70話 改めて向き合う
軍人の道を歩んでから十年近くになる。今までも兵士に訓練を施したり、ときには個人の鍛錬にも付き合ってきた。だが正式に弟子を取ったことはない。俺自身がまだそんな腕前では無いと思ってるし、軍務で王都を離れる期間も多く、あまり面倒を見られない事が要因だった。
そんな中舞い込んだ今回の話。本来の目的はマラカスと騎士団の再編または解体が狙いだし、その過程でしかない師弟の話。でもシュナイゼルが本当に優秀なのならマラカスと共に逝かせるのはもったいない。帝国への備えとして優秀な人材は貴重だ。
俺にとっても良い経験になるかもしれないし、気持ちを引き締めてシュナイゼルが待つ訓練場への道を進んでいくと、いっそ気持ち悪い派手な廊下を抜けて開けた場所に来た。王都の訓練所ほどではないがかなり広い。騎士団の姿もチラホラ見えるし、シュナイゼルはもう一応は正規軍である騎士団に混じって訓練してるのか…。
まあ実力的にはここではおそらくトップクラスだろうしありえなくはないが、いくら将軍の子供といえプライドが高く傲慢な者が多い騎士団の連中が認めるとは思えない。実際、ダラけながら真面目に訓練してない騎士団の連中はシュナイゼルを遠巻きに冷めた表情で見下しているような目をしている。
本人もそんな周りの雰囲気に気付いているのだろう。どこか居心地の悪そうな顔をしている。いい歳した大人が12歳の子供にする対応じゃないな…やはり騎士団は存在する意味が無い。実力もないのに、それを恥じることもせず訓練は真面目にやらない。親の金で得た紛い物の立場のくせに…なんて情けない奴らだ。
「さて、今日から貴方の師を務める事になりましたから、鍛錬を始める前に改めて名乗っておきます。ヴァイオレット王国王女兼西部兵士団将軍セシリア・ヴァイオレットです。私にとって初めての弟子になりますから、勝手が分からず色々と不手際もあるでしょう。ですが師になると決めた以上、真剣に務めます。よろしくお願いしますね。」
相手はマラカスの息子であり、こちらに引き込めるか探る相手でもあり、初めての弟子でもある。色々と複雑な事情も絡んできてるが、やると決めたら真剣に、だ。礼は尽くさなければ。
「えっ、えっと僕は北部騎士団所属のシュナイゼル・クラウディアと申します。この度は師弟のお話を受けて下さりありがとうございます!あとはえっと、あのっ、よ、よろしくお願いします!!」
うん。ガチガチに緊張していて動きや言葉がぎこちないけど、礼を尽くそうとする意思は伝わってくる。
まずは合格だろう。人との繋がりで挨拶をするというのは簡単だが、しっかり礼を尽くして挨拶をしようという姿勢を維持するのは難しいものだ。
これなら期待出来るかもしれない。ならば次はその実力を見るとしよう。




