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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
部活に入ろう!
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アスカへの挑戦

「それではこれで最後だな、わたしと武器で戦いたい者、出てきてくれ」


 腰帯に添えた鞘に手を当てたアスカが対戦者を募ると、すぐさまモモが意気揚々と反応を示した。


「こんなに早くリベンジの機会がくるとはね……」


 だが前に出ようとするモモを遮る手があった。


「ちょっと待ってモモ、ここはわたしに行かせて」


 その手はリズのものだった。意外な乱入者にモモも思わずムッとした表情になる。


「リズ……どういうこと?」

「モモは前にも手合わせしたんでしょ? わたしだって戦ってみたいもの。順番だよ、順番!」


 一度負けた相手に一刻も早くリベンジしたいのかモモの表情は戻らない。

 自分が出ると云わんばかりに睨みつけるその目からは、かなりの負けず嫌いなのが伺える。


「そんな顔したって駄目だからね。わたしだってモモに負けたのは悔しいし、わたしとモモの間にある差を埋めたいんだから!」

「ぐぬぬ……わかった。そこまで言われたなら譲るしかないよね!」

「ウルも戦ってみたいけど今回はリズに譲るぞ。がんばれ!」


 まだプリプリした様子だったがどうやら納得してくれたらしい。

 モモだけでなく他の仲間たちも応援してくれて、晴れてリズの挑戦が決まった。




「どうも、お待たせしました。リズ・ホワイトです、よろしくお願いします」

「……アスカ・トウゴウだ。礼のある者は好きだよ」


 アスカの台詞にモモの片眉がぴくりと吊り上がる。

 そんなこと知ってか知らずか、二人は剣に手をかけ構えをとる。


「それじゃ、あーしがスタートの合図出したげるー」


 そう明るく言いだしたのは、いつの間にか起きていたモエだった。

 今度はヨハンナが片眉を吊り上げる。


「そんなにすぐ起きれるような薬じゃないはずだけど……君、狸寝入りしてたね?」

「んー、なんのことかわかんないなー」


 モエは目線を上に、頬に人差し指を添え小首をかしげてしらばっくれる。


「それじゃ二人ともいくよー。よーいドン!……って言ったらスタートだよって……あれっ?」


 対峙していた二人はベタなやり取りなど気にせず動き出していた。

 リズがアスカの神速の居合を盾で受けきる。


「この曲線の剣……『刀』ってやつだね?」

「知ってるのか? こちらでは珍しい剣なのだがな」

「わたしの師匠も一振り持ってたからね。すごく硬くてそれに魂だとかなんとか言ってたっけ?」

「そう、これは『侍』にとっての魂であり誇り、わたしはこれに全てを捧げてきたのだ」


 リズは刀を押し返すと攻め返す。


「ずいぶんな覚悟だけど、こっちだってずっと頑張ってきてるんだよ!」

「……そうだな、ここにいるみんながいろんな想いをもってここにいるのだろうな」


 リズの剣を刀で絡めとり弾き飛ばすと、鋭い太刀筋を連撃を叩きこむ。


「くっ、速い!」


 盾でなんとか凌いではいるが、余裕のなさは明らかだ。思わず心の声が漏れてしまう。


「せめて魔法が使えれば……」

「使ってもいいぞ」


 そんなつもりはなかったのにあっさりと承諾されてしまい、リズは面食らい「えっ?」と聞き返してしまった。


「魔法を使ってもいいと言ったんだ。こちらもとっておきを使わせてもらう」

「……そういうことなら遠慮なく! 水鉄砲(ウォーターガン)!」


 守りに転じていては駄目だと、距離をとり攻撃魔法を放つ。

 アスカの剣が鈍く光を放つと、向かい来る高圧の水流を斬り裂く。すると魔法はまるで蒸発するように消え去ってしまった。

 普通に剣で斬っただけならこんな消え方はしない、ただの水に戻り地面を濡らすはずである。このことにリズは疑問を抱いた。


「魔法を消した? 何をしたの?」

「やはりお前たちは知らないんだな? その正体は()()だよ!」


 アスカは刀を構え、力を込め思い切り振るうとその斬撃が宙を飛びリズを襲う。

 予想だにしなかった攻撃に、咄嗟に盾を構えるがその斬撃に盾が粉々に打ち砕かれてしまった。


 その衝撃で尻もちをついてしまったリズは頭が真っ白になり、茫然としてしまう。


 自分が得意としてきた回避術の象徴でもある盾が打ち砕かれたのだ。それはリズ自身の誇りが打ち砕かれたのにも等しい。

 その剣も盾も持たないリズに刀が突き付けられる。


「わたしとモエは魔力というものは持たない。代わりに持っているのが『気』、『闘気』と呼んでいる力だ」


 リズは座ったまま、目の前に仁王立ちするアスカを茫然と見つめることしかできなかった。

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