7話 休息
馬車で5日間ってどれくらいの距離?
と思われた方…細かい事は気にしないで欲しいですw
凝り固まった身体をほぐしながら、空を見上げる。
澄み渡る空、吹き抜ける風、川のせせらぎ、兵士達の水浴びで上がるテンションの高い笑い声、ほとりにある花を眺めてキャッキャッしてるメイド…
(ふぅ…心が安らぐなぁ〜)
振り返ってみれば、他国に移動中とはいえ、こんなにゆったりして王都から出るのは初めてかもしれない。
俺が王都を出るといったら魔物討伐が主で、大森林の方角に行く事が多い。王都から北にあたるこの辺はほぼ見渡す限りの平原で、綺麗な川もあるから動物には適していて、ここに来るまでにも様々な動物の姿が見受けられた。
だが、魔物は種族にもよるが基本的に日中は身を隠して、夜になってからエサになる動物などを探しに活発に活動する、いわば夜行性の生物だ。
どんな魔物であれ討伐に赴く以上は命の危険もあるし、夜に動く魔物を捕捉しながら、奇襲されないよう周りを警戒して行軍する部隊には景色を楽しむ余裕なんてない。
そういった生活を送ってきた俺としては、日中で魔物が少なく、夜ほど警戒して動く事もないし、連れてきたメイド達や兵士達も普段から共にいる事も多い気心の知れた奴達ばかり。まるで旅行にでもきたかのような居心地の良さで、本当に心安らぎ楽しい!
(あぁ〜…魔物討伐に行くときのような服じゃなくて、こんなに遠出するのは初めてだから、変に身体がこわってるな…)
兵士達は俺からそこそこ離れたところで水浴びしながら水泳勝負してるようでこちらを見てないし、メイド達は花を愛でるのをやめて馬車に戻り持ってきた物資の確認をしてる。
…今なら誰も見てないみたいだし、この白いドレスではちょっと動きにくいが、俺も川に足をつけるぐらいしてもいいかな?
そう思い立ったらやりたくなってきた。縛って痕がつくと困るし、スカート部分をたくし上げて足だけでも川に入ってみよっと。
石から腰を上げ、川の浅瀬っぽい所を見つけてスカートをたくし上げる。ゆっくり足をつけながら入ろうと思った瞬間……!
(おっ、おぉっ!思ったより深い!?川の水に太陽が反射して深さを見間違えたか。)
ちょっと焦ったが、ふくらはぎの中ほどまで浸ける予定だったのが、膝上までになった程度だ。その分スカートを持ち上げればドレスは濡れないし問題無い。
暫くそのまま水の冷たさと太陽の暖かさに身を委ねるように空を見上げ目を閉じる。
(かなり気持ちいいな…水や太陽もそうだが、ドレスで隠れていて、ちょっと暑くて蒸れそうだった下半身がスッとしていく…)
どれくらいそうしていただろうか。気持ちが晴れやかになり、結構休憩時間経ったかな?と思って目を開けた。
そして目線を穏やかな流れの水面に向けると、光が反射してちょっと見にくいが水中に何か動く物が俺の正面まできた。
魚にしては大きくないか?と首を傾げていると…
「ぶはっ!…ちょっと潜水し過ぎた…結構いけたんじゃないかこれ?」
そう言って水面から顔を出したのは1人の兵士。
ほほ〜、兵士達が水浴びしていた所からはそこそこ離れているここまで潜水してきたのか。なかなかの腕前だな!と感心してしまい、自分がどういう態勢で川にいたのかまで気が回ってなかった…
水面から顔が出る程度で息を整えていた兵士が正面にいる俺に気がつく。
「わわっ!?申し訳ありません姫様!こんな所まで来ていたと思わず…す…すぐに戻ります!誠に申し訳ありません!」
「い…いえ、よいのですよ。よくここまで潜水してきたものだと感心しました。そろそろ出発するので皆にも伝えてきて下さい。」
「はっ…はいっ!お褒め頂き、感謝いたします!」
そう言って顔を赤くしながら凄い速さで川を泳いで兵士達の方へ戻っていった。
(ああっなんという失態を!姫様の前に泳いでいくだけでなく、足がつく深さではないといえ、水面から顔だけ出した状況で話しかけるなんて…姫様が度量の広い方でなければ不敬罪で死刑ものだった…それに、あまりに不敬だがあの光景が目に焼きついて離れぬ!)
「素晴らしい眺めだった…太陽の光が後光のように降り注ぎ、濡れないようにだろうがあそこまでスカートを自らたくし上げられ…」
「その奥に見えてしまったこの綺麗な川のような透き通る青い下着……ゆっくり戻っているうちに鎮まってくれよ我が息子!」
微妙にゆっくり泳いでいる気がするが、あれだけの距離を潜水してきたのだから疲れたのだろうと的外れな事を考えて川から上がった俺。
そして気付く…
(あれ?膝上まできてた水を避けるのにかなりスカートをたくし上げてたし、兵士は足がつかない深さだったせいか、頭がかなり俺から見て低い位置にあった。ということは……もしかして見えてた?)
ちょっとした衝撃の事実に気付いてしまったが、まぁわざとじゃないだろうし仕方ないか。と気にしない事にした俺だった…
潜水してた兵士「これ、戻るまでには鎮まらねぇな絶対…」




