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疑問1 私は死んだのかしら?

「わたくしは生まれるべきではなかったのです。お母様のところへ……行きたい……」


〰️ 


「ぶっはぁ!!」


 私は必死で泳いでなんとか頭を水面に出した。そして岸の方向を確認して泳ぎ始める。ドレスが重くて泳ぎにくい。それでも数メートル泳げばなんとか足が着くようになった。

 足は着くがドレスを持ち上げないと歩けない。


「もう! なんでファスナーじゃないのよっ!」


 背中を触って何度も確認するが編み紐になっている。ドレスは濡れているので紐は取れそうもない。水中では力も入らずスカートを破くこともできない。なんとかパニエだけは脱いで少しだけ軽くなった。パニエの分のスカートが長くなってしまったのは計算外だ。


 ゼイゼイと肩で息をしながらなんとか岸まで歩いた。『ドカッ』と腰を下ろす。そしてそのまま仰向けに倒れた。


 雲一つない澄み渡った青空が広がっている。


「で? ここどこよ?」



〰️ 〰️ 〰️


 私―坂木静流―は長湯派だ。お風呂にケータイを持っていき小説投稿サイトを楽しむことが日課である。

 

「うーん。これじゃあ主人公が可哀想じゃん。私ならもっと結末変えるなぁ」


 自分では何も投稿していない。だからただの空想なのだ。

 その日も一つの投稿小説を読んで、自分なりのアレンジやその小説の矛盾? のようなものを自分の中で新たな物語として消化していた……と思う。


〰️ 



 息が整った私は上半身を起こす。


 水中では、ドレスや体型や髪色に違和感を感じていたがとにかく岸まで来ることだけしか考える余裕はなかった。


 起きて改めて確認すれば、これはどう見ても、私―坂木静流―ではない。


「嘘でしょう? 転生? 何? 何? 私って死んだの?」


 思わず声に出して頭を抱えて首を左右に振った。


 私は中世ヨーロッパ風の話を好んで読んでいた。婚約破棄もの。妹我儘もの。姉傲慢もの。クズ婚約もの。クズ家族もの。魔法世界もの。なんでもござれで片っ端から読む。


 今私が着ているドレスは、びしょ濡れではあるが小説を読みながら想像していたようなものだ。さらにサイドにあるこれまたびしょ濡れの髪は濃い緑色でどう見ても私の知る現実世界ではありえない。


「そんなことより! こうしちゃいらんないわっ!」


 私は急いで立ち上がる。目の前にはさっきまで私が足掻いていた水面がキラキラと輝いている。波の立ち方を見ると湖だろう。背中側には森が広がる。


 湖畔を見渡すと遠くに大きなお屋敷が見えた。


「これはどう見てもお貴族様よね。あの屋敷なら私の外見を知っている人がいるかもしれないわね」


 私はスカートをつまみ上げもう一度自分の姿を確認する。


 交通手段が徒歩しかなく、現状把握が何もできない私はのんびりなどしていられない。ここが地球の北半球と同じような太陽の動きならまだ午前中だと思う。


「ああ……。こういう世界って、足を晒してはいけないんだっけ?」


 歩きやすくなるようにスカートを破りたかったが、水を絞るだけにしておく。

 パンプスは岸辺にキレイに並べてあった。私はパンプスを握ると固そうな岩まで持っていきヒールの部分を思いっきり叩きつけた。存外簡単に取れた。

 ペタンコ靴になったものを履く。


「さて、行きますかぁ!」


 気合を入れ遠くに見える大きな屋敷までの道のりを歩き始めた。


〰️ 〰️ 


 時計もないのでどれくらい歩いたかはわからない。だが、まだ陽は高い。


 時々森からガサゴソとか鳥の鳴き声とかが聞こえたが、それ以外は湖畔には特に何もなく無事に私が目的地と決めたお屋敷の外塀まで来ることができた。

 外塀に沿って歩くと門があった。中にいた門兵が私に気がついて急いで門を開け飛び出してきた。


「オリビアお嬢様? ですよね? お若い頃のエリオナ様に大変似ていらっしゃいます。

しかし、そのご様子はいかがなされたのですかっ?!」


 門兵はオロオロとして私の様子を観察する。


『オリビア? それがこの外見の人かな? ああ、男は簡単に貴族の女には触れないのねぇ。ホントは肩を借りたいのになぁ』


 門兵は私を誘導しながら門の中に入れ、再び門を閉めた。そして玄関と思われるところへと誘導をしてくれる。


 その玄関と思われるドアが勢いよく開いた。誘導してくれた門兵と同じ鎧を着た人が現れ、後ろにいる人を促す。後ろから現れたのはきらびやかな老婦人だった。


「ビアちゃん!」


 その老婦人は私を見ると大きな声で恐らく私のものらしい名前を呼んだ。老婦人の傍らには五十代に見える執事服を着た人もいる。

 どうやら門兵は二人いて、一人は屋敷の中から人を呼んできてくれたようだ。


「いい人そうでよかった……」


 私は老婦人が駆け寄ってくる様子を見ながら意識を手放した。

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