57話 断罪
合図を出してから数分。
兵士達が教会を包囲してカイルが入ってくるまではロペスを聖堂に留めておく必要がある。その為に入口での仕事を同僚に任せて、俺はロペスの気を引く。
「ロペス神父。入口での仕事は人手が足りているとの事。何か他に仕事はありませんか?」
「そうですね〜…思いついたらお願いするのでそれまでは私の隣にいて下さい。」
「はい。」
聖堂の隅で信者達を見ていたロペスの隣に移動する。ロペスのいるここは初日に聖杯のある床が反射する作りの場所だ。する事ないからここを通る女性のスカートの中を覗いていたんだろうが、そんなに人が通る場所でもない。だから俺をここに留めてちょっと満たされない欲求を発散しようとしているのだろう。
(ロペスがここを動かないようにするにはその視線を釘付けにしておかないと。あまり魔法は得意ではないんだが生活魔法のライトなら…)
この世界はみんな魔力は持っている。俺はそんなに上手く扱えないから身体強化にしか使えないが、一般人でも生活魔法というものなら誰でも使っている。軽く火を起こしたり、多少だが明かりを灯したり、そんな程度だが生活に役立つ魔法の総称が生活魔法だ。その中のライトという魔法をスカートの中で照らす。そこまで明るくはならないが、真っ暗なスカートの中を照らし、下着が見えるくらいは出来る。
(これでロペスをここに足止めしておけるだろう。とりあえず覗くのが好きな変態だからな)
実際、ロペスの視線は俺の足元に集中している。周りからはほとんど見えない程度の光だから、不審に思う者もいないはず。
(ほっほっほっ…自らライトで照らすとは気の利く女だセシリアは。純白のレースががあしらわれた清楚な下着は刺激が少々物足りんが、これはこれで素晴らしいものだ)
集中して見過ぎだろうこいつ。そうなるように仕向けたけどさ…まあこれが最後の晩餐のようなものだ。精々楽しむといい。
そうやって足止めをしていると入口にカイルの姿が見えた。よし、これで役目は果たせたな。カイルは一直線にロペスの前まで来て、ロペスに見えるように書類を突き出す。
「ロペス枢機卿。初めまして、俺はカイル王子だ。今日、ここに来たのはあなたに教会の資金を横領していた罪と、様々な女性に対しての猥褻罪で逮捕するためだ。観念するがいい。」
「な…なにをおっしゃる!?私にやましいことなどない!!これは教会への不当な行いですぞ!?失礼させていただく!」
信者の目もある中でのカイルの行動はみんなの注目を集めた。被害にあっていた女性も沢山いる。ここではマズいと思ったか、はたまた証拠に消しにいくためか、ロペスは聖堂から立ち去ろうとする。隣にいた俺はそれを許さずロペスを拘束する。
「ロペス神父、往生際が悪いですよ。猥褻罪に関してはここにいる女性達やシスター達、そして私が証言します。資金の横領も証拠は掴んでおります。観念しなさい!」
「ぐぅ…セシリア!!貴様の仕業かぁぁ!」
カイルと兵士達、拘束したロペスを連れて執務室まで移動する。そして寝室から見つけていた証拠を取り出す。
(良かった…注意はしてたつもりだが気付かれて証拠を消されたということはないみたいだ)
「ふむ、これは確かな証拠だ。ロペス、貴様の教会の資金を不正に使った確固たるものが書いてある。もはや言い逃れはできぬ。」
「くそ!くそぉぉぉぉ!!」
諦めたのかロペスは最後にそう叫んで抵抗を止めた。国教たるルシア教を私物化していた罪はかなり重い。極刑は免れないだろう。これでロペスとの戦いは終わりだな。
問題はこれからの教会か…あまり介入するわけにもいかないが、短い間とはいえお世話になった身だ。せめて後処理が済むまでは俺はここに残ろう。
カイルにそう話してロペスの事は任せ、俺はシスター達の元へ戻るのだった………。




