27話 ルーク村
(うん…テンションおかしくなって飛ばし過ぎたねこれは…)
王都から飛び出した日の夕方にルーク村まで着いちゃった…事前に村の人に通知も出してないし、これって迷惑以外のなにものでもないよ?
(勢いに任せ過ぎた…王女としてこれはまずいんじゃないか?でももう来ちゃったし当たって砕けろ!の心境でいこう。)
夕暮れに見る実った畑というのも綺麗なんだな。道を進みながら周囲を見渡して思う。とりあえず迷惑だけはかけないように心掛けよう。
自分の心を戒めていたら村の入口にまで来た。警戒した門番が近付いてくるが、俺の姿を見た瞬間、その警戒が驚愕に変わる。
「あ…あなた様はセシリア王女?こんな時間に何故このような小さい村に?」
驚きながらも問い掛けてくる門番。既に迷惑かけてしまっているよこれ?ヤッバイ…罪悪感で心が押し潰されそう…
せめてしっかり答えよう。
「ルーク村の方ですね?突然申し訳ありません。私はセシリア・ヴァイオレットと申します。2週間程前にディスナへ赴く際にここを通り、あの畑の素晴らしさを見て、どうしても訪ねてみたくなり事前のお知らせもせず来てしまいました。ご迷惑だと重々承知していますが、村の代表の方へお取り次ぎをお願い出来ないでしょうか?」
これでダメと言われたら素直に帰ろう。そんな事言えないだろうけど…一応この国の王女だからね俺…
本気でちゃんと反省しよう。暇だからってこれはない。
自重しないといずれは失敗の元だ。
「こんな辺鄙な村の門番などにそのようなかしこまった物言いは必要ありません。馬を厩舎へ連れて行くのは村の者が致しますので、セシリア様はそのまま村長の元へ参りましょう。」
「ありがとう。では案内をよろしくお願いします。」
なんて優しい門番なんだ…自分が恥ずかしい……
兵士は宿屋に連れていってもらい、俺だけで村長の家に着いた。ノックして入る門番の後に続いて自分も入る。
「村長。セシリア様とお連れの兵士様がお見えになりました。」
「はっ?セシリア王女様が?こんな時間に?なに言っとるんじゃお主は…」
そうだよね…それが普通の反応。これ以上門番さんに迷惑はかけられない。ここは自分でちゃんと説明しないと、と後ろで控えていた身を村長の前に出し…
「その反応も当然です。突然お訪ねしてしまい、誠に申し訳ありません。セシリア・ヴァイオレットです。」
「ほ…本物じゃ……セシリア様、この度は何故お知らせも頂けず、このような時間にこんな村へ…?」
「2週間程前、こちらを通ってディスナに赴いた件はご存知でしょう?その際にこの村の畑を見て、是非お訪ねしてこの国を支えてくれている皆に、自分の口から感謝を述べたいと思いました。城での用事を済ませ、その気持ちを抑えられず駆け抜けてきてしまい、お知らせする時間が無く…誠に無礼な行い、本当に申し訳ありません。」
「な…なんと……ありがたいお言葉!お城でのお仕事もお忙しい中、わざわざご自身で馬を引かれお越し下さるとは…無礼な行いなどであるはずがありません。王国の為、耕しているだけの我々のような存在をそのように思って下さるとは…」
「それは違いますよ村長。あなた方が汗を流し、作物に愛を持って接して育ててくれているから、今のヴァイオレット王国があるのです。耕しているだけ、などと卑下する事はなりません。」
そうこの人達がいるから俺達は立っていられるのだ。そこに感謝や敬意を抱かない人間なんてクズだ。
…こんな訪問をした俺が言えたものではないが…
「おぉ!ありがとうございます。是非村の者にもお声をお掛け下さい。幸いお連れの兵士様の宿はごさいますし、寂れた家ですがセシリア様はこちらにお泊まり下さい。」
「ありがとうございます村長。ではお言葉に甘えさせていただきます。」
こうして無計画で失礼な訪問は心優しい村の人達のおかげで滞在する事が出来る様になった。




