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第7話

なんとかギリギリ間に合いましたわ。

私はほっと胸をなでおろす。

入学式場ホール、2階の特別席に着席すると、階下の新入生達が一望できる。

若さが…まぶしくてよ!

期待に胸を膨らませ今日のこの日を迎えた新入生は、皆希望を胸にキラキラと輝いている。

濃紺ブレザーの制服を身にまとった新入生のカラフルな髪色はやはり見慣れない。

流石、乙女ゲームですわ。

主人公のド派手なピンクの頭はその中でも一目で分かるほどに強烈に目立つ。

蛍光色のピンクですものね。自己主張が激しすぎますわ。

その他大勢に埋没してしまう私のこげ茶色した髪色とは雲泥の差。

扇子を広げてため息をこっそりと吐き出す。

ライバルのことはさておき、リアム様はどこかしら?

ああ、一番前の列にいらっしゃいましたわ。

他の生徒に交じって着席されている。

すっと伸びた背筋が美しい。大勢の生徒の中においても、かの人の輝きは少しも埋没することはなく、その気品に満ちた後ろ姿は一目瞭然だった。

漢は背中で語ると言いますが、納得ですわ。

後ろ姿でもにじみ出るオーラが神々しい。

ああ、あの背中にもたれたい…。

そしてリアム様のかぐわしい匂いをクンクンしたい…。

おっと、油断していましたらお口から涎が…垂れておりますわ。扇子を広げていて正解でしたね。

ささっと、手元のハンカチでさりげなくふき取る。

周囲にバレていないとは思いつつ、念のため視線を左と右にチラチラっと動かすと、あきれたマリリンの視線とばっちりぶつかった。

バレていましたわ…。

ここは一つ、とびっきりの笑顔でごまかしましょう。

うふ。

気を取り直して、リアム様の背中に一心に熱視線を送ることにのみ集中する。すると、突然リアム様が立ち上がり壇上へ向かった。

見つめることに集中しすぎて式のプログラムのアナウンスをずっと聞いていませんでしたわ。

私は多少反省する。

今世初めて目にするリアム様の制服姿。

正直コスプレにしか見えない。

逆にそれがいい…。よき。

堂々たる貴公子ぶりと言ったら、筆舌にしがたいほど。なのに制服。ご褒美ですか?

たまりませんわ。

流石はメインヒーロー。

幅広い需要を取りこぼさない、貪欲な運営の攻めの姿勢を讃えましょう。

厳粛な雰囲気の中、会場の視線を独占して、我が国は第三王子による魔道学園入学式、主席代表スピーチがいよいよ始まった。

声変わり半ばの独特なリアム様の魅力あふれる低い声に胸がキュンキュンする。

朗々としたスピーチは、16歳にしてすでに上に立つ者の風格を帯びている。

リアム様の煌びやかなオーラを受け止めて、その美声に聞きほれるあまり、スピーチの内容がちっとも頭に入ってこない。

情報量が多すぎる。

私のキャパを軽くこえてくるリアム様の魅力に乾杯で完敗。

つい韻を踏んでしまいました。おほほほ。

公爵家に帰ったらマリリンにスピーチの内容を解説してもらわなくてはいけませんわ。

私はリアム様の魅力を浴びる至福の時間に全力で身をゆだねる。残念なことに、幸せな時間に限ってあっという間。

とうとうリアム様がスピーチを締めくくってしまわれた。一瞬の静寂の後、会場は耳が痛くなるほどの割れんばかりの拍手と歓声で包まれる。

流石ですわ。

しびれましたわー。

ごちそうさまです。

恍惚としていると、いつの間にか滞りなく厳かな式が終わったようだ。

気付くと周囲の人がはけている。

本当に夢のような時間でした。

リアム様がステキ過ぎて、今日はその雄姿を何度も思い出してうっとりできそうです。

なんて、尊いのかしら。

無意識に合唱したまま、またもや余韻にひたっていると、わざとらしく咳をしたマリリンから色とりどりの美しい花束を渡される。

そうでした。

婚約者として、これを愛しのあの方にお渡しして、入学のお祝いを告げませんと。

私はここぞとばかり、堂々と婚約者としての特権を行使するつもりです。

余韻からいっきに覚醒した私は、マリリンを引き連れていそいそと階下へ向かう。

ルンルンと思わず口ずさみたくなるような、こんな浮かれ気分のままでは、うっかりスキップしてしまいそう。

お品よくしませんと。

おほほほ。

「キャロライン・フォーゲル公爵令嬢。」

ニコニコとだらしなくにやけている私に突然、冷たい声がかかった。

はっと表情を引き締めて公爵令嬢らしく振り向くと、真新しい制服姿に身を包んだリアム様付近衛騎士のサミュエル・ホロヴィッツ様(前世の私の推し)が、うろんな目で私を見つめている。

あら嫌だ。

ビシバシと感じる不穏なオーラ。

サミュエル様…もしかしなくても、怒っていますわね?

激しく関わりたくなくってよ?

一体何の御用でしょう。

嫌な予感しかありません。

本当は全力でスルーしたいのですが…。

私は顔を引きつらせて、とりあえずあいまいにうなずいた。

「何か御用でしょうか?」

意気地なく、声が震えたのは気のせいですわ。

いえ、本当はおしっこちびりそうです。

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