75話 基礎の大切さ
グレンダン初日の夜をシェリルとメリルと共に過ごした。気心の知れた2人と同じ部屋で寝泊まりするのは実に楽しかった。2人は俺が泥棒の件で不安になっていないか心配してくれていたようだが、俺はそんな事気にしていないし、逆に2人と一晩楽しく過ごせた事に感謝したいぐらい。
(はっ!?心配事といったらシュナイゼルの訓練どうしよう……ヤバい、あまりに楽しかったからそっちを考えるの忘れてた…)
シュナイゼルの実力は既に兵士団と変わらないと言っていい。ならまずは兵士団の訓練の簡易版みたいな感じでいってみるか?何事もまずは基本からだ!
「という事でまずは走り込みましょう。剣だろうと魔力の運用だろうとその根底にあるのは体力です。体力が保たなければいくら実力があろうとそれを継続させる事は出来ません。シュナイゼル君は技量に拘るあまり基礎鍛錬を怠ってはいませんか?12歳としては優れた実力を持っているのに、体力がそれに追いついていません」
訓練場に着いて挨拶を済ませたら早速考えた事を伝える。正直、良い訓練方法を思いつかなかった苦肉の策だけど、言ってる事はそんなに的外れではない。
「………そう、ですね…。技量ばかり追い求めて基礎鍛錬は軽くしかやっていませんでした。流石セシリア様です!」
「…え、ええ。魔物と戦うときも体力が続かなければ格下にもやられる事だってあります。ましてや魔物は基本的に物量で押してくる事がほとんど。継続して足場の悪い事も多い大森林で戦い、生き残るには体力は欠かせません。ですがシュナイゼル君なら分かると思いますが、どんな鍛錬も短期間で成果が出るものではありません。私がどれだけこのグレンダンに滞在するかはまだ決めていませんが、私がいなくなっても基礎鍛錬を怠ってはいけませんよ?」
「はい!では走り込んできます!!」
「はい。終了は私が合図しますので頑張って下さい」
ふぅ…これでまた時間を稼げた…。走り込み中のうちに終わった後の訓練を考えなくては…。
(まあもう既にあれ程の実力だ…。しっかり基礎鍛錬をして身体を作っていけば相当な使い手になるだろう。今まで軽くみていたと本人も言ってたし、基礎鍛錬を中心にメニューを組み立てるのが長い目で見れば1番かもしれないな)
こちら側に引き込む価値はあるとみてもいいだろうけど、まだ父であるマラカスを裏切るかまでは分からない。確実にこちらについてくれると判断出来たら加護の強化もありだろう。幸い、俺で性に目覚めそうな感じもするし……元男としては複雑だけど………)
訓練場の外周を走り続けるシュナイゼルを眺めながら、周りの騎士団の煩わしい視線を無視して、シュナイゼルに対する処置を考える俺がいた。




