13話 違和感とメイド カイルside
カイル視点のお話です。
(たつ…いや、セシリアは無事にオーガンに着いたか。)
つい昔の呼び方が出てしまう。普段から気をつけておかないと、いざという時に名前を呼ぶのに躓いていては、不審に思う者が出てくるだろう。…慣れておかないとマズいな。
それにしてもあのセシリアが外交か…多少の不安要素があるが、多分上手くやり通すだろう。
(セシリアは頭が悪い訳じゃない。ちょっとノリでいき過ぎてしまう時もあるが、オンオフの切り替えが上手い奴だ。)
ディスナは所謂職人肌の者が多いと聞く。
彼らは技術に対する知識は凄いが、普段はポンコツだったりする。頭脳の地力ではそんなに負けているという事は無いはずだ。
それより問題になりそうなのはセシリアが女であるという事と、王国より性に奔放な土地柄である事だろうな。
王女であるセシリアを分かりやすく見下す者はいないと思うが、内心ではそう思う輩もいそうだ。
そう思う輩からすると、性に奔放な土地柄にあの美貌のセシリアがいるというのは、そっち方面で厄介事が出てくる可能性が高いと俺は踏んでいる。
だが、それはセシリアにすれば有利だ。理屈で論破するよりもそういった方向にいったほうがセシリアにはアドバンテージがある。
職人と違い、下手なプライドを持ち合わせず、柔軟な考えのセシリアは女であるのを有効に使えると判断したら躊躇わずやるだろう。
外交というのは如何に自分のペースに相手を引き摺りこむかが重要だ。
本当はそんなやり方はして欲しくないが、あの誓いから俺達は必ず王国を繁栄させると決めた。それが上手くやれると確信したらセシリアはやる。なんだかんだで俺より頑固な奴だからな…
(俺と同じで前世では女性経験に乏しく女性相手だと弱気なあいつだが、何故か男を手玉に取るような仕草は上手いみたいだ。)
そういう俺も出発前の話し合いでのあの一幕は見事にセシリアに踊らされた。
書類を落とし、テーブルの下に潜って拾い集めていたときに、セシリアの足元近くまでいっていた書類を拾おうとして目に入ってしまったんだ。
女性経験に乏しい俺はその光景に目を奪われた。丈の短いスカートからのぞく脚線美。更に姫という立ち振る舞いを上手くこなす上品な座り方でも見えてしまった白い下着。
元は男だと知っている俺でさえこんな簡単に引き寄せられる色気がセシリアにはあった。
しかも最後には見ていた事に気づかれたうえに、扉を開けながら振り向き、ウィンクしてからからかいまで入れてくる、もう魔性の女だ。
(ふっ…いかんな。変な方に考えがいってる。部屋ではあるが、ここは少し魔力を練る練習でもして気を紛らわせよう。)
セシリアは魔力が無いが武芸に秀で、俺は魔力が高く魔術師向きだった。こうも上手く得意な事が正反対だと役割分担もしやすくて非常に助かる。
そんな事を考えながら右手に魔力を集中させる。
(ん?魔力を練るのが少し難しい。)
最近、政務に追われて鍛錬の時間が減ってたからか?それにしてもこんな事今まで無かったんだが…
原因を探ろうと身体の内側に意識を傾けて集中すると…
(これは魔力が増えている?微々たるものだから体調の差か?)
魔力というのは増やす方法が長い年月かけての鍛錬でしかありえない。しかも個々に違いはあるが上限というものがある。ちょっと前まではこんな感覚は無かった。
(…まだ些細なものだが…こういうのは放っておくと頭が上手く回らなくなる自分の不器用さが嫌になる。ちょっと調べてみるか。)
思い立ったら行動だな、と椅子から立ち上がった時…扉からノックの音が聞こえた。仕方なく椅子に座り直す。
「カイル様、お部屋の花にお水をあげたいのですがよろしいでしょうか?」
「あぁ、入れ。」
静かに扉を開け入ってきたのは俺専属のメイドの1人で、俺が小さい頃から仕えてくれて、セシリアの次にいる時間が長い姉のような存在のアリサだった。肩ほどまでの金髪と碧眼をしたそれはもう見事な異世界の権化。仕事も丁寧で素早く、周りもよく見ている。見た目も抜群。ある問題があるけど…
「執務中に申し訳ありません。お水をあげたらすぐに戻りますので。」
「構わん。」
そう短く返事をして思った。
(そういえば、こんな時間に花瓶の手入れをするのは珍しいな。)
普段は俺が居ない時間などを見計らってやってくれている。俺が部屋で執務をしているのも珍しくはあるが、アリサは気の利く女性だ。俺が今いるなら時間を変える事ぐらい思いつくはず…
そう思いながら思わず俺に背を向けているアリサに目をやったのが罠だった…
(ぶっ!またはめられたっ!!今までの経験からいって間違いなくわざとだなそれ!?)
(スカートの後ろ部分が作業している手に引っかかり捲れ上がってるようにされている。スレンダーなスタイルのアリサの小振りだけど綺麗な尻が丸見えだ!しかも、紫のお尻部分に刺繍が入ったレースだと…)
そう、アリサの問題はこれ。俺の事を弟をように思ってくれているからか、真意は定かではないが…度々、こうやってからかうように誘惑してくるのだ。
俺が部屋で執務しているのにあえて時間をズラす事なく来たのは、俺がそれに気づき、目線を向けると分かっていたからだ!
してやられたが眼福でした…
アリサ「いつも冷静なカイル様が慌てるお姿を見たいだけなのです!」




