強盗
「あいつ自白しましたよ」
若い刑事が達成感に満ちた表情を湛えていた。
取り押さえられた時激しく抵抗したあの男が、やけにあっさり罪を認めたものだ。
「俺に話をさせてくれ」
「だけど、もうあいつは全て話しましたよ」
彼は怪訝そうに顔をしかめた。
「全ては話してないだろ」
確信を持って言える。あいつは犯人じゃない。
俺は強盗の罪を認めた目の前の男と対峙した。
「真犯人に分け前をやると言われたか? 共犯の女に騙されたか? 取り調べた刑事に脅されたか?」
あるいはその全てか。
こいつの気持ちはよく分かる。人に絶望して疑り深くなっている割には人の情に期待する。どうせ共犯の女に甘い言葉で誘われたんだろう。
そして功を焦った若手刑事の恫喝じみた尋問にまんまとはまった。
そんな所か。
俺は尋問を中断し、取調室を後にして足早に向かった。
チャンスだと思った。奴等は与し易い相手が殊の外思い通りに動いてくれた事で隙が生じている筈だ。動くなら今しかない。
奴らの計画を乗っ取り、俺が全ての金を奪い取る。