第三話 冒険者との出会い
今、私は、追われている。
「勇者殿!お待ちを!」
「我等は味方でございますぞ!」
「ヒィ」
・・・明らかにお屋敷の騎士よりも体格が良くて、強そうな騎士達が、私を追いかけて来る。
怖い!怖い!怖い!
どうする?戦う?私の魔力を対価に召喚出来るみたいだけど、能力が未知数だ。
あれ、前から、馬車が来る。
ゴトゴトゴト
馬車は止まり。令嬢が出て来た。
釣り目で厳しそうな雰囲気、剣を背中に背負っている。
「ちょっと、貴女、私、困っているの。助けて下さらない。お礼をしますわ」
・・・怪しい。子供である私に、助けを求める者なんていない。
逃げるに向いている異界の騎士様は・・
「ねえ?私、ロザリザよ。心穏やかで、依存心が強い令嬢よ。怪しくないわ」
・・・怪しいと言うよりも、よく分らない。
こっそり、
頭の中に、ステータス画面が浮かべる。
お勧めで、
情報小隊所属陸士長旧装備、バイク偵察・・・
と出た。
これかな。
「召喚!」
ピカッ!
光とともに鉄の馬と、深い緑の服の騎士様が出て来た。
「マスター、ご命令を!」
「私を逃がして、お願い!」
彼は、私に、柔らかい緑の兜を渡す。
「ライナーです。あごひもをしっかりつけて下さい」
「はい!早く・・お願いします」
私は鉄の馬に乗り。そのまま、森の中を走った。
ブオ~~~~~ン
ロザリザと名乗った令嬢は、一連の動きを興味深く眺めていた。
「あ~あ、フラれちゃったわ。勇者様は、高確率で、馬車に乗っていて、困っている令嬢と出会い。助けると、異世界アカデミーの論文であったのに・・」
「お嬢様・・・剣を背負っていてはダメでしょう」
やがて、
ロイドたちと、合流する。
「帝国のロザリザか?剣を背負っては、勇者殿が怖がるだろう。まだ、子供と言っても良いお年だ」
「フン、ロイド前辺境伯の顔面傷男に、追いかけられて、怖かったんじゃない?」
「小娘が!」
「ジジィが!」
軽口を叩きながらも、
すぐに、真顔になった。
「そんなことを言ってる場合じゃない」
「ええ、カゲをつけるしかないわね。でも、ここから、先は魔族領よ。魔族と冒険者の世界」
「大丈夫だろう。冒険者たちは、勇者信仰がある。無体な真似はすまい。それよりもこの国を出れて、僥倖だったかもしれない」
☆森の中
私は、彼らの姿が見えなくなってから、召喚を解いた。
「有難うございました」
「マスター、ご武運を!」
ボム!
お腹がすいた。屋敷からは、毛布と火打石しか持って来なかった。
あれ、小屋がある。
「どなたかおりませんか?」
眠い。食事は、明日、何とかしよう。
オープン!
異世界の凡人・・・何が召喚出来るか調べる・・・
保母さん?お母さん・・・興味が引かれる。
あの女、男爵夫人をお母さんと思ったことは一度もない。
お母さんはどのような存在か知りたい。
召喚!
ピカッ
「マスター、初めまして」
出て来たのは、お母さんではない。エブロンをつけた20歳ぐらいだろうか?
お姉さんだ。
「あの、その、眠るまで、膝枕とか・・・出来ますか。寝たら召喚を解くようにしておきますので・・・」
「はい、もちろんでございます。可愛らしいマスターですね。ウフ」
・・・・
私はお姉さんの膝で、思いっきり泣いた。
「ウウウウウ、グス、グスン」
涙があふれる。
今日はいろんな事があった。
今までは独りだろう。
これからも、ずっと、独りだろう。
でも、あんな男爵家はいらない。
「グスン、グスン、ウウウウウウ」
「フフフフフ、嫌なことは私が、引受けますからね。お話し下さい」
「私は、今まで、生活に苦労はしてなかったのですが、誰ともつながってなかったのです・・・」
「あら、貴女は若いわ。まだ、分らないわ。こんな可愛い子を世の中はほっとかないわ。大丈夫よ。大丈夫」
☆朝
目が覚めた。日が高い。
昼まで寝ていたのね。
ガサガサ
「ヒィ、人が沢山!」
小屋の外に、大勢の人達がいる。
子供から、母親、男・・・老人たち。
どんな存在?
あれ、皆、平伏している。
「何故?」
私は、ドアの前で、皆の先頭で、平伏している老人にたずねた。
「貴方たちの小屋ですね。昨日、無断で使って申訳ございませんでした・・すぐに出て行きます」
「とんでもございません。勇者様ですね。お目覚めまで、お待ちしました。アキ様・・ですか?」
「ええ、そうです」
・・・私の名前を知っている・・・
「勇者様、勇者様だ」
「ああ、黒髪に、黒目だ」
・・・黒目?黒髪は知っていたけども、
「僭越ながら、鏡をお持ちします」
・・・そう言えば、男爵家では、私が鏡を見ることは禁じられていた。
『お前は、ブスだ。鏡を見たら、気絶するぞ。だから、見るな』
しかし、この老人は、
「ああ、お美しい。勇者ケンジ様と聖女サユリ様のお子だ。間違いない。ウウウウ」
美しいと言ってくれる。
「おそらく、あの男は、アキ様が、勇者であることを隠そうとしたのでしょう」
「あの、お話を聞かせて下さい。私は、何者ですか?」
・・・当たり前だが、私には、父様と母様がいた。
過去形だ。
勇者パーティは、不要として、軍隊で討伐されたそうだ。
「何故?」
「私めは、勇者パーティの生き残り、ポーターのハンスでございます。この者たちは、私の一族、皆、冒険者をしております」
私は、過去、父様と母様と仲間、勇者パーティについての起きた事件の話を聞いた。
最後までお読み頂き有難うございました。