48話 シスター長からの激励
向いてない事務的な仕事をこなし、ロペスのセクハラにも耐え、教典の写本が終わった。
(人に渡す手書きって変に緊張する…破れたりとかしないかぎりこの教典を使い続ける人がいるわけだからな…)
そういう意味ではかなり有意義な仕事だ。誰かが俺の書いたこれを見てルシア教を学ぶんだ。まあそこまで長持ちするわけでもないだろうけど、それでも良い仕事だな。
(ロペスのくだらないセクハラさえ無ければもっと良かったんだが…それにしてもシスター長にも手を出してるんだな)
俺を含めたシスター達は成人である16〜20代前半ぐらいの歳だろう。みんなタイプは違うがいわゆる美人と言われる美貌の子達ばかりだ。もう顔で選んでるんじゃないの?ってレベルで。その中でシスター長は恐らく30代後半ぐらいだと思う。
(20年、この教会でシスターをしてると他のシスターが言ってた。16歳で入ったとしても36歳を超えていることになる)
ルシア教は貞淑性のようなものは重視していない。シスターであっても普通に結婚して子供も産む。シスター長にも3人の子供がいるらしい。とてもそうは見えない外見の若さだけど、どこか漂う色香はやはり妙齢の成せる業かな?
教典の作業が終わった後はお昼を食べて、聖堂へ午後の担当を聞きに行く。
(シスターの話ではこれでほとんどの仕事は俺も経験したらしい。入口の案内、懺悔、写本、掃除が大まかな教会の仕事らしい)
もちろん他にも細々な仕事はあるそうだが、その辺はほぼ雑務というレベルで気にしなくて大丈夫と言われた。
(そういえば食事って誰が用意してるんだ?シスター達が厨房に立ってるわけではないみたいだが、わざわざ作る人を雇ってるわけか?)
シスターの仕事は体力こそそんなに使うものではないが、それでもやはり人を接する仕事。更に教会のシスターであるということは一種のステータスらしいので、それに見合ったルシア教への知識などが求められる。
(俺と違ってこの教会で生きていくことは、自身の将来にとってとても大事なことだ。実際、シスターは玉の輿にのる例も結構あるらしいし、体力的に長く続けられる仕事だし、女性にとって理想的な職場なのだろう)
…ロペスのセクハラが無ければ言うことなし!ってところか。
女性にとって折角良い仕事なのにロペスのセクハラのせいで苦痛に感じてる者も多いだろうな…と聖堂で待機しながら考えていたら…
「午前のお仕事お疲れ様です。午後からの担当を言い渡します。」
シスター長の凛とした声にはっ!となり、聞き逃さないよう耳を傾ける。次々と担当を言い渡されるシスター達の中に俺の名前が無かったみたいだが、これはどういうことだ?
「これが午後の担当です。それでは午後もよろしくお願いします。」
「「はい。」」
そう返事をしたシスター達が各々の持ち場に移動していく。何も言われていない俺は動くに動けず佇んでいる。
(あれ?俺、なんかやらかした?もしかしてシスター失格とか言われるのか?)
ヤバい…意外と楽しくて頑張ってたのに失格とか泣ける…。
悲観に暮らそうになる俺の元へシスター長が歩み寄ってくる…。
「あ、あの…私はどうしたら?」
失格を言い渡される恐怖に怯えながら尋ねる。
「セシリア、あなたはロペス神父の希望で神父の手伝いをしてもらいます。もうすぐ神父が来られるのでその指示に従って下さい。」
「は…はい。」
クビかと思ったがどうやら違ったらしい…。安堵した反面、ロペスからの名指しか…面倒な事になりそうだな、と気が重くなる…。
「セシリア、私はあなたの仕事ぶりを大変評価しています。どうか心をしっかり持ち、やり遂げて下さい…。」
え?なに?そんなつらいの?ロペスの手伝いって?でも仕事を評価してくれている事は嬉しい。
(何されるか、どんな仕事なのか知らないが、シスター長の評価に報いるよう頑張るっ!)
そう決意してロペスが来るのを待った。




