9話 関所
文才が欲しい…
王都を出て5日目。
当初の予定通りなら今日の午後にはディスナに着くはずだから、かなり近いとこまできてるはずなんだが…
すんげぇとこにあるんだなディスナの首都…
見渡す限り山、山、山だよ…
まぁ山脈の恵みで潤ってる国なわけだから、その中心である山に首都があるのも当然なのかもしれないが、よくこんなとこに街を作ったな。
こういう所だと定番のドワーフ族とかを期待してしまうが、ディスナは人間の治める国なのだ…ドワーフに憧れがあるわけではないが、エルフがいるならドワーフも、と考えていた俺には微妙にショック…
いや!同盟関係を築いた後は、あまりお互いの国を行き来する事も無かったらしいし、まだ存在する確率もなくもないと思いたい!
(ちゃんと友好の発展とか考えて、交流しててくれよ〜、王様もとい親父〜…こりゃあ今回の訪問をディスナが求めてきたのは当たり前なのかもしれんな。こんな状態で同盟関係を維持する信頼を得ているとは思えん…)
「姫様、先行して偵察していた兵士がこの先の道に関所のようなものが設置されているとのことです。事前の情報ではそんな話は聞いておりません。如何なさいますか?」
「……偵察に出た兵士に馬車と併走するように伝えなさい。話を聞きつつ進みます。」
「かしこまりました。」
そう伝えてすぐ、偵察に出ていた兵士が馬車の小窓付近を併走する。関所か…首都への入り口に近いならあっても不思議ではないが…
「姫様、参りました!」
「偵察ご苦労様です。関所があるとの事ですが、それはどの程度の規模ですか?それとそこに人がいたなら、どのような姿をしていたか見ましたか?」
「はっ!関所の規模は山を挟んで立っており、そこを通らずには行けないほどですが、壁はさほど厚くなく、防衛というよりは、通行する者を監視する為のものかと。」
「人につきましては、門の所に2人と壁の上に2人。両側の物見台の2人の計6人ほどです。いずれも訓練を受けた者であると思われ、赤みがかった鎧で統一していました。ディスナの兵士であると思われます。」
「なるほど…」
(聞いた通りであるならディスナの正規兵だろう。関所をわざわざ設置したのは隣国の姫が通行する場所だと分かっていただろうし、この道はちゃんと監視しているという姿勢を見せている、というところだろう。)
「ただ…他にも気になる点がございます。」
「どうしました?」
「門の少し外側に横一直線に掘られた後に埋め立てたような土の色が違う部分がありました。迎撃用の何らかの罠が仕掛けてあるものかと。」
ふむ…罠という考えは間違いだと思う。仮に迎撃用の罠だというのなら、そんな門の近くにだけ設置するのは不自然だ。もっと外側にも配置しないと迎撃としては不十分だし、そもそもそんな土の色ですぐに分かる程度のものは罠とすら呼べない。
…あまり深く考えても情報も足りないし、虎穴に入らずんば何とやらだな。
伏兵の可能性もあるだろうが、この狭い道で配置できる数にはかぎりがある。いたとしてもその程度ならこちらの兵数でも十分やれるはすだ。
よし!と覚悟を決め、兵士に伝える。
「深く考え過ぎてもどうにもなりませんね。どのみち、首都に行く以上通らなければならない事ですし、何か起こっても貴方達と私なら対処出来ると信じ進みましょう。」
「はっ!承知しました!!」
何か起きる可能性を考慮し、装備類の点検を行いながら、15分ほどで関所に到着した…
???「ぐへへ、早く誰かこねぇかな〜」




