べて見なけりゃ何とも言えねぇな…。」


彰仁がそう言うと、千夜はそうですね…と相槌を打った。


「さて、理央の奴…見つけ出したら洗いざらい吐いてもらわねぇと…。」


「自白の時間ですね。」


「おやつの時間みたいに言うなよ。」


彰仁がツッコミを入れると、千夜は笑っていた。

しかし、今すべきことは失踪している仲間を見つけ出す事なので、気を抜かない様にしていた。


「あの…これ、理央さんのじゃないですか?」


「見せてみろ。」


彰仁がそう言うと、千夜が拾ったキャンプ道具を手渡した。

名前まで書いてある。


「こりゃ確定だな…。しかし、アイツは一体何を考えてんだ?」


「分かりません…。というか理央さんって私達と同じ人間なんですか?」


千夜が唐突に質問をすると、彰仁は吹き出しそうになった。


「当たり前だろ、何言い出すんだ急に。」


「いえ…病院で生まれた事以外に証明できるものが無い、と思いまして…。」


「流石に酷ぇな、アイツが聞いてたら泣くぞ。」


彰仁が珍しくこの時は理央に同情したと言う。

さらに千夜が畳みかける。


「泣きたければ泣けばいいんですよ、やせ我慢なんて毒です。」


「お前はどこからモノを言ってんだよ。」


ツッコミを入れると、千夜が独自の目線ですと誇らしげに言った。

彰仁は笑いをこらえつつも真顔を貫いて言った。


「はぁ…あんまりふざけてっと時間が無くなるぞ。取り敢えず理央の持ち物は回収しねぇとな。」


「了解です…。」


そう言ってキャンプ道具一式持って帰ろうとすると、何やら見知った姿の青年がベンチの下から現れた。

何やら寝ぼけている様子でこう言った。


「うるさいなぁ…オレの癒しスポットに入ってきてるのは誰?」


他人の空似、の可能性もあるので声だけじゃ断定できなかったが…やはり理央そのものだった。

彰仁は呆れつつ、理央に言った。


「お前、どこほっつき歩いてんだよ?スズもアイツらも心配してたぞ。」


「どこって…この公園だよ。何となく落ち着くしさ…。

あ、そういえば乃蒼ちゃんがオレの代わりするんでしょ?俺要らないね、バイバイ。」


「おい待て…何故それを知ってんだ…?」


ドスの効いた声で彰仁が問いかけると、理央がふざけた調子で言った。


「まぁ野生の勘だよね。」


「意味分かんねぇ…とにかく帰るぞ。」


「帰っても俺の居場所無いじゃん、どう責任取るの?」


彰仁は悩んだ。流石にすぐ乃蒼に引っ込んでもらうのは申し訳ない。本人がやる気なのだから。

悩んでいると、千夜が聞いてきた。


「乃蒼さんは補欠、と言う事でどうですか?」


「補欠…ああ、そうだな…それもアリか。基本は理央に動いてもらうって事だな。」


「そうですね…。」


「ついでに乃蒼は理央と別の場所から魔法で狙撃をしてもらう様にすれば…問題ないな。」


彰仁がそう言うと、千夜が賛成ですと言った。


「え、待って…乃蒼ちゃんって射撃できるの?」


「魔法で、だけどな。改めてアイツに伝えねぇとな…。」


「お前も大和理央だ、ですか?」


千夜が彰仁に続いて言うと、理央が爆笑していた。


「おい待て、気持ち悪いぞ。どう区別付けりゃ良いんだよ?」


「そうですね…金の大和理央と、オレンジの大和理央はどうですか?」


「んな女神の池に落とす落とし物みたいに…。」


「それさ、俺がオレンジ色に発光したら意味なくない?」


「光らねぇしそもそも前提がおかしいだろ!」


彰仁がツッコミを入れると、理央が笑いながら言った。


「千夜ちゃん、なかなかお笑いのセンスあるよね。良い筋してるよ。」


「ありがとうございます。」


「はぁ…ったく、ボケが2人居ると大変なんだよこっちは…帰るぞ。」


彰仁がそう言うと、理央は後ろの席に座った。


「結構広いだろ?」


「確かに、こりゃ凄いね…。」


「トランクも私ならすっぽり入れるんじゃないですか?」


「千夜は一番背が低いからな。」


「そう、ですね…あんまり指摘しないでほしいのですが。」


3人で他愛の無い会話をしながら、アジトへと向かって行く。

そんな中、通信が入った。声の主は乃蒼である。


「聞こえるかしら?あなた達。

理央は見つかったのね、無事なら良かったわ…私は変わらず助っ人で参加するから、いきなり戻したりしなくても問題ないわよ。」


「それなら…理央さんとはまた違うエリアから魔法で攻撃をしてもらう戦法にしようと彰仁さんが…。」


「そうなのね。改めて航と一緒に作戦を考えて来るわ。

 後は帰って来るのみよ、安全運転で。」


乃蒼からの通信がこれで終わった。

理央は流石に疲れてるのか、うとうとしていた。

そして、しばらくするとアジトの地下駐車場へたどり着いた。


車から降りて伸びをすると、彰仁が理央に言った。


「お前、通信まで切ってたろ?一体何を考えてたんだ。」


「ああ、張り込みをしようと思ってさ。何か、さっきの公園近くで龍神ファミリーと花園ファミリーが集会開いてたんだよ。

オレはそれを目撃したってわけ。」


「そいつは有益な情報だ。」


「何とかばれずに写真まで撮れたからさ。後で共有しといてよ。」


理央がそう言うと、彰仁がそうさせてもらう…と答えた。

失踪事件は結局、呆気なく解決したのであった。

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