53話 懺悔
教会に来て7日目も経てば慣れたもの。朝起きてベッドメイクをやり、服を着替えて朝食を食べる。聖堂に行き、今日の業務を聞く。
この一連の流れを身体が覚えてきた。何気に忙しい教会の仕事は前世の仕事と比べてもあまり変わらないレベルなのかもしれない。社会に出てないから断言は出来ないけど…。だがこっちに来てから軍人として訓練に励み、任務では命のやり取りもたくさん経験した。
(魔物と戦うよりはここの仕事も前世の仕事も楽な部類じゃないだろうか?まあ基準が軍っていうのがそもそも厳しいのかな?そう考えたら日本の自衛隊の人はすげえな…命のやり取りはさすがにないだろうけど、日々訓練に励む大変さ…今となって痛感するね)
自衛隊の方々に敬礼!なんて考えてたらシスター長来ちゃった。今日はどこ担当だろう?午後はロペスだろうけど…。
「皆さんおはよう。今日のお務めを伝えます。」
…シスター長、なんか疲れてる?顔色が優れないように見える。シスター達から聞いて知ったが、聖女がいなくなってシスター長の仕事の負担はかなり増えたらしい。
聖女クレアは女性として王国では初の司祭に就いた人なんだそうだ。ロペスが役に立たない分、その人が教会を運営していたことは想像出来る。ちなみに教会での役職は上から、枢機卿、司祭、神父、シスター長、シスター、シスター見習い、となっている。
(そう考えたらそりゃあ枢機卿が働かないなら次の司祭に負担が来るのは当たり前。そしてその司祭さえいなくなったら次に負担を被るのはシスター長だろう)
一応ここには神父の立場の人も2人いるが、彼らは枢機卿の顔を伺うばかりで正直いる意味を感じないレベル。シスター長、気の毒に…。疲れが溜まるのも当然だろう。
(聖女クレアは俺と入れ替わりになったとのことだから、負担が激増して1週間か…。なんとかしてやりたいところだが、所詮シスター見習いでしかない俺にはやれる事はほとんど無い。ただ倒れたりしない事を祈るばかりだ…)
シスター長の身体を心配しながら今日の担当を聞く。俺は今日は懺悔室か…。任せてもらえるようになって嬉しいんだが、普通見習いは告解を聞く懺悔室担当にはならないって聞いた。それだけ信頼されたと思えば悪くない気分だが…ぶっちゃけ聖女がいない負担を分散させる苦肉の策なんだろうなぁ〜…。
(実際、他の見習いも担当する仕事が出来て嬉しい反面、失敗も多く気が気でないらしい)
このままいくと教会の運営は破綻しそう…。そうなる前にロペスに引導を渡さないと俺の目的だけの問題では無くなりそうだ。
どちらにしても与えられた仕事をしっかりこなすしか今の俺には手段が無いんだけどな…。
懺悔…民が自ら悔やむ罪を告白して女神ルシアに許しを請う。基本的にはその告解を静かに聞くのがシスターの仕事だ。ときに叱責したり励ましたりするが、告白する本人達はとりあえず話を聞いてほしいだけなのが多い。余計な口を挟むのは厳禁なのだ。
(さて、今日は何人ぐらい来るだろうか。多いと大変なのは当然だが、意外と少ないのも大変だったりする。よほど急な仕事が入らない限り人が来なくても懺悔室担当は部屋を離れられない。ただ座って時間が過ぎるのを待つっていうのも辛いものなんだ…)
そろそろ教会が開く頃だ。椅子に座り、懺悔しに来る人を待つ。椅子は相手の顔が出来るだけ見えないよう金網を挟んで並列になっている。正面には壁しか無く、ひたすらに話を耳を傾けるためだ。金網の下部分には人の手が少しだけ入るスペースがあり、懺悔した人はそこからお布施を入れて退室する仕組み。
(おっと、人が入ってきたな…)
お互い軽く挨拶だけして、罪の告白を聞く。
(え?罪の内容?それは誰にも話してはいけない決まりだ。なので聞いても無駄!俺は口は固いほうなのだ!!)
なんか意味の分からない問答を自分に語り掛けていたら、いつの間にか終わっちゃってた…いかんいかん、次からはちゃんと話を聞かないと…。
話が終わるとお互い立ち上がって礼をしながらお布施を受け取る。
「シスター、ありがとうございました。こちらお納め下さい。」
「女神ルシアはあなたをお許しくださるはずです。お心遣いにこちらも感謝いたします。」
そう言ってお布施を受け取るのに手を出す。たしかに手渡しされたんだが…相手が手を離してくれない?たまにこういう事あるけど何がしたいんだろ?
(おお!今日は当たりだ!!シスター服から溢れる胸。ぴっちりと張り付いた服だから直に見れるわけではないが、これも癒しの1つだ…)
お布施を受け取る際に少し屈むセシリアの胸はこぼれ落ちそうなぐらい重力に従って下にぶら下がるようになる。普通のシスター服では胸元は開いてないからその柔肌を見えないが、薄暗い懺悔室の中で微かに見えるその景色は男にとってどこか惹かれる環境なのだ。そのため思わず手に力が入ってしまい、受け渡すときにちょっとチグハグになり、ますます胸を見る時間を確保してしまう無意識の行動。
それには気付かず、手を離してくれないかな?とちょっと困惑するセシリアだった。




