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100日後に死ぬ男の薄倖な冒険記  作者: 藤井瑠堪
1章:勇者の仲間
3/4

あと94日①

「今だ!ヴィーナ、ケイン!」

カミロは3mを超えるゴーレムの拳を剣で受け止めながら、背後に居るヴィーナとケインに声をかける。

「言われなくても分かってるつーの。」

ヴィーナはゴーレムに向けて左手を向ける。横に居たケインもヴィーナを見て、焦って両手をゴーレムに向ける。二人の手のひらは白く光りだし、放たれた光の玉はゴーレムの頭と胸を貫く。ゴーレムは、ポロポロと崩れていく頭と胸を抑えながら片膝をつく。

「はは、最後はもらうぜカミロ。」

ヴィーナとケインの後ろから飛び出していったサイモンは、大剣を大きく振りかぶってゴーレムを縦に大きく断ち切った。2つに分かれたゴーレムは頭の方から少しずつ崩れていきただの石ころになってしまった。

「おい、サイモン。お前はヴィーナ達の援護と言っただろ。」

大剣を背中にしまい満足げなサイモンに、カミロが一喝する。サイモンは「ついー。」と笑みをこぼしながら頭を掻く。

「ちょっとケイン。また魔法発動が遅かったわよ。それに狙いもバラバラだったし。ゴーレムの弱点は頭でしょ。」

「す、すみませんヴィーナ…。次は…、次は頑張りますので。」

ヴィーナに詰め寄られたケインは頭をペコペコとしながら、長い髪をバサバサとさせ、顔の半分も占める大きな眼鏡をクイっと目の所に直した。

「まーまー、反省会はそのくらいでいいんじゃないかヴィーナ。」

カミロは二人の間に入りヴィーナを宥める。

少し離れたところで見ていたリベル達3人。リベルが4人に歩み寄り声をかける。

「さすがだな、たった四人でゴーレムをこんなに早く仕留めるとは。」

「当たり前でしょ。私たちはS級よ。まぁ?実際のところ、ケインとサイモンはおまけだけどね。」

ヴィーナがケインの方をまた睨みつける。ケインは「すみません、すみません。」とまたペコペコと頭を下げる。

「おまけって酷いなぁ、ヴィーナは。」

サイモンがケラケラと笑う。

「だけど、まさか君達が言うように本当に魔物のレベルが上がっているとは…。本来ここは、初級ダンジョン。少なくともB級のゴーレムが出ていい場所じゃないな。」

カミロは剣を腰に収めると、大きくため息をついた。

「しかも、洞窟に入ったものの数分でC級の魔物が1体、B級が3体ですよ。奥にはさらに強い魔物がいるかもですね…。」

ケインは不安そうな顔を見せる。

「まぁ、ビビってても仕方ない。陣形を組みなおして奥に進もう。」

カミロの一声で一行はさらに洞窟の中に足を進める。

「すまないな、カミロ達ばかりに戦わせてしまって。本当に俺達は何もしなくていいのか?」

リベルはルードとウイランのもとを離れ、先頭を歩くカミロに小走りで近寄り横についた。

「いや、いいんだ。拙い連携は事故のもとだし、俺達がやった方が早い。」

「さすがS級だな。魔術師が二人も居るパーティとは。」

カミロは「まぁな。」と自慢げに笑う。

「ヴィーナとケイン、二人も魔術師が居るパーティはこの国じゃ俺達だけだ。俺達のパーティは他国からも一目置かれてるんだ。自分で言うのもなんだが、かの武力大国サルタントスが排出する勇者パーティにも匹敵する力があるってね。」

リベルは「勇者パーティに?」と聞き返す。

「聞いたことないのか?勇者パーティ。魔術師と魔装師だけで構成される魔力に特化した精鋭パーティで、魔王軍の勢力に最前線で対抗しているんだ。」

「いや、聞いたことはある。確かに、メンバーに魔術師二人だけじゃなく、カミロにサイモンと魔装師が二人もいる冒険者パーティはここら辺じゃ珍しいな…。」

「だろ?俺達はそんな連中にも負けない戦力を…って、待て待て。よく俺とサイモンが魔装師だと分かったな。」

カミロは豆鉄砲を食らったように目を丸くさせる。

「俺の仲間にウイランっているだろ?彼女もヴィーナと同じ魔術師なんだが、魔力探知が得意なんだ。」

「さすがだ、俺の予想通り。よかった。」

「『よかった』?何がだ?」

カミロは一瞬「しまった。」という顔をする。

「いや、あれだ。この洞窟は変な噂があるからな。魔術師は多くいて不足はない。」

少し早口になるカミロに、リベルは「噂?」と聞き返す。

「俺達もこの洞窟の異変について何も知らないって訳じゃない。冒険者の間でも少し話題になっていたんだ。もしかしたら、この洞窟には『魔人』が居るかもってな。」

「そうか、やっぱりか。」

冷静に頷くリベルを見て、カミロは鼻で笑った。

「もっと驚くかと思ったんだけどな。その様子だと、君たちがこの洞窟に来たがった理由はそれにありそうだね?」

リベルは「まぁ。」と曖昧な返事をして見せる。

「もしそうなら、君たちは魔人を舐め過ぎだ。魔人は魔物達とは別格だ。比べ物にならない魔力量、意思を持ち言葉を話す知能、極めつけは魔力の伴わない普通の攻撃は通用しないときている。相手になるのは、魔人と同様に魔術を使える魔術師か、武器に魔力を纏わせる魔装師だけなんだ。君たち3人の中だとウイラン以外は瞬殺されるぞ。」

「詳しいんだな。そんな魔人がでるかもしれない依頼をよく引き受けてくれたな。」

「馬鹿にしてるのか。俺達はS級だぞ?魔人討伐経験は数えきれないほどある。それに、依頼を引き受けたのは…。」

カミロは途中まで言いかけたが、続きの言葉を喉の奥に押し込んだ。

「引き受けたのは…なんだ?」

リベルが聞き返す。

「あれだ、そのー…。君たちのためだ。困っている様子だったからな。実際助かってるだろ?」

カミロはまた早口で答える。

「そうか、やっぱりカミロはいい奴だな。」

リベルが笑いかけると、カミロは「そうだな。」と含みのある笑みを浮かべる。


「おい、女2人!早く歩け、後ろが詰まってんぞ。」

サイモンが前を歩くルードとウイランに圧を掛ける。

「そんなに先に行きたいなら、先に行ってもらって結構よ?」

ウイランは手を前にだして「どうぞ。」と挑発的な顔をサイモンに向ける。

「は?それじゃ陣形が崩れて作戦の意味がねぇだろ。」

「作戦?私は聞いてないよ?」

ルードに聞き返されたサイモンは分かりやすく「しまった。」という顔を見せる。

「あ、あの違うの。S級の私たちがあなた方を挟んで守るっていう…作戦で…、そうだよねサイモン?。」

サイモンの横にいるケインが慌てて話に入る。サイモンも取って付けた様に「そうそう。」と慌てて相槌を打つ。

「そうなんですか?ヴィーナ。」

ウイランは怪訝そうな顔を、前を歩くヴィーナに向けた。

「…そうよ。」

ヴィーナは歯切れの悪い返事をする。ルードとウイランは顔を見合わせると、急に立ち止まった。

「おい、立ち止まるな。前に遅れちまうだろ。」

サイモンの怒号に、異変を感じたカミロとリベルも立ち止まり後ろを向いた。

「へー作戦…。あたかも私たちを逃がさないように上下で挟んだこの陣形にもちゃんと意味があるってことよね。」

サイモンは「そうだ。」と強気に言葉を返すが、カルロとヴィーナは目を合わせて何やらコソコソと相談を始める。

「じゃあ、もう一つ聞いていい?私たちの後をつけてくるお仲間さん達も陣形の一部なのかしら。」

カミロは高笑いをする。

「さすが東洋の魔術師。勘が良いな。」

カミロが目で合図すると、サイモンは剣を抜き、ヴィーナとケインはルードとウイランに手のひらを向けた。後ろからは屈強な男四人が走ってきて、リベル達を囲んで剣を向けた。

「これはどういうことだ?カミロ。」

「すまないなぁリベル。」

カミロも剣を抜くと、リベルに向けた。


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