68話 城塞都市グレンダン
俺、最近は全然城にいて軍務をこなしてないよねこれ?将軍として大丈夫だろうか?大事な事をやっているつもりだけど、こうも軍務から離れてばかりだと不安になる…。まだ兵士の加護も全然強化出来てないし……。
これで4度目の王都から出発。カイルが全て手配してくれたおかげでスムーズに城を離れ、再び馬車の中。自分の馬も連れてこれたからてっきり自分で手綱を引けると思ってたのにこれだよ…。馬車よりも手綱握ってるほうが落ち着くというのも王女としてはどうかと自分でも思うけどね!
まあ王女というか軍人やってる期間のほうが長いし、こんな風になるべくしてなってる気がするが…。これ、他所の国から見たらお転婆王女!って感じに見えるんじゃないかな?
(王女としての嗜みで大体丁寧に話す癖ついちゃってたけど、そう見えるならいっそ軍人らしくいってもいいのでは?まあやらないけどね)
今さらだし。軍務の時だけって思ってたほうが、任務中気が引き締まるしな。
馬車が程々に整備された道をゆっくり進んでいく。この道はインフラ整備の一環としてカイルが提案したものだ。まだそこまで綺麗ではないが道があるというのは往来する人達にとっては分かりやすく、変に道を逸れなければ魔物に遭遇する確率も下がる。整備されているという事は視界が開けているということだからだ。
王国では街の規模によって、都市、町、村、と区分されている。その中でまだ都市間しか繋がっていない道は、その都市間ですら改良の余地があるということで完成は程遠い話らしい。先は長いだろうがいずれ王国内だけでも街を全て道で繋げたらその効果は大きいだろう。カイルならきっとやってくれるだろうしな。
前世のように舗装された綺麗な道ではなく、デコボコしてるしお世辞にも快適とは言えないけど、これが親友が築き上げてると思うとこのデコボコも悪くないと思える。ちょっと道を見ながらそんな哀愁?を漂わせているとシェリルが話しかけてきた。
「姫様、もう少しでグレンダンに到着します。」
「ええ。」
もう少しというか既に城塞都市という名に相応しいデカい城壁が見えている。技術力で勝るディスナの城壁程ではないが、王都よりも頑丈そうな壁だ。
(いくら城壁都市だからって王都よりも立派なのはどうなんだろうな?勿論有事の際ならそれは非常に役に立つだろうけど、これってマラカスが寄付させた金で出来てるんだよな〜)
そう思うと成金の張りぼてのようにも見える。近付いて城門付近に来るとその門にはなんか無駄に装飾が施されてるんだけど?守るのに必要ないよねこれ?…ますます成金っぽさが。
城門の審査を通過して街に入る。戦が起こったときの最前線たるグレンダンだが、その街の景観は…トップの意向が反映してるのか?なんか装飾がゴテゴテしてるし、街の人も高価な服を着ている者が多い。所々いる兵士は金ピカのダッサい鎧を着て派手な割に一目見ただけでたいした実力じゃないのが分かるレベルだ。
(これは…酷い。本当に戦が起こってここで防衛戦なんてしても壁や門を破られたら一環の終わりだな。街の中は防衛なんて意識してない作りだし、こんな兵士では籠城戦なんて出来ないだろう)
籠城戦は非常に難しい戦い方だ。難しい要因は色々あるが、とりわけ兵の士気を保つ事だろう。自ら動く事は出来ず、好転する方法は援軍の到着だけ。だがその援軍は本当に来るのか、来るならいつ来るのか、そんな終わりの見えない極限状態で襲ってくる敵を迎撃し続ける。そんな状況において最も重要なのが兵の士気だ。
(だが兵の士気というのは普段の待遇とそこから生まれる忠誠心を土台として、どれだけ訓練を積んでいるかで大凡決まる)
こんな脆弱な兵では籠城戦なんて不可能だろう。そうなるとこの高く頑丈な壁など意味が無い。馬車の窓から通り過ぎて行く街並みや兵士を眺めながら、グレンダンの現状は俺が思っているより厳しいのかもしれん。そして、一際無駄にデカいうえに品の無い屋敷の前で馬車が止まる。
(これがマラカスの屋敷か…。いっそ清々しい程に屋敷の主の下品さが伝わってくるな)
ディスナの評議会館の美しさを見習えよ…。そう思いながら馬車を降りると正面からマラカスが美少年を連れて俺の所に来た。
「これはセシリア様。我がグレンダンへようこそ。お越しになられるのを待っておりましたぞ。」
そう言って下品な笑みを浮かべているマラカスが出迎えてきた。それとは対照的にめっちゃキラキラした目でこちらを見てくる美少年がシュナイゼル?
本当にこの2人は親子なのか?違い過ぎて衝撃なんだが…驚きを顔には出さず、さて仕事するか〜、と意気込む俺だった。




