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光に向かって  作者: 白夜
3/9

Episode 3

龍神ファミリーとの最初の戦闘の後、姫森ファミリー一同はリビングに集まっていた。

そこには普段は通信室に居る航と乃蒼の姿もあった。

乃蒼が口を開いた。


「あなた達の中に怪我人も無く、無事に終えて何よりだわ。

得体の知れないファミリーだと存じていたから、色々と心配だったのよ。」


「最後の…向こうのボスの挙動にはびっくりしたけど、何とかなったよね!」


鈴音がそう言うと、戦闘に参加していた8人は頷いた。

それを見て乃蒼はホッとしている様だった。

続けて彰仁が口を開く。


「最悪の場合は通信室の二人にも出て来てもらわなきゃいけない、って考えてたんだ。

航は死神の力を持ってるし、乃蒼はあらゆる属性の魔法を器用に操る賢者だ。

そんな最強と言っても良い力を知られると面倒だと思ったからな…。最善は尽くしたぜ。」


「理央がだらしないのが改めて分かっちゃったけどね。こんな先輩嫌だなぁ…。」


友介がぼやくと、哲弥は苦笑して理央は何をー、と言っていた。

頭を抱えながら、彰仁が言う。


「お前な…同じ幼稚園からの仲だから大目に見てやってんだよ、少しは自覚してくれねぇか?

自分のお金ならまだしも、俺のだぞ?」


「ごめん…本当にごめん、投資で増やして返すから。こう見えて俺、結構センスあるし。」


「どう思う?これは酷いよね。」


「最悪な使い方じゃねぇか…。本当に大丈夫なんだろうな?」


呆れた様子で言うと、理央は大丈夫だからと言って何とか彰仁を納得させた。

この様にかなりちゃらんぽらんな理央であるが、彰仁が温情を示し続けている訳があるのだ。


「能力自体はホンモノなんだよな。俺の未来予知と組み合わされると最強なんだよ、コイツは…。」


彰仁はそう呟いた。


そう、彼が持つ不思議な力は()()()()()()。どんなピンチがあっても必ず乗り越える事が出来る上に、

普通じゃあり得ない成功を収める事もある。

もちろん、それだけでは無い。普段の言動からは想像がつかないが、実は頼もしい一面もあるのが理央と言う人間なのである。

それを知っている為、彰仁は余程の事が無い限り絶縁しようとはしないのだ。


「それで…()()()()はいつ帰って来るんだい?もう1ヵ月ぐらい姿を見てない様な気がするねぇ。」


真尋がそう言うと、鈴音が答えた。


「取材旅行って言ってたからねー。新聞のネタを沢山拾ってくると意気込んでいたみたいだけど。」


「そうなのか。作戦会議は全員揃ってからじゃないとね…意思疎通が図れないと難しいだろう?」


「まぁ、通信機が使えるんだったら大丈夫だけど…飛行機とか船とか乗るみたいだしね…。

今すぐやる訳じゃないから…大丈夫じゃないかなぁ。」


鈴音がそう言うと、彰仁が頷きつつこう続けた。


「会議はダラダラとやるもんじゃねぇ、効率良くやるもんだ。

 俺達ファミリーの構成員が各々作戦を練ってきたうえで…

 ああでは無い、こうでは無いと議論して完成させるのが理想…って所だな。」


「その大事な会議中に寝たり遊んだりしてるのはどこの誰だろうね?」


友介が冷たい目線を向けると、理央はまたしてもムッとした表情を浮かべた。


「実戦が大事なのは分かるよ。作戦を立てたと言っても…

 その通りに進められるか、相手がそういう動きをするかは分からないからね。

 でも…君はそれ以前の問題だと思う。

 アッキーが毎回終わった後に愚痴を言ってるのが聞こえるからさ…、真面目にやろうよ。」


「友介の言う通りだ、お前は緊張感が無さすぎる。

 強いのは確かだが、そんな態度じゃ周りの士気が上がらねぇぞ。」


「ちぇーっ、そんな事言うならアッキーは面白い事やってよ。一発芸とかさぁ…いたっ!」


理央が冗談めかして言うと、彰仁はすかさず頭を小突いた。

そして表情を崩さずにこう言った。


「誰がやるか。とにかく、こうして苦情が出てるんだ…スズの代わりに言ってやるけどよ、

いくら個人の自由が尊重されてるからって何やったって良い訳じゃねぇんだからな?

そこは頭に入れておけよ。」


「そうだよ、アッキーが可哀想じゃん。アンダーボスってのも凄く大変だと思うよ?

フォローしてあげなきゃ。」


香恋もすかさず言った。

それに対して彰仁はすまねぇなと一言言い、香恋は笑顔で良いよと言った。


「それでさ…アタシ思ったんだよ。敵が多い時にさ…

 アタシ一人だけじゃ迎え撃つの大変じゃないかなって思うんだけど…。」


「捌ききれない事もあるからな、丁度今回がそうだったぜ。

 俺達みたいに人数が少ないと…戦えるやつはとにかく前へ行けと言う事になる。

 そこは作戦会議で考えよう。俺も香恋一人じゃ負担が大きいだろうと思ってたからな…

 スズもそう思わねぇか?」


「うん、香恋ちゃんに任せっきりも悪いなぁって思ったからね。編成はその時に考えよっか。」


「決まりだな。」


香恋の要望に対し、鈴音と彰仁はそれぞれ改善策を考えるつもりで居る様だった。


「私は情報を更に集める事にするわ。まだ知らないことが多いもの。

 相手の拠点に乗り込まないといけない事態も考えなきゃいけないわね。」


「そうだね…僕も作戦を練る時に参考に出来るモノが見つかるだろうし、

 潜入調査もした方が良いかもね。」


「やらなきゃいけねぇ事は沢山あるな。

 各々…次の戦いに向けて…いや、最終決戦も見据えて準備を進めよう。それじゃあ解散だ。」


乃蒼と航の二人がそう言うと、彰仁はまとめの言葉を言って一同は各々散っていった。

そんな中、鈴音はまた屋上へと向かって行った。彰仁は心配なのか付いていく。

辿りついた屋上に立つと何処か黄昏ている様子だった。


「隣、良いか?」


彰仁がそう声を掛けると、鈴音は顔を見て頷き、すぐに視線を遠くに戻した。

何処か寂しそうに見えたその表情が、彰仁は気になる様だった。


色々と思案に暮れていると、鈴音が沈黙を破って口を開いた。


「私、真尋ちゃん以外に言ってない秘密があるの。あっちゃんになら…言っても良いかなーって。」


「病気の事と、関係あるのか?」


「うん、そんなところ。」


鈴音は普段は見せない憂鬱な表情を見せていた。

彰仁は気になりつつも、彼女が話すまで黙る事にした。


「まぁ…簡単に言うと、私はあと…半年しか生きられないの。」


鈴音がそう言うと、彰仁は思わずこう言った。


「冗談じゃねぇ…笑えねぇよそんなの。もっとマシな事言えねぇのか?」


「そうだよね、いきなりは信じられないよね…。でも、本当なの。

 この私がわざわざ嘘をつく人間だと思う?」


「それは…思わねぇけど。でも、半年ってお前…。」


彰仁はショックを隠せなくなり、少し声のトーンが弱々しくなった。

鈴音は落ち着いた様子で語りだした。


「私の心臓、機械で出来てるのは知ってるよね?薬が少しずつ負担を掛けて行ってるみたいで。

 薬が弱すぎると、変な奇行に走っちゃうし…強すぎると、心臓に負担がより掛かってしまう。

 真尋ちゃんは、難しい問題に直面してる。だけど諦めずに、私の為に手を尽くしてくれてるんだ。

 この心臓も、真尋ちゃんの両親が埋め込んでくれたものなの。

 でもそろそろ…限界が近づいて来てるみたいでね、

 私がこの先どうなるかは、まだ何とも言えないな…。」


そう語ると、鈴音は何処か達観した様な表情になっていた。

彰仁はいつものポーカーフェイスに戻って言った。


「つまり、夢を叶えたところで…お前が生きている保証はないって事だな。」


「そういう事。まぁ、この世界に足を踏み込んだ地点で分かってたんだけどね。

 人間って誰しも死ぬじゃない。裏社会に生きてると、早死にするのも珍しい事じゃないしね。

 最期にああすればよかった…って後悔して死ぬのは嫌だから、私は壮大な人生計画を練って来たの。」


「はぁ…そりゃ大したもんだけど、何かねぇのかよ。お前が助かる方法ってのは。

 俺も何のためにお前とこのファミリーを盛り立ててきたんだかわかんねぇよ。」


「うーん…強いて言うなら、幸せで満たされたら、もしかして…。」


「随分とふわっとしてんな。もう少し具体性はねぇのか?」


「私の恋人になってくれたら、もしかして…。」


彰仁は思わず吹き出してしまった。


「お前、恋人って…誰に向かって言ってんだ!?もっと良い奴居るだろ…テツとか航とか。」


「ふーん、私じゃ嫌なんだ…。」


不服そうな顔をしている鈴音。顔を見ると涙目になっている気がする。

彰仁はそれに気付いて慌てて否定する。


「ちょっと待て、別に嫌とは言ってねぇだろ。考える時間をくれよ。」


「出来れば今すぐ返事が欲しいんだけどなぁ…。意外と、二人っきりになる時間って無いでしょ?」


「確かにそうだけどよ…。」


彰仁が困惑した様子で居ると、鈴音が笑っている。

誤魔化すようにして言った。


「あはは…流石に、馬鹿な事言っちゃったね。ごめん、今のは忘れて。」


そう言った彼女の瞳が何処か寂しそうに光を放っていたのを、彰仁は見逃さなかった。

屋上で幹部が二人、やり取りをしているともう一人屋上にやって来た。


彰仁が扉の音に気付いて振り返ると、理央が居た。


「ねぇねぇ、お二人さんは一体何話してたのさー?オレも混ぜてよ。」


「理央には関係ねぇだろ。」


「あはは、そんな事言わないで入れてあげてよー。」


悪態を付く彰仁とおどおどしている理央を鈴音が見かねてフォローすると、

彰仁が仕方ないなと呟いては受け入れる様子になった。


「まずさ…渡したいモノがあるんだけど。」


「あ?改まって何だよ。変なモノ渡して来たら承知しねぇぜ?」


変わらず悪態をつく彰仁に対して理央はすかさず続けた。


「大丈夫だって、大したものじゃないから。その…借りてた分…2倍にして返しに来たんだ。」


そう言うと、理央は上着のポケットからお金を出してきた。

彰仁はそれを見て驚いていたが、すぐに表情を戻して言った。


「確かに2倍だな…それで、何か言う事はねぇのか?」


「だらしない事ばっかりしててごめん!もう、アッキーから色々借りたりしないから。

迷惑バッカリ掛けてたよね…本当にごめん。」


ただひたすら、謝っている様子の理央を見て溜息をつきながら彰仁は言った。


「お前…俺の事何だと思ってたんだ?親友なら何しても良いって思ってたから

 平気で金の無心なんてしてきてよ…冗談じゃねぇ。」


「違う、違うんだよ…。オレは頼る相手がアッキーしか居なくて、甘えてしまってたんだよ…。」


「甘え、ねぇ…。お前は俺が助けて欲しい時に助けてくれたことがあったか?ねぇだろ、なぁ?」


彰仁は弁解をする理央に対して怒りを覚えていた。

どんどん険悪になっていく二人を見て、鈴音は珍しく声を荒げていた。


「やめてよ…私の目の前で喧嘩なんかしないでよ…!

 まるで、兄弟がバラバラになっていくみたいで…見てるこっちは辛いんだから…。」


それに気付いた彰仁は気まずそうにしていた。

理央はすかさず口を開く。


()()()()()、ごめん。こんな所見たくなかったよね。

 折角()()()で集まったと思ったのな…オレは、どこで間違っちゃったんだろ…。

 もう、笑い合える日は来ないんだろうな…。」


「大丈夫、私だって分かってるつもりなんだよ…?

 あっくんと理央くんの間には、私の知らない何かもあるんだって事。」


鈴音と彰仁、理央の3人は幼馴染である。鈴音がボスに就任した時も二人が後押しをしていた。

天真爛漫な鈴音と自由奔放な理央に挟まれて彰仁は苦労する事はありつつも、

大切な存在として認識している。その中でも彰仁と理央は磁石の様で反発し合う事も少なくない。


「悪いね…。結局、オレが全部いけなかったんだ。約束を…守れなかったからね。

スズちゃんは勿論、アッキーにも…俺は、償わなきゃいけない。」


理央がそう言うと、彰仁は屋上から自室に帰る時にこう言い残した。


「俺はもう寝る、お前ら二人で話したらどうだ?

 こっちの事は考えなくて良いぜ。」


そう言うと彰仁はそそくさと屋上から姿を消して行った。

何やら機嫌が悪い様子だったと思い返し、理央は気になっていた。


「謝っても、許してもらえない事をしてしまったんだなぁ…オレって。」


「私に言われても分からないよ。でも…あっちゃんは、許したくないって訳じゃないと思う。

 困惑してる様に見えたんだよね…。」


「そうかな…スズちゃん、そういうの良く分かるよね。」


「何となくだけどねー。」


鈴音は他人の感情の機微に聡い所がある。

彰仁みたいに表に出す事が少ない人でも見抜いてしまう程だ。


「このままで終わりたくないんだけどな…。」


理央は目を閉じてそうつぶやいた。

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