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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
部活に入ろう!
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部活決定

部活紹介という名の対戦がすべて終わった後、生徒全員が教室に集まっていた。


「それじゃあ、みんなどの部活に入るか決まったか? これから集計をとるぞー」


 そう言葉を発したのは先ほどローレムを連れて行ったミコトだった。

 席には意識を取り戻し、治療したローレムと着替えたパイの姿もあった。


「それじゃあ、最初は格闘部から、この部活にはわたしが顧問につくからな。それじゃあ手を挙げてくれ」

「もちろんわたしあ参加するアル!」


 勢いよく手を挙げたパイに続きオウル、ユノ、エマの手が伸びる。

 ユノ、エマと意外な人物の参加にアナは驚き声を上げる。


「パイとオウルはわかるけど、ユノとエマも!?」

「ええ、わたしは足技には自信があるから、補助魔法(エンチャント)なしでも体を動かせれるようになれば戦力になるかなって思ってね」

「わたしは体力がないから、少しでも身体を強くしたい……」


 ユノとエマがそれぞれ志望動機を述べると皆が納得の表情を浮かべる。


「エマはほんとに体力無いからな。苦手なことに挑戦して偉いと思うぞ」

「へぇ、じゃあそう言うウルは魔法の勉強でもするの?」


 ウルの視線が横に逸れる。


「まぁ勉強は……そのうちに……なのだ」

「でしょうね……」


 エマは軽くため息をついた。

 一方ではパイがオウルに動機を聞いていた。


「オウルは格闘技術をあげるためアルか?」

「それもあるが、お前と白耳の使ってた『気功』ってのに興味がある」

「白耳ってのはオレのことか?」


白耳と呼ばれ、むっとした顔つきのローレムが絡んでくる。


「ああ、その通りだ……」

「オレの名前はローレムだ。二度と白耳なんて呼ぶな、後輩」


ドスをきかせた声で詰め寄り、唇が触れ合いそうになるほど顔を近づけ睨みつける。オウルもその目を見据えたまま睨み返す。


「お前らそこまでにしとけよー。全く血の気の多いやつらが多くて荒れそうだなぁ……」


 そうぼやくミコトだが、そのセリフの内容とは裏腹に口元はどこか楽しそうだ。




「それじゃあ、次アイテム開発部に入りたいやつー、手を挙げて―」

「アイテム開発は先輩のあーしが手取り足取り教えたげるから、気軽に入ってよねー」


 ここぞとばかりモエがアピールに勤しむが、挙がった手はわずか二つばかり。

 アナとヨハンナの二人だった。

 

「えっ、たった二人!? しかもヨハンナと一緒かぁー」

「なんだいボクと一緒は嫌なのかい? さすがに傷つくなぁ」


 しょんぼりしたヨハンナにアナはあわてて手を横に振る。


「ごめんごめん、ヨハンナはもうアイテム作りのプロみたいなもんだから差がありすぎるなーって思っただけ」

「だからあーしが手取り足取りって言ってんじゃん! そっちのぐるぐる眼鏡の子はあーしより作るの激ヤバそうだけどね。まっ仲良くやってこう!」


 あわあわするアナを背後からハグしたモエは明るく振舞っている。

 その様子を教室の後ろで見ていた顧問のギガンストスはにこにこと微笑んでいた。


「いやぁ前途ある若者の青春とは素晴らしいものですなぁ」

「ほんと、若い子達がキャピキャピしてる様は眼福だなぁ」


 横にいたクレイブスは鼻の下を伸ばしていた。だがその顔は苦痛に歪む。

 クレイブスの足にはアスカの鞘がめり込まれていた。


「シンシアさんから生徒に色目を使うようであれば切り伏せても構わないと申し使っております。努々お気をつけを……」

「ははは、シンシア殿も優秀な生徒を持ちましたな」

「げぇぇ、アスカちゃん、そりゃないよぉ」


クレイブスは苦虫を噛み潰したような表情でボヤくことしかできなかった。




「えーと、次は魔術部だな。手を挙げてー」


 手を挙げたのはベルトーシカ、コリン、クロエ、ルルティアの四名。

 先輩であるミーヤはコリンの姿に怪訝そうに顔をしかめると、指さし声を張り上げる。


「げぇ、ちびっ子がおるん? この大魔導士に恥かかせたこと忘れてないけんね!」

「ほっほ、わたしはシンシア殿に師事して入るのですぞ。 ちびっこエルフにとやかく言われる筋合いはございませんな」


 コリンの言葉に顔を真っ赤にして怒り出した。


「ムッキー!! 後輩なのに生意気! これだからドワーフはっ!!」

()()()のエルフが言う台詞ではございませんな」

「お、おおおお、おお」


 言い争いの最中、ミーヤの背後から突如、不気味な唸り声のような音が聞こえてくる。何事かと振り返ると、そこにあったのは垂れた黒髪の隙間から血走らせた目を覗かせているクロエの姿だった。


「ぴゃー!! お化けぇー!!」


 青ざめた顔のミーヤは逃げ出そうとするが、両肩をがっしりと掴まれ逃げ道を失ってしまう。そこに不気味な笑みを浮かべた青白い顔が近づいてくる。


「おおお……お、お、落ち着いて……ケ、ケンカ、駄目……あ、あれ? 動かなくなっちゃった……」


 どうやらコリンとミーヤの間を取り持とうとしていたらしいが、恐怖の絶頂を迎えたミーヤはすでに白目を剝き失神していた。


「クロエ、よくやりましたぞ。これで静かになりますわい」

「えっ、あっ……うん……」


 何故気を失ったのか自覚症状のないクロエはただ狼狽え、困惑することしかできなかった。


 一方ではベルトーシカとルルティアが話しをしていた。


「ルルは武具の方を選択すると思ってたけど、なんで魔術部を選んだの?」

「わたしの弓だとできることが限られてますから、魔術中心に鍛えた方が効果的かなって……いつかベルさんの氷、砕いてみせますからね」


 ルルティアはベルトーシカと戦い、何もさせてもらえなかったことを言っているのだろう。目標を本人に告げるとベルトーシカの口元も柔らかくなった。


「ふふ、楽しみにしてるわ」




「じゃあ次は武具鍛錬の部活だが……残りはモモ、リズ、ガルシア、ウルか? 四人とも間違いないな?」


 ミコトの確認にそれぞれが「はい」と答えを返すが、一人だけ違う答えをした者がいた。


「わたしはどの部活にも所属するつもりはないのだが、大丈夫だろうか?」


 そう答えたのは魔獣使い(ビーストテイマー)のガルシアだった。

 少し時間を置き、ミコトはその理由を尋ねた。


「魔獣を飼育している分、その世話や調教などで時間が割かれるから……ってのは理由になるかな?」

「……うん、ちゃんとした理由があるのなら大丈夫だ」


 両諾を得られガルシアはほっと胸を撫でおろした。それも束の間、こんどはオウルが尋ねてきた。


「前から疑問だったが魔獣を一体どこで育てているんだ?」

「ふふ、オウルに興味を持ってもらえるとは、嬉しい話だね。だがその質問はあえて秘密にしておこう、いい女はミステリアスな部分も隠しておかないとね」


 ガルシアは赤みの強い、ぷるんとした唇に人差し指を当てウインクしながらお道化(どけ)たように答えた。


「うん、これで全員どの部活に入るか決まったな。そろそろ夕食の時間だ、明日からそれぞれの部活でびしばし鍛えてもらうからな、今日はゆっくり休めよ。それじゃあ、解散!」


 ミコトが締めると、皆ばらばらと食堂に向かい教室を出て行った。




 その後夕食をとり、露天風呂につかりながら一日の疲れを癒すリズの姿があった。その横に足元から静かに入湯するモモ。


「ふー、お疲れさん」

「おつかれー」

「うーん、気持ちいいー! で、ご感想は?」


 モモは大きく腕を伸ばすと唐突に主語も言わずに尋ねてくる。リズもアスカと戦った感想だろうとすぐに察する。


「うん、強かったね……手も足も出なかったよ」

「……盾、壊れちゃったけど大丈夫?」

「うーん、予備も持ってないしどうしようかなぁ? どこかで新しいの調達しないとだねぇ」

「あっ、わたしが大丈夫って聞いたのは盾そのものじゃなくて、リズがってことだよ」


 今度は察することができなかったようで、面食らった表情を見せるリズ。


「心配してくれてありがと。壊されちゃったのはショックだったけどね、今は目標ができたって感じかな?」

「目標?」

「うん、前に『モモみたいに強くなりたい』って言ったよね? ずっと考えてた、守りだけでなく攻める力が欲しい、そして目指すのはあの『闘気』って力だって思ったの」

「そっか……わたしを差し置いて挑んだ成果はあったってことか。よかったよかった」


 リズはちらりとモモの顔色を伺うが、普段から


「もしかしてまだ怒ってる?」

「ううん、ぜーんぜん。本当に良かったと思ってるよ。ただ……」


 突然口を(つぐ)んだモモを不思議に思い聞き返す。


「ただ?」

「ただ……ううん、リズに負けてられないなって、わたしはリズの目標だもんね。抜かされないように頑張らなくちゃね」

「自分で目標とか言っちゃう? 正直、道のりは遠いなぁって思ってるんだけどね。モモって底が見えないんだもん」

「いい女はミステリアスな部分も隠しておかないとね」


 モモは先ほどのガルシアの真似をしてウインクを投げつけた。

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