マリアクエスト。
マリアクエスト。
主人公は聖女になって、騎士様に協力して魔物を浄化したりしながらいろんなクエストをこなしていくRPGの要素も入った乙女ゲーム。乙女RPGだ。
攻略対象はもっぱら騎士様なんだけど、中にはお貴族様も居たりして。
そんな中でも王宮編、魔道士の塔での研鑽中に出会う王子様編、マクシミリアンルート。
かなりこのゲームをやり込まなきゃ出てこないそんな攻略キャラがマクシミリアンっていう王子様だった。
わたしのいちばんの推しキャラだったんだけど、な。
もともとお気に入りの騎士様とかの攻略対象との好感度を上げていくと聖女の力も強くなったりして、最終的に聖女マリアの称号を勝ち取ったらエンディング。
その前にボスキャラの七色の魔竜との戦いもあるからその辺はRPG要素かな?
特にカッコ良かったドラゴンが紅竜レッドクリムゾン。倒すと味方になってくれるイベントもあったっけ。そうするとその先のドラゴン戦が楽になるしね。
主人公は平民の少女なんだけど、7歳の洗礼式で聖女としての素質を認められ初等教育が終わり次第魔道士の塔に入り聖女修行がスタートするの。
おはなしはそこからスタート。
主人公の名前は自由につけることができたんだけど、わたしは本名の貴子の音をもじって、トールって名前にしてた。え? それじゃ高子だよねっとか男の子みたいとかよく友達からツッコミが入ったけど子供の頃からRPGの主人公はそれでいってたんだから今更変えるのもね?
男の人の声で「トール、君が好きだ」とか言われちゃうともういろんな意味で悶絶しちゃう。
まあ聖女って名前じゃないよねーとは思ったけどね?
まあほんと、何度も言うけどまさかそんなマリアクエストの世界に自分が転生しちゃうとは思っても居なかった。
聖女でもない今のわたしにはそんなメインストーリーとは関わりがないだろうとも思うけどね。
でもこの子たちは……。
もうじき七歳。洗礼式の時期。
孤児の子の中でも最年長のカリナ。この子はなんだか素質がありそうな、そんな気もするんだ。
わたしにもわかる。身体から溢れるマナ。
この年齢でこれならきっと……。
「ねえマリア。薬草の取れる森に一緒に行って欲しいの」
お庭のお花を眺めてたわたしにそう声をかけてくれたカリナ。まだ幼いっていうのにわたしよりもしっかりしてるっていうか、ほんとおませさんな子だ。
「え? だっていつもはマリーベルさんと行くよね?」
流石に子供だけで森に行かせるわけにもいかない。街のすぐ裏の森だとはいえ、どんな危険があるかわからない。
魔物が出るのは奥の方で、入り口付近にはほぼ出ないと聞いてるけどそれでもね?
「マリーベルねえさまは今日は忙しいらしいの。でもあたしもうじき洗礼式だし、少しでも薬草加工とか勉強しておきたいんだ。だめかなぁ?」
ああ、健気。そう思ってしまったわたし。
「そっか。じゃぁわたし一緒に行ってあげるね。これでもスライムくらいならたぶん追い払ってあげれると思うし」
うん。たぶん。わたしの魔力ならきっとそれくらいできそうだしね。
「ありがとうマリア! じゃぁついでに一緒に森で魔法の練習もしよ? あたしが教えてあげる」
「あは。ありがとねカリナ先生。楽しみにしてるね」