12話 評議会館
元男としてなかなか辛い視線をあんなに浴びせられたのは初めてだ…王国でも多少はあったけど、視線の数が比ではなかった。こう考えると王国は性に消極的な国民性なのかもな。一夫一妻制だし、東の島国の流れる血がこの髪や瞳をそうさせているのなら、島国は日本に結構似ているのかもしれない。
しかし、自分も前世ではあんな視線を女性に向けてしまっていたのかと思うと、非常に申し訳ない気持ちになる。
今は向けられる側だけど、反省しよう…
反省もした事だし、改めて城を眺めてみるが…
いや〜、立派だね。入口にある門の装飾も細部まで拘った作りだし、城の外観も原産国だからか、宝石が散りばめ方が半端ない。
だが高さは3階建てぐらいか?上に伸びるよりは横の面積がでかい。
「どうですか?評議会館の外観は?」
「評議会館?ですか?」
「あぁ、そうでした。ディスナに所謂王城と呼ばれるような建物は無いのですよ。それに代わる物がここ評議会館です。」
「評議会館は評議会の議員としての職場であり、宿舎も兼ねています。また、議員は優れた技術者の中から選出されるもので、議員達はこことは別に専用の工房を所有して、議員の仕事とは別に日々技術の研鑽を積んでおります。」
「なるほど。議員の方々は卓越した技術者でもあるのですね。それなのに国を纏める仕事までなさっているとは…敬服いたします。」
「はっはっはっ!王女様にそう言って頂けるとは…ありがたい事です!」
「それでは今日はもう日も暮れますゆえ、長旅のお疲れをお癒しくださって下さい。明日の朝は当初のお願いである軍を訪問して頂き、昼からは評議会のご様子をお見せ出来ればと考えております。」
「お気遣いに感謝いたします。軍への訪問もそうですが、評議会のご様子など見せて頂いてよろしいのですか?」
「勿論です!これを機に両国の友好が深くなっていく為にも、この国の見識を広げて頂く事が大切だと思っております。」
「そうですね。私も両国の友好が末長く続いていくよう、学ばせて頂きたく思います。」
「ありがとうございます。それでは今日はゆるりとお休み下さい。それぞれ滞在されるお部屋へは侍女達に案内させます。私は仕事が残っておりますのでここで失礼させていただきます。」
「はい。それでは明日を楽しみにしております。お休みなさいませ。」
侍女に案内された部屋は兵士達は5人で一部屋で、俺の部屋の向かいに並んでいる場所のよう。メイド達は俺の部屋の隣を一部屋。
連れてきた者達全員を固める構図か…これが普通の宿屋なら気遣いに感謝するところだが、そう簡単な話ではないだろうな。固められた部屋のある位置は評議会館の端の方だ。
これは王国を良く思わない者達との余計な接触を避ける意味合いがあると思うし、こちらが何か仕掛けたときに動きを制限しやすくして警戒を怠らないためかな。
まぁこちらは何もやましい事はないし、懐疑的な者達にいちゃもんつけられても困る。そういう意味では固まっていた方が余計な勘繰りをされずに済むというものか…
そう考えながら俺は部屋に入る前に皆に声をかける。
「皆、長旅ご苦労様です。疲れを癒して下さい、と私は言いたいのですが…」
続きを言おうとしたところで、兵の隊長が遮ってくる。
「何をおっしゃいますか!メイド達はそれで良いでしょうが、我々兵士はそういうわけには参りません!交代で姫様の部屋の前に2人待機させます。何があるか分かりません。姫様の身にもしものことがあっては我々は王に合わせる顔がありません!」
「…分かりました。ですが、ちゃんと交代を行い休憩の時間を設け、少しでも疲れを癒すのもあなた達の仕事だと心得なさい。」
「「「はっ!」」」
言える事は言った。皆の視線を背に部屋に入る。
(おぉ!まぁ立派な部屋だこと…装飾の至る所に宝石。これはまだ分かるけど、ベッドの天蓋にまで宝石をあしらうのはどうなの?微妙に眩しそうなんだけど…)
寝転がって眺めてたら逆に目が覚めそうだわそんなとこに宝石使われると…
まぁいいや。正直、疲れた。今日はもう休もう。
着ていた騎士服を脱ぎ、就寝用に持ってきたネグリジェに着替える。
(このネグリジェ、他国の部屋で着るにはちょっと無防備じゃない?足元までゆったりとした白いワンピースなのはまだ分かるが、こんなスケスケのやつじゃなくても…そのせいで黒の下着が透けて見えてるんだけど?)
何考えてこんなの選んだのメイド?と姿見の鏡に写る、ちょっとエロい格好の自分を見て首を傾げてからベッドに潜った。




