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第1話 プロローグ

式典用のホールには巨大なシャンデリアが魔法で照らされて、キラキラと星屑のように輝いている。

煌びやかな学園の卒業式。

正装した紳士淑女の卵たちが希望に顔を輝かせ集っている。

やっとなのね。彼が卒業すれば私たち、やっと結婚できるんだわ。

本来なら婚約者の一番近くから眺めているはずなんだけど…。

どうして私は一人でこんな離れた場所で彼の卒業式に参加しているのかしら?

式も終盤となったところで、私の婚約者の第三王子がスピーチを行う。

式典用の濃紺の軍服に身を包んだその姿はいつも以上に彼を凛々しくも神聖にみせている。

美の化身。

なんてステキなのかしら。

188センチの長身に適度についたしなやかな筋肉。

美しいプラチナブロンドの髪にエメラルドグリーンの瞳。

彼の全てが息をのむほどにステキ。

ああ、存在そのものに感謝だわ。

私は心の中で合唱する。

彼の朗々たる声が会場に響き渡る。

うーん。耳から溶けてしまいそう。

王子は見た目もさることながら声もとっても素敵。うっとりしちゃう。素晴らしいわ。流石、私の愛しい人。

「ここで、皆に知らせておくべきことがある。

 今日を持って、私リアム・アインホルンはキャロライン・フォーゲルとの婚約を破棄し、新たにアリス・ハーンとの婚約を結ぶことをここに宣言する。」

驚きの声で会場が湧いた。

壇上に信じられないくらいの巨乳を揺らして、蛍光色の下品なピンク色をした髪色の背丈の小さい女がかけあがる。

二人は喜びのあまり互いを強く抱きしめあって、壇上で3回ほどくるくる回転している。

式場は拍手喝采の嵐に包まれている。

誰もが祝福を贈っているようだ。

何ですの、これは?

気が付くと、私は手にした扇子を力任せに2つに折っていた。

そ…そんな。そんな。

嫌ですわ!

「ちょっと、お待ちになってー!」

私は大声で叫んだ。

淑女としてあるまじきの態度ですが、いたしかたありませんわ。

私の一生がかかっておりますもの。

しんと静まり返ったホールで私は王子に問いただす。

「リアム様。どういうことでしょうか?

 私、婚約破棄など…とうてい承服しかねませんわよ?」

二人の世界にひたり磁石のようにひっついている壇上の恋人たちは、顔だけをこちらへ向けた。

いやいや…。

公衆の面前で…。もうちょっと離れなさいよ…。

羨ましいですわ。

今、私の存在に気づいたかのように目を開き王子は口にする。

「なぜあなたがここに?

 フォーゲル公爵家からはすでに了承の意をもらっている。

 あなたの嫁ぎ先もシュタイン子爵家がトーマスと聞き及んでいるが、あなたには知らされていなかったのか?」

は?

初耳ですが…。うそでしょう?

父上…。兄上…。

えええ?

呆然としていると側仕えの者たちに、「お嬢様、ここは一度お父上とお話されたほうがよいかと…」と説得されそのまま馬車に押し込められる。

えええ?

ちょっと、待って…。

王子!

嫌ですわ。

それに嫁ぎ先がシュタイン子爵家のトーマス…ですって!?

デブ・チビ・ハゲの三重苦。そして、確か70代でしたわ。しかもど変態&好色でその名を轟かせておりますわ。

一体どうして、あのクソジジィなの!?

ウソでしょう?

何かの間違いだわ!

絶対にあり得ませんわ。

私は急いで公爵家へもどり、父上に面会を申し込む。

執務室に通されて、「どういうことですの?」と問いただせば、「当然の成り行きだ」と一蹴された。

「遠縁に魔力の高いお前が生まれた時に、王子の婚約者とするため引き取ったが、それはハーン公爵家が養女アリスも同じだ。おまえが殿下とアリスの2人よりも2年年長だった為に婚約者と仮にされていたが、おまえとアリス、二人の条件は全く同じだった。

では能力は?

おまえはどんな成果を上げた?

アリスは今回王子に次ぐ全体で2番目の好成績を納め学園を卒業した。

魔法学科でも新たな魔法理論を生み出して、国や社会に貢献した。さらに奉仕活動にも積極的だ。

それに比べておまえは?

生まれながらの魔力のみしか取り柄がない。成績、容姿も平凡でかつ何一つ実績もない。

王家に婚約破棄の打診をされた時に、おまえを押す材料が一つもなかった私の立場をどう思う?

己の無能さを反省せよ。」

父上に厳しく叱責され、どれも真実でぐうの音もでない。

そんな…アリスと競わされていたなんて…知らなかったですわ…。

そんな…ひどい。

こんな現実は嫌ですわ。

嫌だーーーーーーーーー!!!

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