45話 触れ合い
結局、1箇所だけ椅子の下を掃除した程度で時間が埋まるはずもなく…掃除が終わった後もなんか居座ってるロペスの野郎と雑談するしかなかった…。
(上司だからね?終わったからはいさよなら〜って部屋に戻るわけにもいかないんだよ…無駄な自慢話とかされまくったけど笑顔で耐えた自分を褒めてあげたい…)
そんな苦痛の時間を過ごしていたけど、やっと日が昇り始めて他のシスター達が聖堂に集まってきた。
(聖堂が集合場所なんだ…控え室みたいな所があるんだと思ってた。まぁ内側から鍵がかけてある入口は誰も入ってこないし、ここでもいいのかな?)
教会ってあまり来れないからよく分からん。お祈り自体は城にあるルシア像でやってるし、普段ここに来る時っていったら街を視察してるときにふと立ち寄るぐらいだからな〜。
「皆さんおはようございます。今日は昨日と違い通常通りとなります。持ち場はそれぞれ変わりません。ロペス神父、セシリアはどこを担当させますか?」
持ち場とか決まってるんだ…
「まだ不慣れですから教会に来られる方の案内や懺悔室は無理でしょう。ですが折角来て頂いているのですから、教会への理解を深めてもらうために全部経験してみて欲しいと思います。なのでまずは後ろに控えて仕事の内容を見学してもらいましょう。午前は懺悔室を、午後は比較的人も少ないですから案内のほうについてもらいます。」
「分かりました。セシリア、それでよろしいですね?」
「勿論です。不慣れでご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします。」
色んな仕事に関われるということは、色んなシスターと交流を持てるということ。それは望むことなのでこれはありがたい。
だが、足手まといでは信頼は得られない。しっかり見学して出来るようにならないと…。
「それでは入口を開けます。皆さん今日も一日よろしくお願いします。」
「「「よろしくお願いします。」」」
ミーティングのようなものが終わり、みんなそれぞれの持ち場に移動する。午前は入口で待機して、来る人への挨拶と何か尋ねられたときの応対が主な仕事。
入口でシスターの後ろに控えて待機する。開かれた入口からは押し寄せる、というほどではないがそれなりの人の数がルシア像へお祈りをしにくるらしい。
(そうだよな…城と違って個人の家にルシア像なんてないんだ。少し裕福な家庭なら教会が販売している手のひらサイズのルシア像を買って家でお祈りするのだろうが、それ以外はここに来てするしかないんだな…)
やはり実際に現場を経験するとためになる。ルシア像が身近に無いということが俺には想像出来なかった…王族ってやっぱり恵まれてるな…)
新しい発見に感心していると、前にいたシスターの2人が対応に追われ気づいていないようだが、お爺さんが入口から横にズレて佇んでいる。
(勝手かもしれないが応対してみよう…)
そう思い佇んでいるお爺さんに近づいて声をかける。
「お爺さん、どうされました?」
「おお、これはセシリア様。大変申し訳ないのじゃがここまで歩いてきて疲れたのか腰が痛くなっての…椅子まで手を貸してくださいませんかのう?」
「それは大変です!私がご案内しますので、どうぞ手に掴まって下さい。それと私は今は教会への奉公にきていてシスター見習いです。そのようなお言葉使いは不要ですよ。」
「そうでしたか…ではありがとう。」
お爺さんを支えるように手を腰に回し、ゆっくり椅子まで歩く。たしかに足元がおぼつかない感じだ…教会の床は石作りで非常に固い。もし倒れて頭でも打ったら大変だ。
慎重に安全に支えないと…!
(セシリア様、なんとお優しい…精々手を添える程度ぐらいが普通なのに腰に手を回してしっかり支えようとしてくれておる…)
(じゃが支えようと必死になっておられるのだろう。胸が押しつけられて、その柔らかな感触が伝わってくる…い、いかん!支えようとして下さっているのにこのような事を考えるとは!!なんと情けないのじゃ….!!!)
椅子までの短い距離だが務めを果たそうと頑張るあまり、胸を押しつけるようなことになっているとは思わないセシリアだった…。




