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八十九話「死の魔眼」


――――。



 ■:中央都市アリシア・中央エリア『アリシア像』


 アルセーヌ視点。




「やあアルセーヌ。君と出会えてよかったよ」

「……誰だ」


 俺は目隠しをされていた。

 そして縛られて動けないのも理解した。

 一体、誰が喋っているのか分からなかった。

 ……ここはどこだ?

 確か俺は不気味な男と戦闘をして……。


「……負けた」


 俺は、負けた。

 あの路地裏であの男に負かされたのか……?

 あの男、一体何者だ。

 俺の魔眼にもあれは、気持ち悪く見えた。

 何か色々混ざったような男だった。

 魔力は流れていたが、その魔力も黒く濁っていたような……?


「アルセーヌ。君は路地裏で、死堂しどうに負けたんだよ」

「……お前の声、どっかで聞いた事あるな」

「……だろうね」

「……おぉーいおい。目隠しの意味、ねぇじゃねぇかよ。ドミニク」


 俺の目の前に立っている人物。それはドミニク・プレデターだ。

 声で分かる。あのアナウンスの声と同じだ。

 ……最悪だな。これが最初から目的か。


「………何年ぶりかな?」


 とは、ドミニクの言だ。


「さあな。……お前が家から出て、もう7年だよ」

「俺、成長したよね? どう? でかくなった?」

「目隠しで何も見えねーよ」

「あ、そうだったね」


 すると、俺の頭に巻かれていた布は取られ、やっとその場を理解することが出来た。

 ――ここは中央エリア『アリシア像』だ。


「――――」


 見回すと、そこには知っている像があり。

 像の横には――4メートル程ある。虹色に輝く魔石が置かれていた。

 あれが純魔石か。だが確か純魔石は不確定要素が多く、制御が難しい筈だが。


「魔石に誰を入れた」

「お? そこまで予測できるの?」

「当たり前だ。俺とお前の、仲だぞ」


 そう。俺とドミニクの仲。

 俺はこいつの考えてる事とか、そうゆうのがとても理解できてしまう。

 嫌と言う程、俺はこいつを知っている。

 なんせ。


「そうだね。“兄ちゃん”」


 声の方へ視線を向けると、懐かしい顔があった。

 やはり、ドミニクは少し歳を取っていた。

 でも、やっぱり変わらない瞳をしていた。

 俺と同じ、最悪の魔眼を持つ“弟”。


 俺の名前は、アルセーヌ・プレデターだ。


「でかくなったなぁ、だが、性格は変わってないようで」

「お褒めの言葉、感謝するよ」

「褒めたつもりはねぇんだが、ここまで腐っちまうと目も当てられないな」

「どうせその目で人を見れなくせに、良く言えるね」


 ふっ、確かにな。

 俺の目では人を見る事が出来ない。

 でもな。


「――同じ目を持つ同士なら、いくらでも睨めっこできんだ。7年ぶりの睨めっこでもするか?」

「――うわぁ、こわあい」


 死をもたらす魔眼。

 正式名所は無いが、そう呼ばれている魔眼がこの世には存在する。

 睨むだけで、人を内側から破壊することが可能な魔眼。


 元来魔眼とは種類がある。

 一番多い魔眼は『魔力眼』だ。

 相手の魔力総量を見ることが可能な魔眼で、意外と魔族なら生まれつきで発現する。


 他にも色んな魔眼があるが――俺ら兄弟の魔眼は稀すぎて認知されていないレベルの物。

 死をもたらす魔眼。

 そう呼ばれる俺らの目は、簡単に言ってしまえば人を殺せる魔眼だ。


 睨むだけで心臓を潰し、■■を暴走させ、相手に大きな不幸を齎す目。

 俺は前髪で隠しているから大丈夫だが、ドミニクはずっとその目を開眼している。

 いや、もしかしたらこいつは魔眼の制御方法を理解したのかもしれない。

 俺は知らないが、■■眼や他の魔眼も制御が可能。

 もしかしたらこの魔眼も、制御することが出来るのかもしれない。


「何が目的だドミニク」

「いやね。人魔騎士団が邪魔だなって思ってさ」


 確かに、魔解放軍からしたら人魔騎士団は邪魔な存在だが。

 今まで無干渉だったくせに、どうして今になって動き出した?

 そしてなにより。


「だからってここまで大がかりな大虐殺はしなくていいんじゃないか?」

「それはまあそうだね。ただ、言ってしまえばもう一つ目的がある」

「……それは、なんだ」

「簡単さ、魔解放軍をこの世界に知らしめることだ」


 魔解放軍を知らしめる。

 確かに始まりのアナウンスで似たような事を言っていたな。

 魔解放軍は今まで都市伝説程度の存在だった。

 それを今更広めようとするなんて、どんな目的があるのだろうか。


 ……つうか、俺の弟の事だ。

 俺の予想からするに、こいつが欲しいのは。


「お前、功績が欲しいだけだろ」

「………」

「魔解放軍の目的である。魔王グルドラベルの復活なんて。本当は興味がないんじゃないか?」

「流石お兄ちゃんだね。確かにそうさ。俺は魔解放軍を踏み台としか考えていない」


 その言葉に、周囲で警備をしていた魔族らしき男達がざわざわとし始める。

 だが、それに異論を唱えたりすることは無かった。

 多分だが。弟の事だ。

 ――どうせ魔眼で脅してるんだろ。

 この場所に、少しだけ魔力の残穢がある。

 多分だがついさっき。見せしめに誰かこの場で殺したな?

 それも魔眼を使って。


 魔解放軍の他のメンバーはきっと、

 魔王復活を考えていないドミニクについていくのに少しばかり思う所もあるのだろう。

 だがそれを言えない理由、責められない理由がある。

 単純な話、“口答えしたら殺す”と言う空気を作ってしまえばいいのだ。


 死を齎す魔眼は、言ってしまえば最悪な兵器なのだ。


「またお前は、悪人になりたいだけなのか?」

「それがそんなに悪い事なのかい? 僕には夢があるのさ」

「……夢を追う事は良い事だが、目指すものが悪いんじゃねぇのか?」

「兄ちゃんにつべこべ言われたくないなぁ?」


 ……ま、確かに俺がつべこべ言うのは間違えているかもしれないな。

 だが。兄として弟の間違いを正したい。

 ………いいや、正すんじゃない。止めたいが正解だ。


「俺を捕まえてどうする気だ」

「まず兄ちゃんに提案がある」

「……聞くだけ聞いてやる」

「ふっ、相変わらず正直じゃないねぇ兄ちゃんは」


 まぁそうだな。

 俺も存外捻くれてると思うぜ。

 こうなる事も、何となく分かっていたからな。

 俺は知っていた。

 ま、とにかくドミニクの提案を聞くか。


「――魔解放軍に来ない? 二人なら、世界を壊せる」


 ――それは、弟らしくない考えだった。


「……なぜ俺を誘う?」

「特に。居た方が僕の今後に利益だと思うだけだよ」

「………そうか」

「……どう?」


 弟らしくないと言えばらしくない。

 だが、考えてみれば利点があるのかもしれないな。

 同じ魔眼が二人。それも十分脅威だ。

 それだけで戦力になるのかもしれない。

 だが。


「当たり前だが断る。俺は人魔騎士団の居心地が好きなんだ」


 あいつらに出会ってから、実際の所まだ2年しか経ってないけど。

 その前の放浪している人生よりは、よっぽどましだった。

 もしナターシャが俺を誘ってくれなきゃ。

 きっと俺は、どこぞで野垂れ死んでいたからな。


「……そっか。じゃあ、残念だけどこのゲームは続けさせてもらう」

「おう。上等だ」

「随分と、自分の仲間に自信があるんだね。そんなに優秀な人達なのかな?」

「当たり前だ。それに、俺は俺のすることを既に終えている」

「……どうゆう事?」

「お前なら分かってくれるだろ? 俺がお前に出来る。最大限の嫌がらせを」


 その瞬間、ドミニクの表情は曇った。

 怒り、とも取れる表情をし唇を噛んだ。


「……流石だよ。ほんとに、兄ちゃんは最高だ。俺の事を一番、理解している」

「それは俺もだよ。兄弟らしく。嫌がらせしあおうぜ」


 俺が出来る最大限の嫌がらせ。

 それはあの夜、酒の席で酔ったケニーにだけ教えた事だ。

 それさえあれば。ドミニクの魔眼を無効化できる最高の武器になる。

 教えたのは、情報、弱点。


「あまり、舐めない方がいいぞ。俺らの力は無限大だ」

「小癪な。こちらも舐めないでほしいね」


 ドミニクは自分の黒い服を揺らしながら、俺が縛られている椅子から離れた。

 そしてドミニクは微笑みながら。両手を上げ。


「機械士アボット」

「はぁい。ここに」


 白衣を着た細身の男だった。ひょろひょろした体はやせ細っており。

 半笑いが張り付いた顔をした不気味な男が、その場に現れた。


死堂しどう。命令だ」

「アー………」


 巨大で禍々しい男がその場に現れた。

 前かがみになりながら、男はユラユラと左右に揺れており。

 ぶらぁっと垂れている右腕には黒い棍棒が握られていた。


「ティクター」

「お呼びでしょうか?」


 スーツを着た男だった。

 顔は、なぜか黒い影で見えなくなっており。

 だが物腰は柔らかそうで、礼儀正しそうな態度でその場に跪いた。


「三人とも、人魔騎士団の元へ迎え」

「えぇ。それってぇ、僕の仕事ですかね?」


 機械士アボットと呼ばれていた男がそう言う。

 するとドミニクは。


「幹部で信用できるのはお前くらいだ。任せるぞ」

「……はぁい」


 そんな言葉に、アボットはめんどくさそうな顔をしながら折れた。

 信用しているのはアボットくらい。か。

 つまり、あいつが一番の脅威か?

 それとも。俺が考えるに。


「……死堂か」


 あの人間……なのか?

 俺の髪の毛越しの魔眼は『魔力眼』と同じような使い方が出来る。

 それで見たとき感じる。

 なんだ。あの魔力の周り方。人間じゃない。動物でもない。

 とにかく、ぐちゃぐちゃに魔力が回っている。

 ぐちゃぐちゃで。それに魔力が黒い。

 普通魔力は人間によって色が違う。それはその人間が使う属性に偏ったりするものだが。

 何をしたらそこまで濁る?


 ……あの濁り方。

 もしかしたら俺の魔眼が効かないかもしれないな。


 俺の魔眼。死を齎す魔眼は相手の■■を暴走させる。

 ■■が循環するのは心臓に近い部分だ。

 暴走すればそこが膨張し、心臓が破裂すると言う仕組みだ。

 だが、あそこまで■■の周りが複雑だと……。

 死堂……厄介な敵だ。


「命令だ死堂。双子のガキを殺してこい」

「アー………」


 ……死堂はソーニャ達の方か。

 大丈夫だろうか。心配だ。

 つうか、手を縛られてるから髪の毛をどかせない。

 どうせならこの魔眼を使ってあいつらを………。


「………」


 いいや。駄目だ。

 魔眼でもう人を殺さないと決めたんだ。


 きっとソーニャ達なら大丈夫だろう。

 あの双子……下手したら俺より強い。

 というか、まさか人魔騎士団メンバーは今分散しているのか?

 ドミニクなら誘導させて分散させそうだが。

 ソーニャ達とアーロンが配置から居なくなっていたのはそうゆう事か?


「……とにかく、誰か来るのを待つしかないか」


 頼んだぞみんな。

 俺はここで待っている。

 待つしか出来ないけど、ここまで来てくれれば――。

 俺は本気を出せるんだ。


 ――勝ってくれ、人魔騎士団。






 余命まで【残り●▲■日】




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