1.
昔、知り合いの転生者とかいう男が言っていた事を思い出した。
俺達は多少は誤差が生じる事もあるが前提として、死んだ後に神様だとか精霊だったり国王に呼ばれて、こっちの世界に来たと。
世界があっちこっちにあるのかどうかは僕にはわからない。
でも確かに僕も似たような事をしたし、今がどんな状況だとかはわからなくても目の前にいる彼らはそれが出来る、きっとそういう存在なのだろう。
「のう、君は我等を恨んでおるか?」
その力を授けた我等を、と目の前にいる老公達は言った。
──曲がりなりにも神様なのだろうからきっと僕が何を思っているかなどわかっているのだろう。
だからか、彼らは目を見開いた。
僕が今までの事ごとを全部ひっくるめて一切の恨みを持ってない、それに驚いたのかもしれない。
だが、これは皮肉でもないし僕自身が思っている気持ちそのものだ。
「──」
それにあなた達が言ったんじゃないですか。
そして、僕もあの人が言ったことは事実だって今確信しました。
『あなたはね、空の上の偉い人達にいーっぱい褒めてもらったのよ──綺麗だって』
「だから僕は、今までの全てに後悔がないと言えばそれこそ大嘘ですが、あなた達には感謝こそすれ一切の恨みはありません。大嘘つきな僕ですがこれは数少ない僕の本音です」
暫し時が止まったように感じた。
もしかしたら実際に止まってるのかもしれない。
長い沈黙が続いた。
ふと、目の前にいた老公は口を開ける。
「君は、本当に変わらないな」
そして、動き出した。
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昔、誰かが言ったらしい。
亜人は家畜どころか汚点しか見つからない埃だ、と。
そも亜人なんて言葉が出来たのも歴史としては新しいらしい。
人は常識として教えを身につければ、それが偏見や事実無根の事だったとしても中々取り消せない。
じゃあ、現在騎士や貴族の中にすら一定数亜人がいるのは何故か。
至極単純なのに到底あり得ない話が事実として残っているからだそう。
狂人、ラドルーチェ・ハントパイム。
他国それぞれと友好関係にある石の城壁に囲まれたヒューマンの国、メルリア教国。
東にあるどこまでも高い塔城の下に出来た魔族の国、バベル帝国。
グラフォス大森林の最奥にあると言われる最も 他国との交友が少ないエルフ達の国、神樹共和国。
黒霧の山脈内にある鉄煙が常に舞っており機械と呼ばれる兵器を所持するドワーフと鉄鋼師という者達が集う国、機工都市国家ギアガルム。
それら全て作り直されたモノだ。
これら全部たった1人の道化を名乗る少年とも言えるような男に壊された。
亜人と呼ばれる名が何故付いたか。
国が何故手を出せないか。
至極単純なのだが、その時代を生きてない者からはまるで理解できない要素がある。
恐怖だ。
彼が残した影響はあまりにも大きかった。
だが、故人であるからして彼自身を恐れる者達は少ないかもしれない。
彼の友でもあり、教え子でもあった亜人の王さえいなければ。
他の四大国が手を出せない。
そんな亜人の国が出来たところで大したことない、そうなればどれだけ良かったか。
その王国を討滅しに行った四大国の英雄ともされる者達全てが帰還せずに、彼らが使っていた装備だけが送り返されたりしなければ。
それどころか、その国は世界で初めての学園と呼ばれる寮生の学校を建築した後に和解を申し出た。
四大国に囲まれた場所にできたその国と学園は誰に対してもその門を開くと述べ、数十年と時が経つに連れて、数多の生徒と講師を国々関係なく受け入れた。
そんな世界が大きく変わったここ百数年。
150年の記念すべき日を迎える今日。これから、人々は────
破く。
まるでそれに書かれた出来事を否定するように。
または嫉妬するように。
「…上手く進まない人もいる。頭ではわかっているけど僕は納得できないよ」
その少年は新聞を破り捨てたまま、自らの孤児院に帰るのだった。