第二話 鼻を切られた王子
ガタガタガタガタ~~~~~
「なるほど、マスターのスキルは、凡人召喚術、だから、私たちを召喚出来たのですな」
「ご、ごめんなさい。私は貴方たちを凡人とは思っていません」
「いや、凡人で結構です」
「違いない。アハハハハハハ」
ガタガタガタガタ~~~
私はあの後、少し休んで、また、騎士様を召喚した。
今度は、組(三名)を召喚出来た。
それと、死体とあの二人を運びたいと思ったら、
「60式自走106ミリ無反動砲」という名の荷車を召喚出来た。
まだ、レベルが低くて、これしか出せないと世界の声は言っていた。
今は、召喚した騎士様と、楽しくお話をしながら、死体と、あの二人を運んでいる。
足を怪我したから、仕方ない。
二人が落ちてはいけない。
縄で縛って、荷車に付いている鉄の丸太にくくりつけてある。
「アハハハハハハ~~~キャハハハハ~~~」
「グスン、グスン、アキ、いたい」
そして、死体は、荷車に乗せきられないから、縄で縛って、引きずって運んでいる。
すごい力だ。しかし、この荷車、何で動いているのだろう。
「男爵様は、分ってくれるかしら・・」
「しかし、ヒドイ・・いや、私らがついています」
お屋敷の前に来たら、様子がおかしい。
騎士達が、集まっている。
私が、降りて、事情を説明しようとしたら、異界の騎士様が止める。
「危険です。マスター」
「ええ、そうなの?」
☆騎士視点
「あの化け物め。あの引きずられている騎士達は、殿下直属の護衛ではなかったのか?」
「隊列を組め!対地竜戦闘用意!」
「隊長!お嬢様と、アンドリュース殿下が、盾に使われています!」
「な、何だと、姑息な!弓を射られないではないか?」
・・・あの出来損ない。張り子の虎は、凡人しか、召喚出来ないハズではなかったか?
薄々分っていたが、アンドリュース殿下とキャロライン嬢の浮気がバレて、逆上!
護衛の騎士達を殺したな。
隊長が大声を上げる。
「お前ら、前面は槍ブスマ。後方に弓、あの二人に当てるな。近づいたら、乱戦に持ち込んで、地竜の腹を狙え!」
「「「「オオオオオオオ」」」
この男爵家には、騎士学校を卒業した数十の騎士達が常駐していた。
彼らは戦闘のプロであるが、
あくまでも、この世界のだ。
セオリー通り密集していた。
バン!
彼らが、地竜と表現した60式106ミリ無反動から、光と煙が発せられた。
「丸太から・・」
ズドオオオオオオーーーーン
「「「「ギャアアアアアア」」」
彼らの隊列のど真ん中に爆裂魔法が炸裂し、
隊列は崩れ。一発の無反動砲で、騎士達は戦闘不能になった。
☆アキ視点
「あれ、殺しちゃったの?」
「ええ、命令は、男爵の事情説明するための護衛です。障害を排除しました!」
「うん・・・」
・・・そうだ。この騎士達は、私を犯そうとした者達の仲間。
「アハハハハハ~~~~ハハハハハ」
「ウグ、耳が、耳が」
・・・私は何も知らなすぎる。
私はアンドリュースとキャロラインを男爵に返し。
事情を説明した。
「ああ、そうか。さすが、我が娘よ。アハハハハ」
「うん。うん。今日から令嬢教育再会するわ」
・・・娘?私は娘として扱われたことはなかった。
「ア~~ハハハハハ」
「グスン、グスン」
「分ってくれたのなら、いいです」
・・・私は去ろうとしたが、何故か、止める。
「待て!どこに行くのだと言うのだ!今日は外国の偉い人にお披露目をするのだ。ほら、アンドリュース殿下を自由に出来るぞ。アンドリュース殿下、貴方からもお頼みしなさい!」
「ウグ、怖い。こんな怖い子嫌だ。化け物だ!」
「馬鹿!」
私は一言
「いらない。み~んないらない」
と言って、屋敷を去った。
これから、どこに行こか。
☆数時間後
女神信仰圏公会議使節団代表、ノース王国ロイド前辺境伯と護衛騎士、司祭、聖女、文官、総勢100名が男爵邸を訪れた。
初老だが目つきが鋭い。
「事情を説明せよ。勇者殿は、男遊びが激しくて、ワガママで勉学を嫌っていたと報告にあったが・・」
「ヒィ、いや、その、あの」
「やっと、念願の視察がかなったのだ。貴国と貴様の報告はおかしいと前から思っていたのだ。あの年齢で、『ゴーレムみたいになりたくない』と、家庭教師や訓練を拒むか?」
「いえ、その」
「次、言葉を濁したら、殺すぞ?!」
・・・・
何と言うことだ。
女神信仰諸国が送った勇者養育分担金は、この国で中抜きされて、更に、この養育係に抜かれて、彼女の教育や社交、訓練に使われていなかっただと。
専属メイドのキャロラインが、主人のように振舞い、勇者殿をメイドとして扱っていた?
無礼者め。
女でなければ斬っておったわ。
これが、どれほど危険なことか。
家庭教師は、アキ殿ではなく、こいつの子につけただと。
そして、婚約者は誠実な男を用意しろと要請したが、そいつにレイプされようとしたのは、状況証拠から分る。
覚醒したか?
彼女の部屋を見た。
納屋ではないか?
そして、こやつの娘、キャロラインの部屋には、儂らが送ったドレスに、本、宝石をため込んでやがる。
「お前らの家族が、男爵家相当の生活が送れるのは、勇者殿を愛情たっぷりに育て、この世界に馴染ませる対価だ。だから、子だくさんのお前らが選ばれたと聞いたが・・
お前は、勇者殿が爵位を継ぐためのつなぎにすぎない・・・・よくも、よくも・・・この男爵家の家名は、ニッタだ。勇者殿の家門だ。お前は管理人にしか過ぎない」
「正直に話しました。どうか御慈悲を・・・」
「ヨシ、褒美だ。男ぶりをあげてやろう!」
パスン!
ポロン
「ヒィ、斬った。耳を・・・」
「あの~私どもはこれから、如何すれば、6人の子供がおります・・」
「ああ~、知るか!この国の王に聞け」
「だって、あのスキル、凡人召喚だって分ったら、誰でもそうします!」
「あ、勇者殿は、役に立つ立たないではないのだ。それ以上減らず口をたたくと女でも斬るぞ!」
「ヒィ」
「そして、アンドリュース殿下に、褒美だ!」
パスン!
今度は、アンドリュースの鼻を切った。
「ウグ、ウグ」
「これで、顔だけは、少しは男らしくなりましたぞ!アハハハハハハ」
「キャハハハハハハ」
心を失ったキャロラインも、つられて笑った。
二人の笑い声が屋敷に響く。
最後までお読み頂き有難うございました。