2話 友と再び
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この世界に生まれて6年…正直、去年までは自分の現状に戸惑い、先の事を考えるどころではなかった。
転生という非現実が自身に訪れた事、転生した先が小国とはいえどもその王族であった事、前の世界では1人っ子だった為、双子の兄という存在に対してどう接したらいいか分からなかった事…
そして、それらの悩みを吹き飛ばす最大の悩み、それは………
王国の姫という身分の女性に転生していた事だ!
転生というものはたしかに海斗から聞いていた。創作の話だし、そういう発想も面白いものだなと思っていたし、自分がそうなったらどうなるかな〜なんて想像もした事はある。
(でも女になることなんてあんの!?…くそっ、そんなジャンルもあるのだと聞いていれば心の準備も出来たものを…)
まだ赤ちゃんのときはさほど意識していなかったが、たどたどしくも少し喋れるようになり違和感、自分で動き回れるようになったときに感じた女になった衝撃はデカかった…
マジこれどうなんの!?と戸惑いながらも姫らしく振る舞う教育は受けてはいた…頭空っぽの状態で…。
幸い、そんな混乱の中で上手く立ち回れてない時でも、王や王妃としての責務が多忙だろうに、両親は俺達双子に目一杯の愛情を注いでくれ、王城に仕える者達も優しく支えてくれた。
そんな周りの人達に報いようと、前の世界では身体を動かすのが好きだったから勉学より剣術に重点を置いた。
生き残る為にも必要だろうし…
そして、姫らしく女性らしく振る舞うのも5年も経てば、さすがに順応する。
俳優目指した時期なんかもあったりして演技にもちょっと自信はあったから、上手くやれてると思う。
そんなこんなで何とかやっていく中、気になるのは兄の存在だった。
物静かで頭が良く、妹である俺の事も気にかけてくれていた。その接し方が友に似ている気もしたから、俺も兄を慕った。
そして、2人で王城の庭でのんびりしているとき…兄のカイルが発した言葉で、姫である俺と王子であり兄である前に、たしかな絆がある事を知る…
それは庭にある一際大きな木の下で、兄と緑に囲まれながら寝転んでいたときの事だった。
「竜也は、どうなったんだろう…」
「えっ?」
この呟きが聞こえた俺は、空を眺めていた目を隣で寝ている兄へ向け、思わず自身も友の名前を呟いた。
「…海斗?」
そう確かに声に出した。そしてそれを聞いた兄は驚いた顔をしてこちらを向いた。
「…!?そんな…ま…まさか…!?」
お互いに顔を見合わせ、示し合わせたかのように次の言葉を絞り出す。
「まさか竜也…なのか?」
「海斗?なのか…!?」
驚愕の顔をした兄。俺もそんな顔をしていた事だろう。
だが、事態が飲み込めてくると、その顔は喜びに変わり、俺も再び会えた親友に嬉しい気持ちが溢れ出し…
「か…海斗!また会えるなんて…!」
喜びが身体を駆け巡る。海斗も同じなのか、下を向いて身体を震わせていた…と思っていたら。
突然、顔を上げて両手を空に突き出し叫んだ。
「自分じゃないけど、TS転生キタァァァァァ!!!」
喜びのあまり抱き締めようとした俺の身体は、その言葉に阻まれ固まってしまった…
竜也「俺の喜びの表現止めてくれるなよ!?」