67話 其々の戦場 カイルside
庭でセシリアにシュナイゼルの話をしたら失敗だったかもしれないな…。いや、セシリアならそうすると分かっていながら俺は話したんだ。自室で後悔の念に駆られる…。
(いくら第一王子とはいってもまだ成人したばかり。大臣や父は俺の考えに理解を示してくれるが、俺の行った政策などはまだ効果が出るようなものではない)
当然の事だが政治というのは新しい政策を実施したからとすぐに目に見える変化など起こる筈がない。浸透させようと急げば余計な反発も生まれるし、ゆっくり時間をかけて染み込ませていくものだ。
(今の周りの評価を聞けば俺よりセシリアが優秀だと思う者は多いだろう)
ディスナとの同盟関係の改善、亜人種の偵察を辺境にも周知させて被害を軽減、王国のルシア教会で強権を振りかざしていたロペス枢機卿の追放。
何より王位継承権を早々に放棄して第一王子で兄である俺を補佐すると明言してから、軍人となり魔物相手に数多の功績を挙げ、自らの力で将軍にまで上り詰めた。この行いへの民の信頼、そして王女でありながら叩き上げで将軍になった事は軍の中で絶賛されている。
(セシリアは、いや竜也はそんな事気にしていないだろうが…)
前世から竜也はそういう奴だった。自分は誰かを支えるのが性に合っているし、海斗は中心にいるのが似合っていると。いつもそれに助けられてきた俺はこの世界でも竜也に支えてもらっている。その気になれば自分が王位を継ぐと言えるはずなのに。あくまで俺を支えると継承権を放棄して、俺が内政に集中出来る様に軍事や外交を担ってくれる。
(それを知っていて既に十分な功も立てているのに、それでも俺はシュナイゼルのことを話した。俺ではマラカスに対抗する術が無いから)
マラカスの好色ぶり、その息子で将来王国を支える期待のある息子のシュナイゼルはセシリアに師事をしたいと、こう話せば竜也は動いてくれると分かっていた)
いや、もし俺が話さなくても竜也はマラカスを放ってはおかなかっただろう。優しい竜也は自分がやったほうがいいと思ったら必ずやる。それがこの世界で女になった事さえ利用出来るのなら迷いはしない。ディスナやルーク村では分からないが、ロペスの追放には女である事を利用したと思う。
今も加護の強化を行う為にその身を削って兵士を鍛えている。しまいには俺にもしてきたしな。
(ホント前世から今にかけて、いつも頼りになる親友だよ…)
そしてそんな親友は俺を信じてくれている。自分が他をやっていけば海斗は王国を発展させてくれる、と。
その信頼に応えないといけない。竜也が頑張って功を挙げているのは他ならぬ俺の為で、ひいてはそれが王国の為だと思っているからだ。
つまらない劣等感や嫉妬は無いと言ったら嘘になるが、そんな小さい事を気にしているときじゃない。竜也がセシリアとして王国の為に頑張っているのだから、俺も負けてはいられない!
改めて決心を固めて俺は俺のやるべき事に目を向けるのだった。




