36話 ロペス卿
0話の兵士の日常でのセシリアの振る舞いの意味。
本当はもっと早く明らかになっている予定だったのですが、ここから徐々に掘り起こしていきます。
秘密基地での恥を乗り越え、夜は自警団に偵察の見つけ方や対処法を教えた。
えっ?内容が薄い?………仕方ないじゃん…。
そんな複雑なものでもないし…結局発見出来るかどうかは経験なのだ…
長期間滞在して時間があるならまだまだ教えたい事もあるが、その時間が無いのに一気に詰め込んでも覚えられるものではない。まあそれでも複雑じゃない簡単なものだって知っていれば違うものだ。
訓練を終えて部屋に戻り、明日には帰ると思うと村での色々な思い出が頭を駆け巡る。
訓練と見廻り以外だと秘密基地での恥部しか思い出せないけど…ご飯は美味しかったし、村の人は優しかったし、思わぬ収穫もあったし来てよかったと思える。
そして思い出に浸りながら眠り、朝には村の人に挨拶をして出発した。
来た時ほど飛ばしてはいなかったので、王都に到着したのは
翌日の昼だった。
城門を潜り、大通りをゆっくり進みながら思う。
(うん、やっぱ王都は活気が違うな。前も賑わっていたがカイルの政策が効果を出しているのか、より活気に溢れるようになった)
カイルがどんな政策を出したかは知らないんだがw
王女といっても俺は軍の所属。政治には携わるわけにはいかない。なのでぶっちゃけその辺は善政は敷けてるのかな〜?ぐらいの認識だ。
自分の頭の無さをちょっと痛感…役割分担してるといえばそうなんだが、カイルの頭の良さに嫉妬してしまうね。こんなにも笑顔が溢れる通りを作り上げているんだから。
(そういえばルシア教会はこの近くだったな。あまり突くのは危険だが、旅から無事に戻ってきたという名目なら怪しまれないだろう。ちょっと行ってみるか)
兵士を連れていくとイチャモンつけられそうだし、兵には待機してもらい馬をみててもらうとしよう。
1人で教会の入口付近まできて、深呼吸して息を整え扉を開ける。
ギィーと古ぼけていそうに見えながらもしっかりした大きな木の扉を開けると…
煌びやかなステンドグラス、綺麗に並べられ磨かれた光沢のある長い椅子、正面に立つルシア像はその神秘さを余す事なく体現していて、その神秘に当てられたように厳かな雰囲気が漂う。
(何度見ても凄い雰囲気だ。だが、邪推するならこれだけ立派な建物を建てて維持していくのにどれだけの金がかかり、それをどうやって捻出しているんだろうな〜)
ルシア様には失礼かもしれないがそんな事を考えていると、この厳かな雰囲気とは全然合わない下卑た男が近づいてくる。
「これはこれはセシリア王女。此度は教会にどのようなご用件で?」
この教会を取り仕切っている神父のロペスだ。聖職でありながらルシア教の影響力のおかげで、貴族と同じような扱いを受けている奴。
(小太りの不細工な顔に、権力や出世ばかり考える小物。そして何より気に触るのはこの視線だ。女を性欲の捌け口程度にしか見ておらず、王女である俺に対しても舐め回すような視線を隠そうともしない)
「これはロペス卿。お久しぶりにございます。遅れながらですがディスナ評議国からの帰還と、ルーク村から今し方戻ったところで、どちらも何事も無く帰還出来た感謝をルシア様に捧げたいと思い参上しました。」
「ほぅ…そうですか。ささっ、それではどうぞお祈り下さい。」
「ありがとうございます。」
ルシア像の近くにいき、膝をついて目を閉じ祈りを捧げる。教会の様子とちょっとした揺さぶりにきたが、ルシア様への感謝は本当だ。ルシア様の加護が無ければ恐らく俺は生きていないだろうから。
「セシリア王女。お祈りは済みましたらこちらにおいで下さい。」
祈りを終えて目を開け立ち上がるのを待ってたといわんばかりのタイミングでロペスに呼ばれた。行きたくないが行くしかない…
「ロペス卿。どうかされましたか?」
「うむ。セシリア王女の熱心な祈りのお姿を見て感動しましてな。こちらの聖杯に注がれた聖水を準備しました。どうぞ、お飲み下さい。」
(くそっ!何が聖杯だ!?それは表向きで本来の狙いはこの立ち位置だろ!?)
聖杯を受け取るならもう少し前に出てかないと届かない。ロペスは仮にも神父なので、そちらに動けと言うわけにもいかない。それを分かっていて、なおかつその立ち位置の床が反射するのが狙いだろ?それが気付かれないよう大きな聖杯で下を見づらくするのも確信犯だ。
「それはそれはご厚意に感謝いたします。ありがたく頂戴しますね。」
断るわけにもいかず、諦めてロペスの思惑にのる。
(この野郎…教会の闇を暴くのとは別に、必ずこいつはドン底に突き落としてやる!)
聖水を飲み干して「ありがとうございます」と告げる。
「またいつでもお越し下さい。ルシア様のご加護があらんことを」
「ルシア様のご加護があらんことを」
ルシ教の終わりの挨拶をして教会を出る。腐れ神父にイラつく感情を押し殺しながら城へ戻るのだった。
(ぐふふ…ますますセシリアは美しくなっているな。珍しい黒髪のロングにややつりあがった凛とした瞳。長身ながらもメリハリのある身体。あの女を思うままに弄べたら実に愉快であろう)
(まぁ下着は色気のない白だったが、それはそれで趣もあるし、儂の好みに仕上げていくという楽しみもありそうだ)
いずれ手に入れてやると意気込むロペス。
だが、その地位は既に揺らぎ始めていた。




