32話 階段
見廻りを終えて農場の手伝いをしていたら、いつの間にか日が陰ってきていた。暗くなると危険なのでここらで仕事は切り上げ、村長の家に戻る。
(大学生だった頃、田舎での暮らしを体験してみたいと思ってたが、こんな形で実現するとはな〜)
澄んだ夜空、平原で遮る物が少ないそよ風、村の人の暖かさ。こんな自然を体験してみたかったんだ…
(メイドがいなくて身の周りの事が大変だとも実感出来たしな…王族の暮らしに慣れて、こんな当たり前の事も改めて支えてくれる人達がいてこそだと再認識出来る。
自然に目を向けながらゆっくり歩いていたつもりだったが、もう村長の家に着いてしまった。
このままもう少し散歩でもしたいところだが、そういうわけにもいかない。
村長の家に入り、リビングで寛いでいた村長に挨拶をしたが、いつもキッチンから顔を出してくれる奥さんの姿がない…
「村長。奥様は…?」
「ああ〜、家内は今日は知り合いの家で新しい料理のレシピを考案したいからと泊まりがけで行ってまして、留守にしております。」
「セシリア様がいらっしゃるのに家を空けるなと申したのですが…」
「いえいえ。新しいレシピとやらが完成したら私も楽しみです。それでは私が夕食をお作りしましょうか?」
「そ…そんなことはさせられません!それに家内が準備はしていってくれているようです。」
「そうでしたか。用事もあるのに準備していってくださるとは感謝しないといけませんね。」
「ははっ、家内もそのお言葉だけで十分喜ぶでしょう。さあ、お席にお座り下さい。料理を運んでまいりますので。」
「ありがとうございます。お願いします。」
手伝おうか?と言おうと思ったが、遠慮されてしまうのは想像出来る。それならここはゆっくりしておくほうが変に気を使わせずに済むだろう。
「「頂きます。」」
2人でする食事は初めてだが、奥さんの美味しい料理と、村長からこの村の昔の話を聞いていたら、あっという間に食べ終えてしまい、その後も色々な話をしてくれた。
すると…
「おっと、セシリア様。話し込みすぎたようで申し訳ない。先にお風呂へお入り下さい。」
「そんなに時間が経っていましたか…それではお言葉に甘えてお先に頂きます。着替えを取りに一度部屋に戻りますね。」
「はい。」
返事を聞いて椅子から立ち上がる。お風呂はリビングを出て階段の脇にあり、俺の部屋は2階。
「先にお風呂の温度を確かめてきます。着替えを持ってこられるときには出ていると思いますが、一応ノックをして下さい。」
「…?分かりました。」
(昨日は温度のチェックなんてしてたか?…まぁ昨日は俺も慌ただしかったし、知らない間にやってたのかな?)
文明がいた世界とは遅れているんだ。ましてや俺は王女だし、気を遣ってくれているのだろう。
そう思いながらも階段を上がりながら、訓練や見廻りでかいた汗を流すのはサッパリ出来るなぁ〜とか考えながらゆっくり階段を上がっていった。
(ぶほっ!?鉢合わせしないよう早く温度を確かめようと思っておったからセシリア様の後ろをついていってたが…これは考えておらんかった…)
後ろをついていってセシリアは階段を上がっていくのだ。騎士服のミニスカートで…風呂場の扉を開ける前にふと見上げた光景に村長は扉のノブに手をかけたまま固まってしまった。
(階段を上がるセシリア様のお尻が左右に振られてなんと艶かしいことか…その艶やかさに合わせたかのような後ろがスケスケの黒いショーツ…なんともいえん色気じゃ…!?)
村長が見事なお尻に気を取られているとは知らず、ゆっくり階段を上がるセシリア。
そのまま気づかずに風呂に入り、サッパリして「お休みなさい」と挨拶を済ませ、寝床につくセシリアを眺めながら見てしまった光景が頭を離れず、風呂に入るのも忘れてしまった村長の夜はふけていく………




