63話 王国軍
ワイバーンの件で慌ただしくなった城は俺の自白により鎮静化した。まさかワイバーンが飛んでる高度まで届いて、しかも首を斬り落としてたとはね…。ドラゴン程ではないがワイバーンの鱗もかなりの強度を持つ鎧と同じような物。それを簡単に切断するとは…想像以上の威力がありそうだ。何でワイバーンが王都付近を飛んでいたのかは気になるところではあるが…。
ワイバーンは飛行出来るからその気になれば広い行動範囲だろうけど、基本的に巣の近くから離れないと言われている。例外だって存在するだろうけど少なくても俺達がこの世界に生まれて初めてだ王都付近まで来たのは。しかも人の目では視認出来ないほど上空を飛んでいたなんて…まさか亜人のように偵察する事を覚えたのか?
(魔物が生活圏を出る主な理由は2つ。エサが豊富にあるからか、生活圏に敵わない生物が入り込んで追い出されたか、のどちらかだ。それらの理由じゃなく本当に偵察をしていたのだとしたら危険だな…)
まあ偵察だとしたら偶然だけど始末出来たのは良い事だ。たまたま試し打ちして使えた上に威力の確認まで出来たんだし、ワイバーンに感謝だな。
(さて、話が拗れそうだから目を背けてたが現実を見るとしよう)
このヴァイオレット王国には3つの軍が存在する。
王都と西方地域一帯を管理し、大森林から来る魔物の討伐と城や王都の守りを担当する兵士団。
王都東方から南方まで広がる海の安全を管理して、船での運送業も担う水師団。
そして北方の平原地帯を担当する騎士団。
其々の軍が将軍をトップとして動いている。
俺は兵士団をまとめる将軍であり、王都を守りながら、西方一帯の安全確保の為に魔物の討伐を担当している。魔物との戦いが多く実戦経験も豊富で、陸では兵士団が最強だと言われている。
水師団の将軍はダラク・ホーエンハイムという元は海賊あがりの男がやっている。港町でもある王都にいる事が多いから俺もそれなりに交流があり、これぞまさしく海賊!とイメージが似合う豪快で漢気のあるオッサンだ。水上戦において巧みな要兵術と熟練した船の操作は俺が真似できるものではない。
…最後の騎士団、ここが問題だ。まず騎士団なんてカッコつけた名前で通ってるが、騎士団に所属する奴らは貴族の子供だったり、商人の子供だったりと実力よりコネが優先された見栄っ張り共の集まりだ。北方の平原地帯は比較的安全な所だし戦闘する機会なんて殆どなく、親からの寄付という名目で集まった金で豪遊してるだけの騎士団ごっこだ。
そのトップである将軍のマラカス・グラウディアもその例に漏れず、王国でも屈指の名門グラウディア家の威光を借りただけの中年。
ワイバーンの件も本来は騎士団の管轄だ。北の平野に落ちたという事は、落ちてきた際の多少の誤差はあるだろうけど兵士団の役割じゃない。見えない程の上空を飛んでいたなら報告は出来ないかもしれないが、北の管轄での事を偶然とはいえ俺が処理したなら礼ぐらいするべき。まあ本当に俺がやったのかは分からないが状況証拠的にね。
(正直、騎士団は廃止してもいいレベルなんだよ。貴族とかのしがらみで出来ないだろうけどさ…)
まあこれには私怨も多分に含まれているけどね。何度かマラカスに会ったけどあいつは嫌いだ。グレンという名家に生まれた自分なら王女の俺に相応しいと何度も婚約の話を父に持ちかけている。お前みたいな傲慢な奴となんて死んでもごめんだよ俺は…。俺を見る目も値踏みしてるような嫌な視線だしな…。
そんな事を思っていたせいなのか、思っていただけだけど噂をすればなんとやらに当てはまるのかは知らないが…部屋で寛いでいた俺の耳に嫌な言葉が聞こえてしまった。
「姫様、ワイバーンの件でお礼を申し上げたいとマラカス将軍がおいでになりました。」
………勘弁してくれ…お礼ぐらい言えよと思ったけど、直接来るなんて……。




