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告白。
「後ろめたい事がありました。」
記憶の片隅で膝を抱えている幼い頃の亜里朱は…。
アリスに告げた。
そうだ。後ろめたい事があったのだ。
二階堂クレア。葛葉花蓮。
2人の親友は幼い頃からの付き合いだった。古い公団住宅で同じ時を刻んできたのだ。時を重ねると云う事は、ある種のコミュニティを形成するのであろう。そしてソレは亜里朱にとっては【家族】と呼んでも何ら不思議ではなかった。家族ぐるみの付き合いであったから当然と云えば当然なのだが…。亜里朱にとって2人は【実の家族】の様な存在になっていたのだった。
空想に耽っている間の亜里朱は…。
空想と現実の区別が曖昧になっていた。
他人の瞳に映らないぬいぐるみと会話していても…。
亜里朱にとって、ソレは確かに現実であったからだ。
母親が夜遅くに帰宅する様になると…。
亜里朱の空想する時間は、長くなっていった。
そして…。
亜里朱は父親の存在すらも空想の世界で手に入れる事となった。
だが、亜里朱は実の父親の顔は知らない。
だからなのか…。
亜里朱が空想で作り上げた父親には…。
クレアと花蓮の父親の面影があったのだった。




