34話 ゴブリン
(久々に子供の遊びをやったな。虫探し、鬼ごっこ、木登り…をしてるときは下から覗かれてたみたいだが、男の子なんてそんなもんだ)
王女としてこの世界に生まれてから、遊んだ事なんて殆ど無かったから本当に楽しめた。
それにあの子達の無邪気な笑顔を守るのが俺とカイルの役目だと素直に思える。
探しにきてくれた村長と合流し、昼ご飯を食べたら眠くなってきた…子供と遊ぶというのはなかなか体力を使うものなんだな。
「セシリア様、今日の午後はお部屋でお休み下さい。」
「えっ?いえ、そういうわけには…」
「セシリア様は村に来られてから朝も昼も一度も休まれていません。村の為、働いて下さるお姿には誠に感謝しておりますが、そろそろお帰りになるのでしょう?帰り道に疲労が溜まっていては危険です。ここは一度お休み頂き、身体を労わるべきです。」
「…分かりました。お休みさせていただきますね。」
「はい。」と答えた村長に感謝して部屋に戻る。
たしかに一日中動きっぱなしで休めていなかったかもしれん。村の生活が楽しくて、少しでも役に立てたらと気を張っていた。
気を遣ってくれた村長の為にも今は休もう。そう思いベッドに入ると、やはり疲れていたのか、あっさりと眠りに落ちていった…
(マジか…そんなに疲れてたのか。夜ご飯にさえ起きずに深夜まで寝ていたようだ)
目が覚めると外は暗く、リビングには「起きられたら食べて下さい」と書置が野菜スープの横に置いてあった。冷めてしまっていたが、身体を労った料理に感謝しかない。音を立てて村長達が起きないよう静かに食事を済ませ、夜風に当たろうと外に出る。
随所に警戒して立っている自警団の人達に心配されたが、寝てスッキリしたと笑顔で返す。
そのまま歩いて午後には来れなかった西の農場付近の警備をしている者と話そうと思ったとき…
(…っ!?まだ遠いが俺の腰ほどの高さにある目らしきものはゴブリンかもしれん!)
ここからではまだハッキリとは確認出来ないが、ここは用心して確認に動きべきだ。偵察なら仕留め、この村には手を出させない!
「自警団の人ですね?少し力をお借りしたいのですが…」
「セシリア様?どうされたのですか?」
自警団の人はまだ気付いていないのか…剣の手ほどきだけじゃなくて、こういう訓練も必要かも。
「…先に言っておきますが目線をそちらには向けないで下さい。気付かれたと思われて逃げられては厄介です。南西の方角にゴブリンらしき影がありました。確認してやれるようなら殺しておきたいのです。」
「ゴブリンがっ!?かしこまりました。私はどのようにすれば?」
「ここから南西の方には行かずに北に向けて、警備してるのだと思わせるようゆっくり歩いていって下さい。あなたのほうに視線が向いたと判断したら、私はその隙に南から背後を取るように回り込みます。」
「そんな…!危険ですっ!?」
「まだゴブリンと決まったわけではありません。それに仮にゴブリンだとしても偵察に来る程度の数など敵ではありません。今、確認しておかなければ巣のゴブリンも押し寄せてくるかもしれません。そちらの方が危険です。」
「…かしこまりました。指示通りに動きます。どうかお気をつけて。」
「ありがとう。」
話し合いを終えて自警団の人がゆっくり後ろは見ずに左右を確認するふりをしながら歩いていく。
(急に言われたのに演技上手いな…ちょっとビックリなんだが)
感心してる場合じゃねえや。それっぽい視線は動く人のあとを追っているように感じる。
今のうちに身を屈めながらも、足音が出過ぎないギリギリのラインで一気に距離を詰める。
目線の後方にまで来たら気配を消し、気付かれないよう確実にゆっくりと近づく…
(………いた!?やはりゴブリンだったか!敵の数は3。逃さぬよう速攻でケリをつける!!)
そう決断してゆっくり腰の鞘から剣を抜き、駆け出す!
走り出した音に気付いて後ろに振り向いたが、俺の方が速い。ゴブリンの首の高さで横に薙ぎ払い、固まっていた2匹の首を落とす。
最後の1匹は短剣を構えてこちらに向かって突き刺そうとしてくるが、それをステップでかわし、勢いのまま横を通り過ぎようとするゴブリンの頭をめがけて剣を振り下ろす。
グシャッという音とともに頭を真っ二つになったゴブリンは絶命した。
(ふぅ…ゴブリン程度なら楽なものだ。これで偵察が戻らないこの村は危険だと巣の主は判断するはずだ)
一安心して農場の中に戻ると自警団の人が駆け寄ってきた。
「セシリア様!ご無事ですか!?」
「ええ。今は暗くて危ないからそのままにしてきたけど、朝になったら死体を処分しましょう。」
「はいっ!」
(魔物を切ったのも3週間ぶりぐらいか…ちょっと動きが悪くなっていたな…勘が鈍らないよう程々に実戦をやらないとダメだな)




