64話 マラカス・グラウディア
王国で1番嫌いと言ってもいい奴が、お礼の為と部屋まで来やがった…。正直会いたくない…仮病とか多忙だからとか言い訳して逃げたい。でも同じ将軍の地位にあるあいつを無視するわけにはいかない。
(ロペスばかり気にしてたけど、マラカスも十分追放対象だよな〜。やってる事一緒だし…所属している者の親から寄付と称して金を集めての横領、責任ある立場なのに仕事しない、女にだらしない、もうビックリするほどそっくりな所業…)
今はディスナに挟まれているから帝国の脅威を然程感じずいられて、西の大森林の魔物に集中しているから自由に振る舞えているんだろうけど、北の守りはいずれ重要になる。その時にマラカスが将軍ではとても安心出来ない。
(いっそロペスと同じように懐に飛び込んでやるか?マラカスだけでなく騎士団の再編に繋げられれば北の安全性も高まる)
とりあえず避けられないから会うだけ会うとして、カイルに相談してみるか。
「どうぞ。」
そう決めて部屋にマラカスを通す。王女の俺に拝礼もせず、ズカズカと部屋に入ってきやがる…。王国建国からの名門グラウディア家の者が、こんな非礼を働くなんてな…。その辺の貴族ならこれだけで処罰を受けるレベルだぞ。
我が物顔のマラカスへの不満をグッと堪えて俺は椅子から立ち上がる。
「これはマラカス将軍。こうしてお顔を合わせるのは久しぶりですね。今日はどうされましたか?わざわざ私の部屋を訪ねるなど…。」
遠回しにお前が俺の部屋に来るのは不敬だと言っている。王女の部屋に男が単身で入るなど、いくら将軍でも普通は許されない。それを分かっているのか?と。
「おお姫様。ますますお美しさに磨きがかかっておいでですな。此度はこの儂自らワイバーンの件のお礼に参りましたぞ。このグラウディア家のマラカスがな!」
…嫌味も通じなかったか…。というか俺の言葉の意図に気付いてないなこれは。
「それはそれは。わざわざありがとうございます。ですが、本当に私がやったのかは定かではありませんよ?鍛錬で魔力を斬撃に乗せて北に飛ばした、というだけですから。」
まあ放った方角とワイバーンの落下した位置からして俺の可能性は高いだろうけど。プライドだけは無駄に高いマラカスにそんな事を正直に言っても無駄だろう。ここは謙虚にしておくのが1番。
するとマラカスは……
「ふはは!そうでしょうな。儂も姫様だとは正直思っておらん。だが将軍としての任は果たさなければならぬからな!」
なるほど。前から聞いてはいたが王女が自分と同じ将軍の地位にいる事が気に食わないという噂は本当らしいな。今回の訪問も礼というのは建前で、俺と会う口実にしたってところか。
「お務めご苦労様ですマラカス将軍。それと失礼ですが私はこれから仕事があるのでこれで失礼させていただきます。」
「むっ?…ならば仕方あるまい。今度是非グランダンにお越し頂きたい。歓迎いたしますぞ。」
「ええ。近いうちにお伺いします。それでは。」
話を切りマラカスを部屋から追い出す。それにしてもグレンダンを自分の領地かのような言い方だな。
城塞都市グレンダン。王国の北の要衝にある王国第三の都市。王国は貴族に領地は与えてないというのにそんな重要な都市を自分の物のように言うとは。これって反逆罪とかにならないかね〜?そしたら処刑なのにな〜。




