96話 栄華の終わり
その日、マラカスは主だった騎士団員を集めて宴会を開いていた。ここで言う主だった、というのはマラカスにとって、その団員の実家が騎士団という箔を子供につけるために、寄付という名目で金銭を渡して入隊の便宜をマラカスに頼んできた、要は賄賂を送ってきた家の者達のこと。
そうしてまで騎士団に入隊するのは本人にも、そして賄賂を送る家にも利があるからだ。本人にとっては将来騎士団にいたという箔が付くし、騎士団でいるうちも余程の事をやらかさないかぎり、騎士団長たるマラカスが揉み消してくれる。真面目に訓練なんてやる必要も無いし、街で多少横暴に振る舞おうともマラカスの権力でどうとでもなるから、まさしくやりたい放題の楽しい職場なのだ。そして、家にとっても金銭こそ飛んでいくが、ここグレンダンでは少々アコギな商売をしようとも、マラカスに媚びておけば大抵のことは見逃してもらえる。
そのどちらもマラカスにとっては都合の良い話なのだ。団員が問題を起こせば、それを揉み消すことでその謝礼として、また金銭を要求出来る。多少悪辣な商売を見逃してやるのも、通常の商売ではありえない高い利益の中から自分の取り分という見返りがあるから。
それほどグレンダンにおいて騎士団の影響は大きい。元々地方の都市であるが故に王家の力が届きにくい環境が、騎士団ひいてはマラカスの権威を高める要因だった。
…だが、それも終わりを告げる時がきたのだ―――。
「準備はよろしいですかシュナイゼル君?ここからが貴方の本当の戦いの始まりです」
兵士団がグレンダンに到着して数日。マラカスと処罰するべき騎士団員が集結している絶好の機会。シュナイゼルの尽力もあり、マラカス、騎士団員、そして賄賂を送った家も全て把握出来た。あとは乗り込むだけ……―――
「はい。ここからグレンダンと騎士団は生まれ変わるのです。セシリア様…行きましょう!」
「ええ。それでは皆、所定の位置に待機している部隊を動かしなさい!誰一人として逃してはなりません。全軍、出撃!」
俺の号令とともに兵士達が散開する。今、マラカスの宴会が開かれているこの場に多くの粛清対象が集まっているが、ここに抑えた情報が漏れて賄賂を送った者達が逃げないように、全てを一気に制圧する。
(本来の兵士団の人数ではここまで部隊を展開出来ない可能性もあったが…マラカスが一箇所に集めてくれたことが幸いした。展開する場所が減った上に、こちらに引き込める騎士団員の説得にも、マラカスの目が無いおかげで容易に行えた)
―――そして、一斉に宴会の会場に流れ込んだ兵士団。虚をつかれた騎士団はなす術もなく、捕縛されていった。
(まあ仮に抵抗したところで、お前らのような真面目に訓練もしていない連中に、俺の兵士団が負けることなどありえないけどな)
捕縛した騎士団員達はそのまま宴会場の隅に並べ、憤怒に染まった赤い顔のマラカスだけが残った。それから暫くそのままの状態で待機し、伝令から全ての家も抑えたと報告を受け取ってから、最後の仕上げに取り掛かる。
俺とシュナイゼルが膝をついたマラカスの前に立つ。
さあ、これでお前の断罪を終わらせてやろう―――
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