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光に向かって  作者: 白夜
7/9

Episode 7

作戦会議を終え、姫森ファミリーの面々はそれぞれ戦いに向けて準備をしていた。

武器の新調、強化…更には肉体強化に励むメンバーも居た。


そんな中で理央は、いつしか単独行動をするようになり…通信も途絶える事が多くなった。

アジトに居ない時間が多くなり、帰ってこない日も出て来ている状況。

心配になった鈴音は、抗争にでも巻き込まれてたらどうしようと言ったが、彰仁は何処かで遊び呆けてるんだろ、と深刻に考える事をしなかった。

それにしても何日も帰ってこないのは変だ。

哲弥が口を開く。


「なぁ…やっぱりボスの言う通り、おかしいんじゃないのか?

いくら自由奔放な理央でも、必ず日付が変わるまでに帰って来てたのに…一体どうしちゃったんだよ。」


「知らねぇよ…。誰も聞いてねぇのか、理央の外出理由。」


彰仁が辺りを見回してそう言うと、沈黙が続く中、千夜が何か言いたげな様子で見ていた。

それに気付き、答える様に促す。


「お前は知ってるんだな?何でも良い…話してくれ。」


すると、重たい沈黙が流れた後…千夜が語りだした。


「取引をしてくる…これは、ビジネスチャンスだから…と、言っていました…。」


「取引って…誰とだよ?」


「それは、言えません…。」


「は?」


千夜はそう言い、俯いて下を向く。彰仁は何処かモヤモヤしている様子であり、苛立ちを隠せずにいた。


「言えねぇって何だ、俺達ファミリーの規則を忘れちまったのか?」


姫森ファミリーの規則、それは隠し事をしない…と言う事だ。

幹部である鈴音と彰仁は勿論、他の構成員も頭の中に入れている決まり事のはずである。


「冗談じゃねぇ…。俺に隠し事たぁ…良い度胸してんじゃねぇか、オイ。

分かってるよな、千夜。掟を破った者は、追放どころじゃ済まされねぇんだぞ…?」


「承知しております。ですが…まるで、一生のお願いの様に言われたので…。

いくら彰仁さんでも…言えません。これ以上詰めて来るなら、パワハラで訴えさせてもらいますが…?」


悪態を付く彰仁に対し、千夜は毅然とした態度で秘密を守り通そうとする。

埒が明かないと思ったのか、舌打ちをしていた。


「勝手にしろよ、俺はそんなの認めねぇからな。」


機嫌が悪いのか、そのまま屋上へと一人上がって行ってしまった。

心配になった鈴音が追おうとしたが、香恋に止められる。


「大丈夫だって、ボス。きっと…アッキーは悔しいんだと思う。自分の知らない所で相談も無しに、決戦へのコマを進められている…みたいな?」


「あっちゃんこそ、言ってくれないんだよなぁ…。」


鈴音がそうぼやくと、香恋が苦笑しながらしょうがないよ、と言った。

彰仁の神経質で気難しい性格はファミリーの内外でも良く知られており、交渉もかなり難儀するとの事。

どんなに話し上手な人でも、それだけでは彰仁の一声で交渉が不成立となる。

ゴマをすったりおだてたりしよう物なら馬鹿にしてんのか、とブチ切れて修羅場に突入。病院送りにされる事もあったと言う話まである。


「アタシは…ボスまであんな性格だったらどうしよう、と思ってたけどね。だって、怖いじゃん。」


「あはは、昔はあそこまで突っ張った感じじゃなかったんだけどねぇ…。今でも優しい所はあるんだけど。」


「へぇ…それは気になるね!」


香恋にそう言われた鈴音は、それはまたいつか話そうかな…と、のらりくらりとしていた。


「ケチ、今話してくれたっていいじゃん、ダメ?」


「香恋ちゃんでもダーメ。」


鈴音がふざけた調子でそう言うと、まぁいっかと香恋はすんなり諦めた様だった。

すると、ニコニコとした様子で鈴音が言った。


「何でー?もうちょっと粘ってくれても良かったのに。そうすればあれやこれやと、秘蔵のお話が効けたかもしれないのにね。

 勿体ないなぁ。」


「アッキーじゃないけど、惚気話になりそうな未来が見えた…パスだわこれ。」


「のろけー?それって美味しいの?」


「分かってて言ってるでしょ?」


香恋が笑いながらツッコミを入れると、鈴音は何だか楽しそうな様子であった。

重たい空気の中に居続けるのは誰だって御免なのである。

しばらくすると、彰仁が屋上から戻ってきた。いつものクールな表情になっていた。


「珍しいな、スズ。止めようと思わなかったのか?」


彰仁からのまさかの発言に鈴音は、鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしていた。

その様子を見て香恋は笑いをこらえていた。


「えーっと…何言ってるのかちょっと分からないなぁ。」


「いつもは来るだろ?」


「ああ、それね。今回ばかりは、お邪魔をしちゃいけないかなぁ…なんて。

機嫌が悪そうだったしね、いつもより。」


鈴音がそう言うと、彰仁は頭を抱えていた。

何処か焦りを感じている様でもあった。


「どうにも落ち着かねぇ。初めて龍神ファミリーが襲撃してきた時も…

いつもの俺なら、人数や戦法まで完全に予測できていたはずだ。

最近、どうも…俺の能力がまともに使えないナニカが働いている気がするぜ…。」


「原因は分からないの?」


「簡単にすぐ分かるなら誰も苦労しねぇよ。」


「確かに…。」


二人の間に重い沈黙が流れた。

その沈黙を破るかの様に、真尋が言った。


「ウチも調べているんだがねぇ…何一つ手がかりが出て来やしないんだ。

敵を倒してしまうまでずっと、このままかもしれないねぇ。」


「想定はしていたけどよ…。真尋がお手上げなら、そう言う事だろうな。」


「ただ、彰仁くんが身に付けてきた実力は決して能力ありきじゃない…

これは胸を張って言える事さ。」


いつもはからかう真尋が珍しくフォローしている。

それに対して彰仁は悪態を付きつつも満更では無い様子である。


「…ったく、調子が狂うな。」


「良い事言うだろう、たまには。」


「たまには、な。良い性格してるよな、乾先生。」


「なっ…その呼び方はよせ。」


真尋がこれまた珍しく照れている。鈴音と香恋はその様子を見てニコニコしている。

こほん、と咳払いをして真尋が真剣な表情で言った。


「とにかく、だ。バラバラになる暇なんか無いだろう、彰仁くん。」


「ああ…理央を早くどうにか見つけ出さなきゃならねぇ。

千夜が教えてくれねぇなら、俺が直接答えを知るしかねぇな。

 冗談じゃねぇ…。」


気だるげな表情に見える彰仁であるが、

アメジストの様な色をした紫の瞳は何処か燃えている様な気がした。


「気を取り直して…俺は理央を探しに行く。付いて来たい奴は勝手に付いて来い…以上。」


彰仁がそう言うと、千夜がお供をするつもりの様で手を挙げていた。


「本当にいいのか?フルスピードで駆け抜けるかもしれねぇぞ、覚悟は出来てるか…千夜。」


「はい…問題ありません。」


千夜は真っ直ぐ彰仁を見ていた。

そんな中、乃蒼の声が無線から届く。

まるでニュース番組の様な効果音を鳴らしたかと思えば、低く落ち着いた声で伝えた。


「重要なお知らせよ…()()()()()()()()射撃担当、大和理央が失踪したわ。

しばらくスナイパーが不在になるから、私も暫く魔法で応戦させてもらうわね。しばらくの間、よろしくお願いするわね。」


乃蒼がそう伝え終わると、今度は彰仁が無線で言った。


「大丈夫なのか?」


「えぇ、問題ないわ。属性攻撃に対応してる敵は少ないでしょう?

 理央の代わりは私が適任だと思うわ。」


乃蒼の声が無線から届くと、アジトの中はどよめきが起こった。

彰仁はすぐさま静かにしろ、と注意した。


そしてそのまま目を閉じて呟く。


「とうとう賢者様も動き出す羽目になったか…。早く帰って来い、理央。」

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