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異世界転生失敗したから女の子と一体化します。  作者: 小原虚無
第一部 英雄再起
1/4

0 退屈な終末

 感覚は一線を越え、痛みを感じなくなった。

 腕を伝う血の生温かさ。もはや命令しても指先ひとつ動かない。


「終わりか、つまらぬ」


 諦めの意思を言葉にしたつもりだったが、声にならない。

 意識はあるが、本能が理解している、死の感覚。

 生命が終わりを迎える感覚。魂が消滅する予兆。

 目の前の男は死の間際にある私を睨みつけていた。恨みか、憤りか、様々な感情が入り混じる瞳だ。

 彼は私を許さないだろう。そして、私も彼を許すことは無いだろう。

 一面焦土と化した周囲には、何も残っていなかった。生命の気配を感じない。

 視界を遮る物は何も無く、黒ずんだ空と地平線の中に彼は一人立っていた。


 世界は終わったのだろうか。私は、役目を果たせたのだろうか。

 もう何も分からない。知覚出来ない。途切れ途切れの思考は、この結末に至る過程すら忘却してしまった。

 私は有りったけの力を振り絞り、彼を見下ろした。視界を動かすことが私の限界。


「悪く思うなよ」


 ああ、助かる術はないことは分かっている。


 私はそう呟いたつもりだったが、漏れるのは吐息だけだった気がする。しかしそんなことはどうだって良かった。


「――ッ! おい! やめろ! これ以上の――」


 彼は眼を見開いて一歩踏み出した。しかしもう遅い、私の身体が強い光に包まれる。

 彼は何かを叫んでいたが、途中から何も聞こえなくなった。


 世界の終末とは、思いのほかつまらないものだ。

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