62話 天を衝いたら………
思わぬ加護の強化にはなったが気をつけないとな。まさか階段を忘れて転げ落ちそうになったなんて知れたら王女の恥だよ…。城の中でもちゃんと注意しよう…。
ちょっと反省しながら中庭で剣を鞘から抜く。加護の強化で以前はあまり多いとは言えなかった魔力が増えている。ミスリル製のこの剣は魔力を通しやすい一品だが、今までは身体強化を優先してほとんど魔力を剣には通さなかった。
(まだ余裕がある程の魔力ではないから身体強化が優先なのは変わらないが、ここぞという大技を出すときに剣に回す魔力ぐらいは出来たかもしれない)
それを確かめるためにも一度剣に魔力を通してみる。するとミスリル製の美しい刀身に薄い青の魔力が全体に纏わりついた。思ったよりは魔力を消費していないがやはり持続させるのはまだ無理がありそうだ。
さて、威力も確かめたいところだがここは中庭。ただ斬りつけるとしても周りが建物だらけなので安易にやるわけにはいかない………。
そうだ!某有名な死神みたいに斬撃を飛ばしたらどうだろう?空に向かって飛ばせば被害は出ないはずだ。
よし、それでいこう。
思い立ったら試してみたくなるのが人間!纏った魔力を飛ばすイメージで真上に放つのは危険そうだから王都の北方面、平野の方へ向けて剣を振った。
………斬撃は飛んだ。けどどこまで飛んでいくの?もう目ではギリギリのところまで上がっていったよ?
ま、まあいいや。やる前から思ってたけどこれで分かるのは射程がすんごい長いってことだけだったわ。威力を試すならどこにぶつけないと…今度試そう。
試したいことは終わったし部屋に戻るか…。城の中へ入って先程飛び越えた階段をゆっくり上がる。そして気付く。
(俺のこの騎士服なら結構階段は良い強化ポイントなのでは?階段を上がってて見えてしまうならそれは仕方ないんじゃないか?)
今も階段下の両脇に控えている兵士はいる。階段に背を向けているけど……。
そこでわざと剣を金属音を出そうと剣に手を添える。すると気になった兵士が振り向くのが分かる。だがそれに気付かないふりをしてそのまま階段をゆっくり上がっていった。
(このやり方はありだな。兵士も不自然には思わないはずだし、兵士の数は少ないが確実性はありそうだ)
思わぬ発見に気分が高揚して部屋に入る。だが入った直後に扉がノックされた。ちょっと慌てているような感じだ?
「ひ、姫様!今、王都の北の平野でワイバーンの首とその胴体が落下してきたとの報告がありました!」
えっ?ワイバーンが?あのドラゴンの下位の存在で意外とバカにされる事も多いあのワイバーン?なんでそんなのが北の平野に?
「報告ではワイバーンの首には斬られたような跡があるとのこと。その傷は実に綺麗な切断痕で剣で斬られたようにしか見えないそうです。ですから他の生物による爪や牙の痕では無いそうです。」
………まさかね。確かに北に向けてやった。目では見えない所まで飛んでいったとは思う。でもそこにたまたまワイバーンがいたと?王都付近を飛んでたとしたらわりと問題だぞ?
容疑者は俺しかいないか…。何故飛んでたのか気にはなるが死んだのならまあ結果オーライだろう。
さて……。
「ごめんなさい。たぶんそのワイバーンを殺したの私です…。」
自白しようっと………。




