ぬいぐるみ
「ぬいぐるみ…が…ですか?」
御子神は大きな瞳を丸くして…。
そう聞いた。
御子神光は小学校6年生なのだが、容姿も話す仕草も大人びている。視線の運び方や言葉を吐息の様に唇から語る姿は大人の女性に劣らない程に艶かしい。艶々とした黒髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、その1本1本がキラキラと光を反射している。大きな黒縁の眼鏡を掛けているのだが、その奥にある瞳は大きく、キラキラと光を纏っていた。
その御子神の言葉を聞くと…。
御子神の目の前に佇む少女の様な女性は…。
「そうそう。彼女は、ぬいぐるみが唯一の友達なんだよ。特に猫と兎がお気に入りみたいだね。」
と…。人差し指を立てながら、そう言った。
少女の様な人と表現するのには理由がある。実際、その人を例えるのならば、少女としか表現の仕様が無い。だけども、その人は御子神の年齢の倍は生きている。御子神の年齢が12なのだから、目の前に佇む、その人は24と云う事になる。
容姿はと云えば、それこそ少女なのだ。精巧な球体人形の様な可愛らしい少女。艶やかな黒髪は肩にかかるか、かからないかのラインで緩やかな形を描き、項から耳にかけて少しずつ長くなっていて、前髪は眉のラインで切り揃えている。その髪型がこの少女を一層と精巧な球体人形に見せていた。
そして…。
天乃は言葉を紡ぐ。
「女子高生であり童話作家でもある、川越亜里朱が新作を出したんだ。まぁ。一般的にイメージされる童話とは違うけどな…。この新作は、あたしもまだ読んでいないのだけれども」
それから鞄を探り
「あ。これこれ。」と言うと…。
1冊の本を取り出した。