第一話 不幸とは、ご飯が食べられても感じるもの
私は、不幸だったと言えば、おこがましいのかも知れない。
世の中、食に困る人が多くいる。
私は、衣食住こそ困らなかったが、誰も話しかけてもらえなかった。
家は男爵家だったと思う。
食卓は別、厨房に取りに行き。自分の部屋で食べる。
6歳ぐらいまでは、この家庭の子供達とともに、読み書き計算をならったが、7歳になると、
ジョブスキルの鑑定が行われた。
「スキル・・・身体強化魔法と、凡人召喚と出ました」
「チィ、ありきたりな身体強化と凡人召喚だと!?試すまでもない」
王都から来られた役人は肩を落した。私の前でも、ガッカリを隠さない。
おかしい。この家の子は、剣士や刺繍、スキルがない子もいるのに・・
貴方には教育は必要ありませんと、教育終了になった。
だから、簡単な読み書きと計算しか出来ない。
魔法は、初等教育で習った魔素を高める修行だけはした。
時間は沢山ある。
肩幅よりやや広く開き。
手を地面に平行にして、突き出す。
魔素を感じて、体中に循環する感覚を感じる。
それを1日多いときで8時間、毎日、毎日やった。
すると、二年目くらいから、意識しなくても体に魔素が流れていることが実感できた。
修行場所は、
部屋代わりとなった納屋の中だ。屋敷の外に出るのは厳禁とされている。
塀の周りには大勢の騎士達が目を光らせている。
私が外に出ようとすると、暴力こそふるわれないが、怒鳴られる。
もっと、先に進みたい。授業を見たいが、お屋敷の中を用もないのに、ウロウロすると、納屋に戻るように促される。
友人は出来なかった。男爵の子の中で私にかまってくれる子もいた。キャロラインだ。
年上のキャロラインは、お屋敷でお茶会をするときは呼んでくれたが、
「キャ、これが、あれですね」
「ええ、当家で保有しておりますの。最も、実力がない案山子ですわ」
「でも、いるだけでニラミになりますわ。羨ましいですわ」
意味深に言われた。
私はテーブルにつけない。
ぶかぶかなお仕着せを着せられ、キャロラインの後ろに立つだけだ。
それでも、光明はあった。
12歳になると、
婚約者が出来た。6歳年上で、王国の第4王子、学園を卒業し、婚約者として男爵邸で住み込んで生活をするようになった。
月に一度は、お茶会をしてくれた。
「アンドリュース様・・貴族学園とはどのようなところですか?」
「別に・・・殿下をつけろ」
「・・・申訳ございません。習わなかったものですから」
「人のせいにして、性格悪いな」
「・・・・・」
金髪碧眼で、スマートな体。
唯一、話が出来る存在、婚約者との未来を想像して、ワクワクしたものだ。
あれは、私が、13歳になって、しばらくしたころだ。
「今日は、出かける。すぐに来い」
「はい!」
初めての婚約者とのお出かけだ。屋敷の外に連れて行ってくれた。
メイド達が話していたのを聞いていた。
デートというものであろう。
古い建物に到着した。
「入れ」
中には、10人の男とキャロラインがいた。
アンドリュース様のご友人ね。
紹介してくれるのね。嬉しい。お友達が出来る。
「よろしいのですか?」
「ああ、サクッと傷物にしてくれ」
「えっ」
「これで、アンドリュースと婚約出来るのね。私も見る~~」
「ああ、キャロライン、宣言するぜ。アキは、これから多数の男たちと不純異性交遊する。お前が誘った筋書きだ。
だから、婚約破棄だ。
この婚約は王命だから、こうでもしないと、破棄できないのよ」
「そ、そんな」
「今日さ。外国の要人が視察に来るのよ。
僕は嫌さ。お前の婚約者と紹介されるのはな。
お前はワガママだ。贅沢で手を焼いている。派手なドレスを着て、その年で男遊びが激しいって報告する手ハズになっているのよ」
「い、いや」
・・・外国の要人?偉い人?何故、ここに?
ガバ!
男たちに、両手、両足を押さえられた・・・
必死に抵抗をする。
「ウグ!」
「こ、こいつ、力強いぞ。身体強化魔法を使ってやがる!こちらも使うぞ!」
男たちの体が青く光った。足、腕一本に、それぞれ二人がかりで押さえる。
やがて、手と足を動かせなくなった。
「服は派手に破け。そして、事後に派手なドレスを着せるからな。服はそれしかないと分らせるんだ」
「殿下。分りましたぜ」
「「「お~し、ジャンケンしようぜ」」」
「「「ジャーンケン・・・」」」
地獄だ。その時、頭の中に、スキルの画面が浮かぶ。
緊急!身体に危急不正の侵害有り!
凡人騎士を召喚しますか?
はい/いいえ
ああ、凡人・・・の騎士様、こいつらは、騎士だ。体格で分る。
どうする?召喚した騎士様が、怪我をしたら、そもそも、私なんかを守ってくれるかしら、
答えを躊躇していると。
時間切れ、召喚を実施します!
陸上自衛隊部隊配置一等陸士昇任直後、旧装備・・・
あれ、私は、異国の言葉が分る。
ピカ!と光り。床下に魔法陣が浮かび。一人の男が浮かび上がって来た。
私の足の方向、アンドリュースを背にして立つ。
奇妙な出で立ち。深い緑の服に、茶色の長靴、頭は鉄の帽子に、木と鉄で出来た杖を持っている。
「何だ。こいつ・・・ああ、凡人召喚術が、サクッと殺しちゃって下さい」
「想定内だ!ちゃんと剣を持ってきていますぜ。おい、誰かやれ」
「いや、こいつを倒した奴が一番はどうだ?」
・・・未成年だけど、明らかに私より年上、お兄さんが私に話しかける。
【マスター命令を!】
「わ、私を守って下さい」
「うわ。こいつ、一人前に命令をしているぞ!」
「何だ。聞いたことのない言語だな。どこかの蛮族の兵士を召喚したな」
「剣もちっちえ。武器はその棒か?」
「「「「ウハハハハハーーーー」」」
彼らは、銃剣を見て、そう判断し、軽んじた。
「危急の不正の侵害が認められる。軍隊と認定!警察官職務執法省略!武器を使用します」
カチャ、ガチャン
何か杖を操作したと思ったら。
ズドーン!スドーン!・・・・
音が続く。屋内なので響く。
私の手足を押さえていた圧は消えた。
死んだのだろう。
ズドーーーン
ズドーーーン
「ヒィ、僕は、君の婚約者だ。なあ、さっきは悪ふざけだったんだ。二人の絆を確かめるために」
「そーよ。役立たずかどうか試したのよ。貴方、すごいじゃない!どうして隠していたの?見直したわ」
「そ、そうなの」
「そうさ。やり直そうぜ。僕がお前の力を覚醒させたんだ」
「そうよ。実は、私は貴方のお義姉様だったのよ」
あれ、私の頭の中は、やけに冷めている。自分が殺人を犯したからではないからかもしれない。冷静に自分の置かれた状況を考える。
「へえ~そうなの・・・な、ワケあるかぁ!」
「「ヒィ」」
「主犯格二人は如何しますか?」
「そうね。命だけは取らないで・・・」
「命だけは取らない!了解です!」
スドーーーン
ズドーーーン
音が二発響いたら、アンドリュースとキャロラインの足は吹っ飛んだ。
「ヒィ、熱い、熱い!」
「グヘ、ゲオ・・・アハハハハハ~~」
・・・キャロラインは心を失った。
そして、
「任務達成、状況終了!」
と異界の騎士様は、消えて行った。
お礼を言いたかったのに・・・
「あれ、この死体の山と二人、どうしたらいいのかしら」
最後までお読み頂き有難うございました。