51話 城の蔵書 カイルside
「う〜ん…やはり城の蔵書で調べるのは限界があるか…。」
セシリアが教会に行ってから、城の蔵書が納めてある図書館のような場所で、仕事以外の時間を使いずっと女神ルシアの事について調べているがこれ以上の情報は出てきそうにない。
(俺は読むのに集中させてもらうため、アリサにルシアについての本を集めて持ってきてもらってるが、ここ1時間ほど新しい本を持ってくるアリサを見てない)
恐らくもう本が無いのだろう。それでも見逃しているかもと思っているのか、諦めずに探してくれるアリサには感謝だ。
ここまでで分かっている事も世間に知られている事と大きな違いはない。
(まあ再確認出来たと思うべきか…確かな情報だという根拠は無いけど…)
女神ルシア………
約2千年前にこの地に降臨した神。数多の天使を従えたルシアは神の力で大陸に人間を創造した。
生み出した子供とも言える人間にルシアは加護を与えた。そして先住民であったエルフは争いを嫌うが故に、人と揉める事を避けるため大森林の中に結界を張りそこから出てこなかった。そのおかげで人は広い大陸を思うがままに出来たから繁栄出来た。
(ここまではよく聞く世間の常識レベルだ。ここから先が分からない…)
人間を作ったルシアは何故愛を司るとされるのか、無から人間を作り出したならそれは創造神のようなもの。愛を司るというのは何処からきたのか?ルシアは人と交流を深めたとは書いてない。ルシアと接した人達がその慈愛を讃えたとかいうなら分かるが、そんな記載はない。
更に加護と一口にいうがそれはどのようなものなのか?まず、エルフと争っていない点からみてそんな力を人に与える必要があったのか?これはもう1つの疑問とも関係がある。
天使が堕天した者が魔物だというならまだこの時点では存在しないはず。エルフとは争っていない、魔物はまだ存在していない、なら人に戦う力を与えた意味が分からない。
(そもそも加護も人により千差万別。みんなが戦えるとは限らない不安定なものだ。ルシアは何故そんな曖昧な力を与えた?愛を司るというほど慈愛が深ければ誰も死なないよう一定の加護を全員に与えた方が確実だろう)
まあそれも個性だと思うのならそれはそれでありえるかもしれんが…。ステータスとか表示されればいいのに…。あんな分かりやすいものがあったら確認も簡単なのにな。
とりあえず加護のことはおいておこう。
最も疑問なのはこの地に降臨したのなら今、女神はどこにいるのか?そして堕天したのが魔物ならどうやって今も増えているのだろう。魔物は繁殖能力を持ってはいるが、そんな簡単に繁殖出来るのか?よくあるゴブリンなどが人間の女を拐い孕ませるという話はこの世界にもあるが、セシリアや軍が減らした以上の繁殖を可能にするほど人をさらえてはいないはずなんだが…。
(ダメだな…考えても分かるものじゃない。もっと確かで多くの情報がないと結論は出せない…)
そういう意味ではルシア教会に潜り込んだセシリアの考えは正しいだろう。ルシアについて教会ほど情報がある所は無いわけだしな。
(ふぅ…ずっと本を読んでは考えを繰り返していたら疲れたな…)
首を逸らして上を向き、考えるのに閉じていた目を開くと近くの梯子に登っていたアリサを見上げる形になってしまった。
(思わず声が出そうになるのは抑えられたが、そんなところにいたのか…メイド服でそこそこ高い梯子のかなり上のほうで本を探しているアリサのスカートを覗くような風になってしまった。おそらく光沢のある感じからしてサテンのような生地だろう。所々白のレースがあしらわれている上品な黒の下着だ…)
普段はよく俺を揶揄うのにアリサから仕掛けてくる事が多かったから、自分から覗きにいったような今回はちょっとの興奮よりも見てしまった罪悪感が増す。
(ごめんアリサ。一生懸命手伝ってくれているのに、覗いてしまった俺を許してくれ…)




