69話 成金
佇まいを見ただけで分かる。この子はかなりの鍛錬を積んでいる。12歳という年齢でここまで鍛えてる子はそうそういないだろう。俺が12歳の時よりは下だと思うが、それは俺が軍務で実戦経験を積んでいたからだ。実際にやってみないと正確には分からないだろうけど、この子はもうグレンダンにいるボンボンの息子の騎士ごっこでは教えられないレベルに達してそうだ。
「マラカス将軍、この度はお世話になります。人に教えた事などない若輩の身ですが、御子息の師として恥ずかしくないよう努めます。」
「はっはっはっ!どうか息子をよろしくお願いしますぞ!まだ人に教えてもらうほどの力ではないのですが、本人がどうしてもとうるさいので、要望が叶って儂も助かるというものです。」
……息子を過小評価してるのか?確かに線は細くちょっと頼りないように見えるが、少なくても街で見かけた騎士なんかより強いはずなんだがな。
「こちらこそ滞在期間中よろしくお願いします。あなたがシュナイゼル君ですね?私はセシリア・ヴァイオレットといいます。此度は私に師事を受けたいとの申し出光栄です。そんなに長い期間ではありませんが、可能な限りお務めを果たさせていただきます。」
「はっ、はいっ!僕はシュナイゼル・グラウディアと申します。まさか本当にセシリア様にご教授頂けるなんて…!僕の方こそ光栄です!!」
「ふふっ…そんなに緊張なさらず。マラカス殿、早速なのですが荷物を整理したら鍛錬に入りたいと思います。よろしいですか?」
「もちろんです。おい!セシリア様を部屋に案内せよ!」
マラカスの命令で後ろに控えていたメイドが前に出てくる。最後に軽くマラカスに礼をして、メイドの後ろをついていき部屋へ。部屋に行く道を歩きながら周りを観察して、「こちらがお部屋になります。」と案内された部屋に入る。シェリル達はすぐに荷解きを始めて整理にあたる。
(この部屋も廊下も装飾が激し過ぎる。グレンダンの街はやはりマラカスの意向が強く出ているみたいだな。この屋敷のゴテゴテ感が見本かのように街と屋敷の構造が似通ってる)
特に屋敷に入ってすぐのエントランスにあるアレは悪趣味だった。魔物の中で上位に位置する魔狼フェンリルの毛皮を使った絨毯…普通ならフェンリルの毛皮は軽くしなやかでありながらそこそこの強度を持つ防具の素材として重宝される代物だ。
(それを絨毯なんかにするとは…あれを加工して守られる命もあるというのに…)
なかには自分で狩った戦果を知らしめるという役割もあるらしいが、マラカス程度がフェンリルを狩れるとは思えないし買っただけだろう。将軍という地位にいるのに誇示するのは金だけとは…情けない奴。
そんな父親に育てられたシュナイゼルもしっかり見極めないと…マラカスへの偏見や優秀だという評判を鵜呑みにしてはいけない。
自分の目で見て、こちらに引き込めるか探るとしよう。まずは荷物の整理が終わってから訓練場だな…!




