冒険者。
「行ってきまーっす!」
元気よくスキップ踏んで今にも一人で飛び出して行ってしまいそうになるカリナと手を繋いで。わたしは森へ行く道を急いだ。
アストリンジェンはわりとお洒落な街だ。王都だと白い建物が多くシックな街並みって気がするけど、この街は昔からの風習なのか赤や黄色に色が塗ってある建物も多い。
若者の街。そういうキャッチフレーズがあるくらい、若者が集まってくる街として知られている。
王都にしても他の街にしても基本、白いレンガが敷き詰められた路地に白いレンガで建てられた建物が並ぶ白い街並みだ。
それがこの街だけは違う。そこらじゅうが色とりどりのペンキで塗られ鮮やかな色彩の街となっている。
芸術的なのかどうかはよくわからないけれど、壮大な滝が描かれた建物や火山や森が描かれた建物、そして大きなドラゴンが羽ばたいている絵の描かれた旅館。そんな街並みが続いている。
まあ、修道院のある場所はそんな街並みからは外れたかなり端っこなので、周囲はけっこう燻んだ感じの建物もおおいのだけどね。
子供の頃何度かこの街の中央省庁の中にある国立図書館に連れてきてもらったことがある。
わたしの事をお嬢様って呼んでくれる可愛い猫の司書型魔ギア。フロスティとタビィに会うのが楽しみだった。
今にして思えば普通の勉強ならお屋敷でも出来たけど、図書館にあった、イメージがそのまま映像となって頭の中で再生されるそんな魔法の本。それを体験させてくれようとしたのかな? 両親は。
ああ。心配してるかな。
わたしのことはもう死んだものと諦めてるかな……。
一言、生きているって伝えてあげたほうが良いのかな……。
どうしよう。
カリナと手を繋いで街を出た所で何組かの冒険者の人達とすれ違った。
右手をあげ、よう! と気軽に挨拶をしてくれる人もいれば、始終むすっとした感じで通り過ぎる人達もいる。
冒険者、って一括りにしているけど、内実はかなり幅が広い。
そもそも冒険者なんて市民権も持たない食い詰め者が渋々する仕事、わたしはそう聞かされていた。
でも。
なんていうんだろう。
この町ですれ違う冒険者の人はなんだかそんな貴賎に囚われていないような。そんな気もするんだよね。
近づくとわかる。肌で感じる能力の高さ?
そういうとても才能がありそうな騎士団の人にもひけをとらなさそうなそんな人が混じってる。
ほんとね。びっくりなんだけど。冒険者っていっても馬鹿にできない人たちがいるって事がわかったの。
それに。
実はとても人間には思えない、そんな魔力を発してる人もいる。
なんていうかな、魔力の質が違うって言ったらいいのかな?
そんな不思議。
なんだかね、貴族の令嬢やってるだけじゃとても気がつかなかった、そんな世界が垣間見えた気がして、すっごく興味深いんだ。