89話 最前線の役割と大切さ
少しは馴染んできた寝具で日の光と小鳥の囀る音に目が覚め、体を起こして上体を逸らしながらゆっくりと固まった筋肉をほぐす。
グレンダンに来て10日、訓練とディナーと見回りの繰り返しの日々を送り、軍務で魔物と命をやり取りをしてきた俺にとっては感覚が狂っていると思うが、このありふれた日常に退屈を感じてきてしまっている。
(せめて見回りが街の外にまで行けたら少しは違うんだろうけど…。魔物がこの城塞都市の城壁を超えるなら、空を飛んでくるぐらいしかないもんな〜…)
その空を飛んでくるという手段さえ限られた魔物にしか出来ないし、更には飛んできたとしても街に入るには、城壁にいる騎士団の目を躱すか、見つかったとしたら備え付けられているバリスタの防衛線を越えなければ辿り着けない。実質、騎士団の見回りというのは外側の魔物への対策ではなく、内側にいる人への警戒に他ならないのだ。
(グレンダンは一応は帝国に対する王国の最前線の防衛ラインだ。今はまだ戦時中ではないが、それでもそうなる事を想定して兵の不満解消に歓楽街なども数多く存在する)
つまるところ治安がそこまで良くはないのだ。騎士団のそういった対策も兼ねて見回りを行なっている。
(まあ今の騎士団にそんな抑止力があるかと問われれば微妙なんだが…)
抑止力になり民を守る立場の騎士団が揉め事を起こすことも多いらしいしな…。この辺りも騎士団を再編成出来たら考えないといけないことだろうけど……
(どうせグレンダンを離れるのが分かっている俺がアレコレ考えるより適任がいる)
シュナイゼルが正にそうだ。だが、まだあの子は幼い。歳に見合わぬ実力と思考をしてはいるが、実行に移す時となるとやはり補佐出来る人間が必要になってくるだろう。
(カイルの助言通りに俺が後見人になるとしたら、その補佐を任せられる信頼出来る者を考えるのが俺の役目かな?)
いずれは王国での最前線となるここグレンダン。その為にも騎士団と街の治安改善は急務と言っていい。守る騎士団が街の人に信頼される軍で無ければ篭城戦などになったときに不利になる。
篭城戦はつまるところ耐え忍ぶものだ。いつか来るはずと援軍を待ちながら戦う兵士の心体は消耗する。そんなとき支えてくれるのは兵士を信じてくれる民の存在だ。だがその民が軍を信頼してなければ内通などにも繋がってしまうから、篭城を想定する拠点は特に民からの信頼に直結する治安を疎かにしてはならない。
(まあ篭城戦を想定したくないのが本音だが、あらゆる可能性は考えておかないとな…)
起きて身嗜みを整えてから部屋でそんなことを考えていたら、いつの間にかシュナイゼルの訓練の時間が迫っていた。腰を上げて…
「さて、今日も訓練を頑張りましょう」
自分を鼓舞する言葉を声に出して、部屋から出る俺の姿を見て微笑むシェリルの姿もあった。
活動報告にまたお知らせを書いています。




