14話 ディスナ軍を表敬訪問
「ふぁ〜…王国のとは違うけど、久しぶりにベッドで休めたからリラックス出来たわ」
日の光で目覚めたが、山岳地帯のディスナの朝は冷えるな。これで昼になると日差しがきつくなって暑くなるのだろうから、寒暖差で体調を崩さないよう気を付けておかないと。だが、ディスナまで馬車で寝たり野宿をしていたが、やはりベッドは偉大だ。疲れが取れて身体が楽になるのを感じる。
(任務で慣れている俺や兵士はまだしも、メイド達は本人達も気づかぬうちに疲れが溜まっていただろうから、これで少しは楽になってるといいんだが…)
今日の午前はディスナ軍の表敬訪問だったな…
同盟反対派が動いてくる可能性がある以上、用心の為に騎士服で行くか。
兵士達にもしっかり準備させておこう。
旅路が平和過ぎただけに、俺も兵士も気を引き締めなければ!
騎士服に着替え、備えつけられている洗面台で身嗜みを整えてから、部屋の扉の前で立っているだろう兵士に声をかける。
「誰かっ!」
「はっ!どうされました姫様?」
さすがだ。呼んですぐにノックしてから入ってきたよ…ちゃんと休んだんだろうなこいつら…
「午前のディスナ軍への表敬訪問の際、同盟反対派が何か仕掛けてくるかもしれません。警護はもういいから、あなた達もしっかり準備しておきなさい。それと、軍を見に行くときはメイドは荷物の整理や洗濯などをやってもらうので、共に行く必要は無いと伝えなさい。」
「かしこまりました。それでは失礼します。」
道程も合わせて2週間近くの滞在。王女の面子を保つ為にかなりの服を持ってきている。元男からしたら面倒なことこの上ないが、同じ服を着回していては王国の王女は粗末だと勘繰られる。ここまで着ていた服も多いし、移動中に洗う余裕などは無かったので、メイド達にはその辺りを整理してもらわないと滞在中に困る事になるかもしれん。
軍を訪問するという体裁できている今回、反対派が何か事を起こすならその訪問のときだとみて間違いない。そしてどうくるかも予想はつく。上手くやって反対派の勢いを削ぎたいところだ。
「姫様、準備が整いました。それとディスナの侍女が評議会館の入口まで案内せよと議長に申し付けられてきております。」
「分かりました。準備が整っているならお待たせしないよう、すぐに移動しましょう。」
「はっ!」
部屋を出て、待機していた侍女に先導されて移動する。
…さすがに自分達で移動しては行けなかったか…国賓であるのだから、案内がつくのは当然なんだが、自分の速度でゆっくり見回してこの建物を把握しておきたかった。
まぁ無茶な話だと思っていたからいいけどな…
先導されて入口に到着すると、昨日と同じ顔触れの評議会議員達が待っていた。反対派は先に軍の駐屯地にいるんだろうな。先回りしておけば前もって準備していただろう策の確認が出来る。
「セシリア王女。おはようございます。よく眠れましたか?」
「ええ。山岳地帯特有の寒暖差には驚きましたがよく休めました。」
「左様ですか。寒暖差も慣れれば意外と快適ですぞ。それでは駐屯地まで馬車でお送りします。」
「ありがとうございます。」
評議会館が城のようなものならあまり離れた所に駐屯地があるとは思えないんだが…馬車で移動するのか。
いや、他国の王女に馬に乗って移動して下さいって言うのは国賓に失礼だからそんなものかね。
他国に来るのも初めてで、国賓扱いなんて経験も無いから、ちょっと戸惑ってしまう。
5分ほどで駐屯地に到着した。気勢を感じる声が響き、訓練に励むディスナ軍の兵士達。
「まずは普段の訓練のご様子を。後に軍へのお言葉を頂けると兵の士気も上がります。それまでは指揮所は設けた椅子にお掛けくださりご覧下さい。」
「ありがとうございます。壮観なディスナ軍の訓練を拝見出来るとは…楽しみです。」
そう言って用意された椅子に座る。
普段の、というがこういう場での訓練は軍の示威を見せつける為に普段より厳しくやるだろう。
全兵力がおよそ5万とされるディスナ軍。ここにいるのは1万弱といったところだ。…実に装備が揃っている。さすが技術国家と称するだけある。
……だが、普段より厳しいと思われる訓練の筈だが…
これは王国の訓練より厳しくないに思える。ここにいる兵士も元は職人の可能性もあるからか?装備の扱いは熟知しているが、身体がついていってない印象だ。断言するには早いだろうが、練度でいえば王国の方が高いのではないだろうか?
これは貴重な情報だ。確認は必要だろうけど。
色々考えながら眺めているうちに兵の気勢が止み整列していく。さて、かなり緊張しているがお役目を果たさないとな…
気合を入れて待ち構えているとドラン議長が立ち上がり声を張り喋り出す。
「皆の者!此度は同盟関係を結ぶヴァイオレット王国の王女、セシリア・ヴァイオレット様が皆の為にこちらにお越し下さっている!より同盟を強固なものとする為、訓練の様子をご覧になられた!我が軍の士気と練度を見て頂いた王女様より御言葉を頂戴出来る事で、更に我が軍の威光が高まろう!」
「それではセシリア王女、御言葉をお掛け下さい。」
「はい。」
ふぅ…ここからが本番だ!
「只今ドラン議長よりご紹介頂きましたヴァイオレット王国王女セシリア・ヴァイオレットでございます。同盟を結び共に帝国の脅威を防ぐディスナ評議国の皆様の勇姿をこの目で拝見出来た事、実に心強く思います。我が王国軍も皆様と共に戦えるよう更に訓練を重ね、帝国と対抗するとここに誓います。」
俺の言葉に歓声が上がる中、前列の右側にいる兵士達の目が気にかかる。あれは恐らく…
「ふっはっはっはっ!共に対抗するだと?大した力も無い王国の王女がほざきよるわ!!我々、ディスナ軍が盾となっているお陰で高みの見物をしているだけの弱小国めっ!」
指揮所の椅子から気にかかった兵士達の元へと歩きながら罵声を浴びせてきた者。指揮所にいたところからするに評議会議員の1人で、一度も見かけた事がない事からすると反対派の者か。このタイミングで声を張り上げるならあいつが反対派の筆頭ということだろう。
…やはり、ここで動いてきたか………




